ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小川勝己/「ロマンティスト狂い咲き」/早川書房刊

数々の問題作を世に送りだして来た小川勝己さんの「ロマンティスト狂い咲き」。

売れない作家望月。妻との冷え切った生活にうんざりしていた。そんな時、密かに想いを寄せていた自分の担当編集者・伏見裕子から、自分の夫を殺害する計画を持ちかけられる。欲望のままに誘いに乗る望月だったが・・・。

相変わらずノワール的要素たっぷりの小川作品。今回もとんでもないファムファタルが出て来ます。この人の小説は毎回決して読んでいて気持ちの良いものではなく、登場人物には嫌悪感しか感じないのですが、何故かついつい手に取ってしまうところがあります。やはり、はじめに読んだ「まどろむベイビーキッス」でその世界観に入り込み、やられてしまったのでしょう。中毒患者のように、小川流の「毒」が体に残り、またその名残で次を欲してしまう、というか。結局、読んだ後の気分は良くはなく、酩酊状態に陥るという感じなのですが。

で、やっぱり今回も毒々しい男女間の愛憎劇が繰り広げられます。今回は、男女共に自らの欲望のままに行動し、結局どっちもどっちなんじゃないの?て感じ。人間のどろどろした嫌~な部分が怒涛のごとく繰り広げられて、暗い気分に浸れます(苦笑)。小川さんの小説って、すごく生々しいんですよね。いかにも現代小説って感じがします(「墝田村事件」は別ですが)。
それでも、なんだかんだいって、その世界観に惹かれているのでしょうね。

ところで、先にあげた「まどろむベイビーキッス」。この作品、題名にやられました。上手い題名つけたよなー、と。最初気付いてなくて、途中表紙見てたら「あ、そっか」て思いました。こういう言葉遊び的な仕掛けって好きなんですよ。内容は気狂い作品でしたがね。