ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

歌野晶午/「女王様と私」/角川書店刊

「葉桜の季節に君を想うということ」で、世間をあっと言わせ、その年の賞を総ナメにした歌野晶午さんの「女王様と私」。
44歳で独身、無職のオタク中年・真藤数馬は、溺愛している妹とデートに出かけた。そこで12歳の少女未来と出会う。オタクの数馬は、美少女未来の口の悪さに辟易しつつも歓びを感じ、奴隷のように振舞う。そこから、数馬の人生は大きく狂って行くのだった。

なかなか構成は凝った作りになっていますが、「葉桜」のような驚きを期待している方には少し物足りない感じがするかも。私としては、とにかく途中読んでて気持ち悪くて仕方なかった。「電車男」が丁度流行っている時期で、流行に乗って秋葉系をとりあげたのかもしれませんが・・・。出て来る登場人物に全く共感出来る部分がなかった。未来は12歳にしてはあり得ない位極悪な少女だし、数馬は44歳にしてはあり得ない位気持ち悪いロリコンだし。二人の会話は読んでいて腹立たしい程。そこが作者の狙いなのかもしれませんけど。ラストは、歌野さんらしい仕掛けはありますが、多少唐突な感じは否めないです。そういう作品だと言われればそれまでですが。途中オタク部分が多くてちょっと中だるみした感があるので、中篇位ですっきりまとめた方が良かったのではないかなぁ。

「葉桜~」が良作で評価されただけに、ハードルが高くなってしまうのは仕方ない所ですね。私としては、あの作品も完全には納得できない部分もあったりしたのですが。
もともと、新本格ムーブメント最盛期の頃から活躍していた歌野さん。これからも、あっと言わせる作品を送り出して欲しいものです。