ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

坂木司「うまいダッツ」(文藝春秋)

坂木さん最新作。今回は、高校の喫茶部に入部している高校生たちの物語。ゆるい

部活を目当てに喫茶部に入部したアラタ。喫茶部の中でも、好みのおかしを持ち

寄って食べるだけで最も益のない「おかし部」のメンバーたちと、ゆるゆると

放課後を過ごしていた。そんな中アラタは、同じおかし部のコウから、『うまい棒

一本で、世界の秘密がわかるらしい』という学内の噂を聞きつける。その真相を

知るべく、調査に乗り出すのだが――。

世間で実際に流通しているお菓子を絡めた、日常の謎系ミステリー集。日頃から

お菓子は良く食べているので、楽しく読みました。最近は食べてないなーっていう、

昔からあるお菓子がたくさん登場して、懐かしい気持ちになりましたね。一話目に

出て来たうまい棒もそうだけど、最終話に出て来たマリービスケットも、小さい頃

は良く食べてたけど、最近はご無沙汰でしたし。駄菓子系もそうですね。たまに

食べると美味しいんですよね。

ミステリー的な驚きはあまりないけど、おかし部の高校生四人の友情と青春が

ゆるく爽やかに描かれていて、楽しかったです。四人の関係も良かったですね。

みんな、それぞれにお菓子とは関係ないジャンルのオタクなのが面白い。セラだけ

オタクとはちょっとタイプが違うけど。

ただ、名前がカタカナ表記なので、最初、誰が男子で誰が女子なのか、いまいち

良くわからなかった。カタカナ表記であることに、何らかのトリックが絡んで

いるのかも?と少々深読みしながら読んでいたのだけど、特に何もなかったので

拍子抜けではありましたけれど^^;一番混乱させられたのは、タキタの性別。

あ、女の子だったんだ、と思って読んでたら、途中の話で『俺』表記が出て来て

戸惑いました。え、え?タキタって、もしかしてそっち系のタイプだったって

こと!?と大混乱。その後の話で、どうやら一人称がたまに『俺』になっちゃう

だけってことがわかったので、ほっとしたのですが。その辺り、細かく説明が

あるわけではなく、文脈から察しろって感じなので、少し不親切かな、と思ったり

もしました。

セラに関しては、一話目で、もしかしてアラタに気があったりする?と思える

描写があったので、最終話のラストシーンにはニヤニヤしちゃいましたね。途中

の話でそういう要素が全く出て来なかったので、私の思い過ごしかな、と思い

かけていただけにね。最終話の、セラの茶会の時の堂々とした振る舞いには感心

させられちゃいました。この話に出て来た台湾茶藝、私も台湾に行った時かなり

ハマって、茶器とか茶葉を買って来て、帰国してからもしばらく淹れて飲んでた

ことを思い出しました。香りだけを楽しむ茶器『聞香杯』を買って来なかったことを

どれだけ悔やんだことか。まぁ、今では道具一式物置部屋のどっかに眠ってます

けどね・・・。

他にも、懐かしのお菓子がいっぱい出て来て楽しい。シルベーヌとかホワイトロリータ

とかチロルチョコとか、今食べても美味しいよね。

ちなみに、タイトルのダッツは、ハーゲンダッツのことでした。うまいダッツって

何なんだろう、と疑問に思ってたんですけど。うまいハーゲンダッツってことね。

ハーゲンダッツをダッツと略した言い方は初めて聞きました。若い子たちの間では

これが普通なんでしょうか・・・(ジェネレーションギャップ・・・?^^;;)

お菓子とお茶をお供に読みたい一冊でした。