ミステリ読書録

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恩田陸/「『恐怖の報酬』日記―酩酊混乱紀行 イギリス・アイルランド」/講談社刊

恩田陸さんの初エッセイ集「『恐怖の報酬』日記―酩酊混乱紀行 イギリス・アイルランド」。

恩田さん初の海外旅行、イギリス・アイルランドでの体験旅行記
恩田さんにはこれと同時期に出た「小説以外」というれっきとした(?)小説についての
エッセイ集があり、そちらは小説家・恩田陸の素顔が覗けます。対して、本書は小説家
恩田陸とは違う、意外な一面が垣間見れる、爆笑エッセイ集。恩田さんの小説が好きな人は
もちろん、そうでない人も単純に楽しめる一冊です。

さて、本書の題名「『恐怖の報酬』日記」。何が一体恐怖なのか?それは、ズバリ「飛行機」。
恩田さんという人は、無類の飛行機恐怖症人間なのです。憧れの地、イギリス・アイルランド
には行きたい。けれども、その前に待っているのは恐怖の「あれ(飛行機)」。この心の葛藤が
とにかく笑えます。飛行機恐怖症といえば、大人気漫画「のだめカンタービレ」に登場する
千秋真一青年。観念して飛行機に乗っている最中、恩田さんが一番思い出したのは彼のこと。
彼の心の葛藤をまさしく自分のものと同化させ、いちいち共感を覚える恩田さん。可笑しい。
そして、無事目的地に着いたら着いたで、とにかく行く場所行く場所で飲みまくる。
相当な酒豪のようです。ただし、酩酊しながらも、ささいな体験も全て小説のヒントにしてしまう
あたり、やはり物語を書くのが好きなんだなぁと思わせてくれて微笑ましい。
機中に持ち込む小説を選ぶくだりも面白かったですね。実際読めるかどうかもわからないのに、
真剣に悩むところが恩田さんらしい。旅行に持って行く本って、確かに悩みますよねー。

旅行記がメインなので、装丁も「地球の歩き方」風。ほんとに間違えて買う人いるんじゃ
ないだろうか・・・。実は私自身これを読んだのは海外旅行に行く飛行機の中でした。
目的地は違う所でしたが。私も恩田さん程ではないににしても、飛行機は苦手な方なので、
共感しまくりでした。だって、何であんな重いものが飛ぶの!?あんなに人がいっぱい
乗ってるのに!って毎回思う(笑)。そして離着陸の時には必ず無事を神様に祈ります(笑)。
それに、耳抜きが苦手なんです。頭痛くなっちゃう。あのキーンてやつ。何回経験しても
あれだけは慣れません。だからダイビングもダメなんですよね。
それでも懲りずに毎年夏になると機中の人になっているのですが。その『恐怖』の報酬が、
海外での素晴らしい体験ですから。恩田さんも、やっぱりラストで今度は違う場所に行きたいとの
言葉が。でも、飛行機恐怖症はやっぱり克服出来なかったみたいですけどね(笑)。