ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

佐藤究/「QJKJQ」/講談社刊

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佐藤究さんの「QJKJQ」。

猟奇殺人鬼一家の長女として育った、17歳の亜李亜。一家は秘密を共有しながらひっそりと
暮らしていたが、ある日、兄の惨殺死体を発見してしまう。直後に母も姿を消し、亜李亜は父と
取り残される。何が起こったのか探るうちに、亜李亜は自身の周りに違和感を覚え始め―。
第62回江戸川乱歩賞受賞作(紹介文抜粋)。


乱歩賞系は読んだり読まなかったりなんですが、これは図書館の新刊案内のあらすじ
読んで、なかなか面白そうかな、と思って借りてみました。
家族全員が猟奇殺人鬼の一家に生まれた、高校生の市野亜季亜(いちのありあ)」が
主人公。もちろん、彼女自身も猟奇殺人鬼のひとりとして登場します。
ある日、引きこもりの兄が部屋で惨殺されているのを目にした亜季亜は、誰が兄を
殺したのか探り始めるが、その直後に、母親が姿を消しているのに気付く。兄は
なぜ殺されたのか。そして、母はなぜ失踪したのか。
父と二人で自宅に取り残された亜季亜は、次第に自分の周囲に違和感を覚え始めるのだが――。

出だしは、かなり挑戦的なストーリーで引き込まれたんですが・・・うーん。
後半以降がなぁ・・・特に、市野家の秘密が明らかになってストーリーが反転した後が。
無駄にくどい。こんなにだらだら長くなったら、せっかく世界を反転させた意味がないと思う。
市野家のリビングに監視カメラがあった理由も、説得力に欠けるし。ネタバレせずに
感想書くのが難しいけど、亜季亜の父親の正体も含め、いくらなんでも、現実味がなさすぎ。
猟奇殺人鬼一家という設定自体は非常に面白かっただけに、そのからくりのリアリティのなさが
残念だった。いくら何でも、警察の上に○○○を監視する組織があるっていうのはねぇ。説明も
わかりにくかったし。前半のテンポの良さはどこに行っちゃったの?ってくらい、後半は失速した
感じがしました。
タイトルは、多分、アレのことかな?と思っていたら、その通りだった。これはまぁ、大抵の人が
想像出来る範疇ではないかと思う。
並び順に問題があるところまではわからなかったけど。
一応、伏線らしき部分はきれいに収拾されているとは思うので、ミステリとしては
破綻してないのかもしれないのですけど・・・亜季亜の世界が壊れるところまでは、
ほんとに面白く読んでいたのだけれどなぁ。引きこもりの兄、陰が薄い母って設定も
なるほど、と思いましたし。ただ、巻末の各選評委員の選評の中にもあったのですけども、
こういう仕掛けの作品が、それほど目新しいとは思えなかったですね。家族全員が
猟奇殺人鬼、っていう設定だけを取り上げれば、確かに例はないのかもしれませんけども。
あと、途中で出て来た同級生の女の子との確執の部分を、もうちょっと踏み込んで
書いてほしかった。電話越しに相手の不都合な写真を削除すると言っただけで、相手が
亜季亜の出した条件をのんだ所も腑に落ちないし。その後、もうひと波乱あるのかなと
思っていたのに、彼女の存在自体が物語から消えてしまって、拍子抜け。せっかく高校生を
主人公にしたのだから、もうちょっと学校での亜季亜のエキセントリックな面も描いて
欲しかった気がするなぁ。
読ませる文章力は十分あると思うのだけど、後半の父親と亜季亜の会話文の説明臭さには、
辟易した所もありました。もうちょっと、わかりやすく書いてほしかった。
あと、文章を強調する時の点(丶)をつけた文がやたらに出て来るのも、ちょっと
鼻につきました。こういう文章は、あまり頻用すると、かえって逆効果になると思うの
だけどな。

装丁は非常にカッコイイ。設定だけ見ればかなり好みだっただけに、ちょっと肩透かし
だったかな。個人的には、次回作を読むかはちょっと微妙。世間の評判次第かなぁ。