ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

大倉崇裕「犬は知っている」(双葉社)

大倉さんの最新作。警察病院で患者の苦痛や恐怖を和らげるために常駐するファシリ

ティドッグのピーボ。普段は小児科病棟で子供たちを癒やしているが、実はピーボ

には裏の任務があった。それは、特別病棟に入院している瀕死の受刑者たちの

元へ行き、彼らが関わった事件に関する重要な情報を引き出すこと。普段は頑なに

口を閉ざしている彼らも、なぜかピーボを前にすると心を癒やされ、口を開いて

しまうのだ。ピーボとバディを組むのは、ある理由で窓際職に追いやられた笠門

巡査部長。笠門は、ピーボが受刑者たちから引き出した情報を元に、事件の捜査

を開始する――。

警察犬とはまた違った職務に就いている、ファシリティドッグのピーボが活躍する

警察小説。ゴールデンレトリバーのピーボは、そこにいるだけで、その場にいる

人々の心を癒やし、頑なな心を溶かしてしまう。なぜか、凶悪な受刑者たちも、

ピーボを前にすると心を許し、口が軽くなってしまう。なんとも不思議な魅力を

持つ犬です。ほんとに、ピーボの賢さには何度も驚かされました。ピーボの

ハンドラー、笠門巡査部長とのコンビもいいですね。笠門は、ピーボがいないと

てんで使い物にならないへっぽこ警官って感じの設定ではあるのですが、なんだ

かんだで最終的にはピーボがもたらしてくれた情報を元に事件を解決してしまう

のだから、実は結構切れ者なんじゃないかと思うな。お互いに信頼関係が結ばれて

いるのがわかって、微笑ましかった。

凶悪な受刑者たちと対峙しなきゃならない時は、かなりピーボにとってもストレス

がかかりそうなのが少し気がかりでしたが。それでも、毅然と職務を遂行しようと

するピーボが健気で頼もしかったです。

ミステリ的にはさほど瞠目するようなところはなかったのですが、とにかく癒やし

のわんこ、ピーボが可愛いので、それだけで十分楽しめました。

作中で警視庁の総務部動植物管理係のこともちらっと触れられているので、もしか

したら薄ちゃんも登場するかな?とちょこっと期待したのだけれど、残念ながら

出て来なかったですね。大倉さんの警察ものは、大抵繋がっているから、今後

どっかで登場するかもしれませんけどね。

今回出て来た、資料編纂室の五十嵐いずみ巡査もなかなか良いキャラでした。

笠門巡査部長とのやり取りは結構好きでしたね。

最初、犬の名前、ピーポだと思って読んでたら、ピーボでした。まぁ、そもそも

その由来も、始めはピーポだったけど、小児科のこどもたちが呼びにくそうに

していたから、ピーボになったそうな。子供だと、ピーボの方が呼びやすいん

ですかねぇ。ピーポの方が読みやすい感じもするけれど、どうなんだろ。

ま、ピーポだと、完全にピーポくんを彷彿とさせちゃいますけどね。

私もピーボに癒やしてほしい~って思いました(笑)。