ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

福田栄一/「監禁」/講談社ノベルス刊

福田栄一さんの「監禁」。

従妹のリサイクルショップでアルバイトをしている美哉は、ある日事務用机の中から一枚の
紙切れを発見する。その紙には「助けてくれ、カンキンされている 警察にれんらくを」
というメッセージが書かれていた。危険を感じた見哉は、話しても取り合ってくれない従妹に
腹を立て、一人でことの真相を追う決意をする。一方、一家5人が焼失した火事の放火犯に
仕立てられ、失踪してしまった恋人の棗を追っていた義人は、二年経って諦めかけていた時に
ある人物から手がかりに纏わる電話を受け、再び調査に意欲を燃やしていた。また一方、失業
し一文無しで公園をぶらぶらしていた泰夫は、そこで出会った老婦人の千瀬からあることを
頼まれて――錯綜する三つの事件はどう繋がっているのか。


はい。という訳で福田さん二連発です。実はこの間に古川さんの「僕たちは歩かない」
を読んでいるのですが、記事にするにはあまりにも短い作品でちょっと読み応えが
なかった為省略。いや古川さんらしい、「gift」を彷彿とさせるSFファンタジー
面白かったんですけどね。絵本って感じでしたね。

で、本書。面白かったです。三つの視点からばらばらに語られる事件が、最後に繋がって
行き、きちんと収束されていく。その課程はやはり多少安易で平庸な感じも受けたものの、
メメントモリ」に比べると格段に読み応えはありました。時間軸が微妙にズレている
のも上手い。なるほど、こういう風に繋がっていたのかー!と感心しました。構成に
かなり気を遣っているのがわかりましたね。美哉が見つけたメッセージは誰のものなのか。
本当に監禁されているのは誰なのか。いろんな要素がきちんと最後に効いている。なかなか
良く出来ている作品だと思いました。
ただ、それだけにラストが唐突すぎてやや尻すぼみな印象。真犯人に関してはもう一ひねり
あっても良かったのでは。事件が地味に解決しちゃうのは、この人の作風なんでしょうか
・・・。多分一般のミステリ作家だと、ここでもう一波乱起きるだろう所で、あっさり
事件が収束してしまう。読者はやや肩透かしを受けるという。人物造詣も「メメントモリ
に通じるものがあるように思いました。特に泰夫や義人の性格は人が良くて真面目な性格という
点で山県と共通するような。こういうキャラは嫌いじゃないですけどね。個人的には泰夫のキャラ
が一番好きでした。見ず知らずのおばあちゃんを本気で心配して、自らの危険も顧みず助けようと
しちゃう人の良いとこがいい。失業したのも元を辿れば人の為ですしね。
女性キャラがなんとなく好感が持てないのも一緒。美哉はともかく、棗はあんまり・・・。
棗の生い立ちが「メメントモリ」の亜須美と重なりました。もしや、引き出しが少ないのか、
この人・・・。

でもね、二作読みましたけど、嫌いじゃないです。むしろ結構好きかも。すごくいい!って
おススメできるかと言われると返答に困るんですが、私はいいと思う。とりあえずミステリ
フロンティアのは読むつもりです。あと、「メメントモリ」のラストページに書かれていた
「玉響荘のユーウツ」も気になる!が、図書館には入ってない模様・・・。むむ。
ちょっと追いかけたくなりました。でも、この人、どんな作品読んでも似たような印象受け
そうだなぁ・・・^^;;

ちなみに、装丁は好きじゃない。ってか、ちょっと手がコワイです・・・。