ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

彩藤アザミ/「樹液少女」/新潮社刊

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彩藤アザミさんの「樹液少女」。

失踪した妹を捜す男が迷い込んだのは、磁器人形(ビスクドール)作家の奇妙な王国。雪に
閉ざされた山荘に招かれた4人のコレクターの前で、無残な遺体が発見された。誰が何のために?
次の標的は? 鍵を握るトランプコードの秘密を知ってしまった者の運命は……。平成生まれの
新鋭による新潮ミステリー大賞受賞後第一作(紹介文抜粋)。


書店で見かけて、タイトルや雰囲気が好みそうだったので予約してみました。
新潮ミステリー大賞を受賞されてデビューされたそうです。本書は、その受賞作の後の
二作目。
作者さんは平成生まれだそうで。お若いわぁ。そりゃ、平成も28年にもなりゃ、
平成生まれの作家なんかごろごろ出て来て当然なのだけどもさ。
雪に閉ざされたお屋敷の中で起きる殺人事件。無残な死体となって発見されたのは、
屋敷の主人で磁器人形作家の架神千夜。彼女の作品のすべてに記されているトランプ
コードの秘密とは――?
美貌のビスクドール作家の死を巡るゴシックミステリ。いかにもなクローズドサークル
もので、雰囲気はかなり好みではあったのですが、ミステリとしては、さほどの
驚きはなかったです。トランプコードの暗号に関しても、意外とオーソドックスな
解読法でしたしねぇ(かといって、解明出来た訳ではないですが^^;)。
その暗号が意味するものには、ぞーっとしましたけど。
黒幕も、まぁ、おそらく、その人物が何かの鍵を握っているのだろうな、という
ところあたりまでは、予想出来てましたし。ラストの行動を読んで、思った以上に
強かだったことがわかって辟易しましたが・・・^^;
四歳の時に失踪した妹を探して架神邸にやって来た、主人公の森本が、屋敷に来る前に
やったことに関しても、始めの方で気がついてしまいました。
雰囲気作りは非常に上手いと思うのですが、全体的に既存のミステリの枠の中に
収まるような、チープな印象は否めませんでした。ひとつひとつの仕掛けに詰めが
甘いというか。この辺りが、若さなのかもしれませんが。
あと、とにかく、登場人物に魅力がない。一人一人の人物造形をもう少しなんとか
しないと、読者はついて来ない気がするなぁ。
探偵役の此代乃も、出番自体が少ないので、人間性とかいまいちわからず仕舞い。
もしかしたら、シリーズ化を狙って、今回は探偵のお披露目編、くらいの位置づけ
なのかもしれませんけど。
唯一好感が持てた臼田も、語尾を伸ばすしゃべり方に若干イラっとさせられました。
此代乃と臼田の絡みとかも、最後にもう少しあったら違っていたと思うのだけど・・・。
二人一緒のシーンはあるけど、二人の確執がどの程度なのか、とか、全然わからなかった
ので。まぁ、確執を感じているのは臼田だけなのかもしれませんけど。
全体的に、文章はまだまだって感じがします。一生懸命耽美な世界を作ろうと
しているのだけど、文章力が追いついていないような。
正統派な本格ミステリを書こうという気概は感じるのだけど、キャラもトリックも
舞台設定も、あと一歩何かが足りないって感じがしました(えらそう)。

トランプコードの謎に関しては、若干腑に落ちない部分も残っているのだけど。
一体、何種類あったのかな、と。それによって、千夜が犯した罪の深さも
図れる訳で。もちろん、一種類だって十分罪深いですけど・・・。芸術の為だから
といって、よくそんなおぞましいことができるものだ。彼女はもっと苦しんで
死ぬべきだったんじゃないのかな、と思ってしまいました。
それにしても、桃は今後どうやって生きて行くのでしょうか。女の武器を使って、
強かに生きていくのだろうな。
何か、最後、振り回された森本が可哀想になりました・・・。


表紙の恋月姫さんのビスクドールが美しいですね。
ただ、個人的には、この手の人形は絶対部屋には飾りたくない派。ぬいぐるみは好きなんだけど。
生きてるみたいで、夜中とかに見たら絶対怖いもん(><)。