海外ヴァイオリニストのコンサート、灯火管制下の結婚式、未知のカクテルを編み出すバーテンダー…
“會舘の人々”が織り成すドラマが、読者の心に灯をともす。大正十一年、丸の内に誕生した
国際社交場・東京會舘。“建物の記憶”が今、甦る。激動の時代を生きた人々を描く。
直木賞作家の傑作長編小説!(紹介文抜粋)
“會舘の人々”が織り成すドラマが、読者の心に灯をともす。大正十一年、丸の内に誕生した
国際社交場・東京會舘。“建物の記憶”が今、甦る。激動の時代を生きた人々を描く。
直木賞作家の傑作長編小説!(紹介文抜粋)
辻村さん最新作。タイトル通り、直木賞や芥川賞受賞の記者会見の時なんかに使われる
丸の内の東京會舘を舞台にした連作短編小説。
上巻は旧館時代のお話で、下巻はリニューアルした新館でのお話。一作ごとに
主人公が変わって行きますが、東京會舘に関わる人々のお話というのは一貫しているので、
前のお話に出て来た人物が年を取って再登場、というシーンが度々出て来たりします。
実は、一話目、二話目辺りまでは、大正、昭和初期頃のお話だったので、文章も少し
堅くて、若干とっつきにくいというか、歴史小説読んでる感じで、なかなか乗れなかった
んですよね。それでも、読み進めて行くうちに、小さな感動が積み重なって行って、
下巻に入ってからはもう、ほぼノンストップ。一つ一つのエピソードが、どれも心に
響いて、出て来る登場人物みんながそうであるように、私も、東京會舘の魅力にどっぷり
取りつかれてしまいました。従業員の人々がみんな、本当におもてなしの心を大事に
していて、頭が下がるばかりでした。サービス業っていうのは本来はこうあるべきなんだ、
と改めて教えてもらった気持ちでした。
上巻では、第三章の、東京會舘での結婚披露宴を控えた女性が主人公の『灯火管制の下で』、
第四話の、東京會舘のバーで働く新米バーテンダーが主人公の『グッドモーニング、フィズ』
が好きかな。第五話の東京會舘の名物菓子、パピヨン誕生秘話を描いた『しあわせな味の記憶』
も捨てがたいけれど。
下巻の方は、更にどれも捨てがたい。
第六話の、亡くなった夫との東京會舘レストランでの金婚式を描いた『金環のお祝い』、
第八話の、東日本大震災が起きた日、女性四人で東京會舘ラウンジで過ごした一夜を描いた
『あの日の一夜に寄せて』の二作は、ラストで涙腺決壊寸前状態でしたし。第九章の、
辻村さんを彷彿とさせる、直木賞を受賞した作家の東京會舘での思い出を描いた
『煉瓦の壁を背に』も、ラストでぐっと来ましたし。一作ごとに、胸に沁みる温かさを
残してくれて、私も、東京會舘という場所がとても大好きになってしまいました。
どの登場人物の体験も、すごく羨ましかったです。結婚式挙げてみたいし、レストランで
体験マナー教室受けてみたいし、本格フランス料理のお料理教室も通ってみたいし、
バーで素敵なバーテンダーさんと小粋なお話がしてみたいし。もちろん、建物自体も
隅々まで眺めて回りたい!そして、帰りはおみやげに美味しいお菓子を買って帰りたい。
が、しかし、私のような庶民には、到底敷居を跨げるようなところじゃないんだろうなぁ。
現在は、新新舘の建て替えに向け、長期休業中なのだとか。近くを通りがかっても(って、
通り掛かる用事なんてないけど^^;)、エントランスすら見学すら出来ないのかぁ。残念。
ただ、実は、私自身は東京會舘って言われても、あんまりピンと来なかったんですよね。
直木賞や芥川賞の記者会見を開く所、と言われて、ああ、って感じ。帝国ホテルは
近くを通ったこともあるし、よく知っているのだけれど。そのすぐ近くにあるんですね。
外観とか、全然わかんないや。
読み始めて、きっと文学賞関係のお話は入っているだろうな、と思っていたので、
第九章は、お、来たー!って感じでした(笑)。主人公の小椋は、多分、辻村さんご自身の
経験がたくさん反映されたキャラクターなのでしょうね。さすがに、若い頃レストランで
食事して、従業員に『また(直木賞の時に)帰って来ます』と言ったあのエピソードは
フィクションでしょうけど^^;
小椋が獲った第百四十七回ってもしかして・・・と思って調べてみたら、案の定、辻村さんが
受賞された回でした。賞関係の他の部分は事実に即して書かれているっぽいので、多分
そうだろうな、と思って読んでたんですよね。フィクションを盛り込める余地があるとしたら、
ご自分の回だけだと思うので。そういう意味でも、小椋は辻村さんの分身みたいなものなんで
しょうね。小椋が、記者会見で感じたことは、まんま辻村さんが感じたことなのじゃないのかな。
東京會舘が特別な場所だというところも。
とにかく、全編に亘って、辻村さんの東京會舘への愛と憧憬が詰まった一作だと思います。
どの登場人物も、みんな東京會舘を愛している。それがどの文章からも伝わって来ました。
新たに新新舘が落成したら、一度でいいから見に行ってみたいです。
とても素敵な作品集でした。お薦めです。
