ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

畠中恵「おおあたり」/若竹七海「静かな炎天」

どうもこんばんは。やっと涼しくなって来ましたかねぇ。相変わらずすっきりしない
天気が続いてますけれど。快晴の晴れ間が恋しいなぁ。
明日は晴れみたいですが。甥っ子姪っ子の運動会が今日から明日に順延になった
そうなので、応援に行って来ようかと思います。いつも土曜日だから観に行けなかった
んだよねー。がんばれー。


読了本は二冊です。


畠中恵「おおあたり」(新潮社)
しゃばけシリーズ最新刊。年一回のお楽しみですね。今回も優しい一太郎
愛らしい守家たちに癒されたなぁ。今回のテーマは『おおあたり』。それぞれの
お話にこのテーマが取り入れられています。
大当たりの『よみうり』に始まり、大あたりした富くじが騒動を引き起こしたり、
栄吉の作った『辛あられ』が大あたりしたり。ひとつのテーマで、いろんな書き方が
出来るものだなぁと感心しました。
ショックだったのは、やっぱり、栄吉の縁談のことですよねぇ・・・。前作で、
ついに栄吉にお嫁さんがー!と驚きつつ喜んでいたところだったので・・・まさか、
こんな展開になるとは。栄吉の優しさと真面目さが仇になったのかなぁ。
確かに、頼りなさはあるだろうけれども。でも、江戸中に評判になるあられを
考案するなんて、栄吉も成長しているんだなぁ、と感慨深いものがありました。
それなのに、なぜあんこだけが苦手なのか謎ですが・・・。食べた人間がお腹を
壊す程のあんこって一体・・・。素人が作ったって、そこまでまずく作れないの
じゃないのか。不思議過ぎる。焦げ付かせちゃうとか、そういうことなのかしらん。
仁吉と佐助と一太郎の出会いを描いた『あいしょう』が読めたのは嬉しかったですね。
一太郎は、5歳の時からあのまんまだったんだなぁ。そりゃ、みんなが一太郎
好きになる筈だよ。仁吉と佐助も、一太郎と出会った時は子供の姿だったというのが
意外でした。幼い一太郎に合わせて、敢えて子供の姿で会うことにしたってことなんで
しょうかね。だって、二人とも千年の時を生きて来た妖なのですもの。
ラストの『暁を覚えず』では、怪しげな猫又の薬を飲んででも、お店の役に立ちたいと
願う一太郎の健気さにほろり。一太郎の頑張りに、ついつい応援してあげたくなって
しまう。しかし、ほんとに一太郎の身体が一人前に丈夫になる日は来るのだろうか・・・。
こんなに健気に仕事に向き合おうとしているのに、身体が言うこと聞いてくれないって、
もどかしいだろうな。なんだか可哀想になってしまう。一太郎は、その存在だけで
十分みんなの役に立っているとは思うのだけれどね。
でも、最後にはちゃんと一太郎の望み通り、船上で仕事が出来て良かったです。
あと、おたえさんの天然ボケっぷりには度々苦笑させられた。いいキャラだなー。
でも、もうちょっと男心がわからないと、藤兵衛さんが可哀想だ(笑)。
そろそろマンネリになるかな?と思いつつも、毎度ちゃんと趣向を凝らして、
飽きずに読ませる作品になっているのだからすごい。来年はどんな作品になるのか、
楽しみに待っていよう。


若竹七海「静かな炎天」(文春文庫)
葉村シリーズ最新作。こんなにコンスタントにシリーズの新刊が出るなんて!
今までの寡作っぷりはどこへやら。嬉しい限りです。
今回は、短編集。さすがに、完成度が高い。文庫だからなのか、短編だから
なのか、普段よりもユーモア度が高かったような。くすりと笑えるシーンが
たくさんありました。なんといっても、巻末解説の大矢博子氏もおっしゃっているけれど、
あの葉村晶が四十肩で苦しむことになるなんて!!えー、まじか、と思いましたよ(笑)。
なんせ、私もシリーズはほぼリアルタイムで追いかけている身。そして、晶さんとは、
ほぼ同年代。で、でも、四十肩の辛さはわかんないよ!早すぎないか、晶さん・・・。
今回は、さほど酷い目に遭ってないかな?と思いきや、ラスト一編で案の定な展開。
いや、いつもみたいに死にそうな目に遭う訳じゃないんだけど、晶さんの人の良さ
なのか、頼まれると断れない性格が災いして、ねずみ算式にトラブルを背負い込む羽目に
なる、という。もう、読んでて、こっちがイライラしちゃいましたよ。なんでそこで
断らないのーー!って。体調悪いのに。早く休んで欲しいのにーーー!って(笑)。
晶さんにずうずうしく、どーでもいい頼み事をする人物、それぞれにムカついたんですけど、
そもそも、諸悪の根源は店長の富山な訳で。今回の作品では、随所でその悪魔的な
性格が散見されていたような・・・。こんな人間と一緒に働くのはイヤだなぁ(涙)。
これが、晶さんの一番の不幸なのでは・・・(笑)。もちろん、本人のトラブルメイカ
資質も影響しているとは思いますけどね(苦笑)。
一話目の『青い影』の冒頭で起きたバス事故が、その後の作品にも少しづつリンク
して行く形になっていて、途中で思わぬ繋がりがあったりするところは、連作短編の
名手と言われる若竹さんらしい作品集になっていると思う。
ミステリとしては、表題作の『静かな炎天』が気に入りました。町内会長が持っていた
ボールペンから、あんな推理を思いつくとは。晶さんの慧眼には脱帽でした。
続く『副島さんは言っている』のオチもいい。晶さんの妄想推理が当たってしまう
という。ただ、結局、星野殺害の犯人は、そのまんまあの人物ってことでいいのかな。
そんな都合よく、犯行のことだけ忘れるなんてあるのだろうか・・・。
それにしても、晶さんが勤めるミステリ専門書店、魅力的すぎ。こういう書店が、
家の近くにあればいいのにー。富山が開催する毎回のフェアやイベントも楽しそうだし。
常連になりたいっ。まぁ、海外ミステリに疎い私じゃ、全然彼らの話についていけない
とは思うけれども^^;;
最後のページの、富山店長と行くイギリス・ミステリツアー、実際企画したら、行きたい
ミステリ好きが殺到するんじゃないかしらん。帽子収集を競うって意味不明だし、
降霊は立ち会いたくないし、立ったまま缶詰の夕食もちょっとイヤだけど(笑)。
でも、ベイカーストリートは私も行ってみたい~。
いやー、やっぱりこのシリーズは面白い。堪能したー。
四十肩になろうが、やっぱり葉村晶は最高の女探偵だと思う。このシリーズの新刊が
リアルタイムで読めることが幸せだ。次巻も間を空けずにお願いします。