ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「あえのがたり」(講談社)

加藤さん発の、能登半島応援チャリティ小説アンソロジー加藤シゲアキさんから、

能登の為に何か出来ないか、と今村翔吾さんや小川哲さんに相談したことがきっかけ

で、実現したそうです。別冊の付録としてついて来た(らしい)三人による鼎談

の部分も、図書館側の配慮で最後に貼り付けてくれていたので、読めて良かったです。

いろんな作家さんが寄稿されていて、お三人の交流の広さを感じました(誰が誰に

声をかけたのか、あるいは編集部で声をかけた人もいたのか、その辺りははっきり

わからないですが)。初めましての作家さんもたくさんいましたね。能登や震災

のことが出て来る作品もありますが、全く関連のない作品も入ってます。その

辺りは、ある程度は縛りをつけた方がまとまりのあるアンソロジーになったのでは

とも思うのですが、こういう形で声をかける以上、すべて作家御本人にお任せ

の形で、自由に書いてもらたったようです。出来もばらつきがあったかなぁ・・・。

ちょっと、何が言いたいのかピンと来ない作品もありましたね。個人的には、

今村昌弘さんのと今村翔吾さん、W今村さんのが良かったかなぁ。今村昌弘さんの

作品は、ケーキ屋さんで、三名のホールケーキの予約者のうち、後からサプライズ

のバースデーケーキを予約したのは誰なのかを推理する、日常の謎系ミステリー。

ミステリーとしても物語としても、一番わかりやすくて読みやすかった。今村

翔吾さんの方は、日本昔ばなしみたいな作風で、最後ほろっと出来るところが

良かったな。それ以外では、小川哲さんの、小説家が編集者にわかりにくいと

指摘された小説を、どんどんわかりやすく改稿して行く話も面白かった。

確かに改稿ごとに読みやすくなっていくんだけど、最後、デスゲームにしちゃう

ところにずっこけた。私が編集者でもツッコミ入れるよ、と思いました^^;

柚木麻子さんの、社畜で身体も心のボロボロになった遠藤さんが、昔に流行った

料理研究家の本の料理を作って友達をおもてなしする話も、いかにも柚木さん

って感じのお話で、笑ってしまった。気力も体力も限界の状態で、なんでサマー

パーティ!?っていうツッコミを入れたくなりましたけど・・・こんな人いないよ

^^;仲間内のLINEのグループ名が『スーパーゴリオ爺さんズ』ってのもウケ

ましたけどね(卒論に全員がバルザックを選んだから)。仏語系なんだろうなぁ。

冒頭の加藤シゲアキさんの作品は、能登の輪島が舞台ですし、一番このチャリティ小説

に相応しい作品かなと思いましたね。ラスト、五十年後の能登の賑やかな祭りの

様子にもぐっと来ました。

やっぱり、発案者である御三方の作品はクオリティが高かったかな、と思いました。

バラエティに富んだ作品集でしたね。本来なら、買って読んだ方が良かったの

だろうなぁ・・・申し訳ないです。

でも、こんな風に、能登の震災に寄り添ったアンソロジーが後世に残って行くことで、

能登の震災のことを風化させないという試みは、とても素敵だなと思いました。

『あえのがたり』というタイトルは、『あえのこと』という能登の農家に伝わる、

田の神様を祀り、感謝を捧げる儀礼から来ているそう。「あえ」はおもてなし、

「こと」は祭りを表すそうです。

 

<寄稿作家>

加藤シゲアキ

朝井リョウ

今村昌弘

蝉谷めぐ実

荒木あかね

麻生競馬場

柚木麻子

小川哲

佐藤究

今村翔吾