丸の内の東京會舘を舞台にした連作短編小説。
上巻は旧館時代のお話で、下巻はリニューアルした新館でのお話。一作ごとに
主人公が変わって行きますが、東京會舘に関わる人々のお話というのは一貫しているので、
前のお話に出て来た人物が年を取って再登場、というシーンが度々出て来たりします。
実は、一話目、二話目辺りまでは、大正、昭和初期頃のお話だったので、文章も少し
堅くて、若干とっつきにくいというか、歴史小説読んでる感じで、なかなか乗れなかった
んですよね。それでも、読み進めて行くうちに、小さな感動が積み重なって行って、
下巻に入ってからはもう、ほぼノンストップ。一つ一つのエピソードが、どれも心に
響いて、出て来る登場人物みんながそうであるように、私も、東京會舘の魅力にどっぷり
取りつかれてしまいました。従業員の人々がみんな、本当におもてなしの心を大事に
していて、頭が下がるばかりでした。サービス業っていうのは本来はこうあるべきなんだ、
と改めて教えてもらった気持ちでした。
上巻では、第三章の、東京會舘での結婚披露宴を控えた女性が主人公の『灯火管制の下で』、
第四話の、東京會舘のバーで働く新米バーテンダーが主人公の『グッドモーニング、フィズ』
が好きかな。第五話の東京會舘の名物菓子、パピヨン誕生秘話を描いた『しあわせな味の記憶』
も捨てがたいけれど。
下巻の方は、更にどれも捨てがたい。
第六話の、亡くなった夫との東京會舘レストランでの金婚式を描いた『金環のお祝い』、
第八話の、東日本大震災が起きた日、女性四人で東京會舘ラウンジで過ごした一夜を描いた
『あの日の一夜に寄せて』の二作は、ラストで涙腺決壊寸前状態でしたし。第九章の、
辻村さんを彷彿とさせる、直木賞を受賞した作家の東京會舘での思い出を描いた
『煉瓦の壁を背に』も、ラストでぐっと来ましたし。一作ごとに、胸に沁みる温かさを
残してくれて、私も、東京會舘という場所がとても大好きになってしまいました。
どの登場人物の体験も、すごく羨ましかったです。結婚式挙げてみたいし、レストランで
体験マナー教室受けてみたいし、本格フランス料理のお料理教室も通ってみたいし、
バーで素敵なバーテンダーさんと小粋なお話がしてみたいし。もちろん、建物自体も
隅々まで眺めて回りたい!そして、帰りはおみやげに美味しいお菓子を買って帰りたい。
が、しかし、私のような庶民には、到底敷居を跨げるようなところじゃないんだろうなぁ。
現在は、新新舘の建て替えに向け、長期休業中なのだとか。近くを通りがかっても(って、
通り掛かる用事なんてないけど^^;)、エントランスすら見学すら出来ないのかぁ。残念。
ただ、実は、私自身は東京會舘って言われても、あんまりピンと来なかったんですよね。
直木賞や芥川賞の記者会見を開く所、と言われて、ああ、って感じ。帝国ホテルは
近くを通ったこともあるし、よく知っているのだけれど。そのすぐ近くにあるんですね。
外観とか、全然わかんないや。
読み始めて、きっと文学賞関係のお話は入っているだろうな、と思っていたので、
第九章は、お、来たー!って感じでした(笑)。主人公の小椋は、多分、辻村さんご自身の
経験がたくさん反映されたキャラクターなのでしょうね。さすがに、若い頃レストランで
食事して、従業員に『また(直木賞の時に)帰って来ます』と言ったあのエピソードは
フィクションでしょうけど^^;
小椋が獲った第百四十七回ってもしかして・・・と思って調べてみたら、案の定、辻村さんが
受賞された回でした。賞関係の他の部分は事実に即して書かれているっぽいので、多分
そうだろうな、と思って読んでたんですよね。フィクションを盛り込める余地があるとしたら、
ご自分の回だけだと思うので。そういう意味でも、小椋は辻村さんの分身みたいなものなんで
しょうね。小椋が、記者会見で感じたことは、まんま辻村さんが感じたことなのじゃないのかな。
東京會舘が特別な場所だというところも。
とにかく、全編に亘って、辻村さんの東京會舘への愛と憧憬が詰まった一作だと思います。
どの登場人物も、みんな東京會舘を愛している。それがどの文章からも伝わって来ました。
新たに新新舘が落成したら、一度でいいから見に行ってみたいです。
とても素敵な作品集でした。お薦めです。
と、上記の文章を考えた後に、ネット検索していたら、辻村さんのインタビューが載っている
ページに辿り着きました。なんと、そこには、
ページに辿り着きました。なんと、そこには、
『「結婚式を東京會舘で挙げたんです。当時はまだ直木賞にノミネートされたこともなかったの
ですが、式の後に『直木賞の時に戻ってきます』と言ったら、プランナーやスタッフの方々は
笑ったりせずに、『お帰りをお待ちしています』と言ってくれました(中略)」』
ですが、式の後に『直木賞の時に戻ってきます』と言ったら、プランナーやスタッフの方々は
笑ったりせずに、『お帰りをお待ちしています』と言ってくれました(中略)」』