ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

荻原浩/「オロロ畑でつかまえて」/集英社刊

荻原浩さんの「オロロ畑でつかまえて」。

奥羽山脈の一角、日本最後の秘境といわれる大牛山の山麓にある人口わずか三百人の寒村、
牛穴村。超過疎化に喘ぐこの村の青年会は、メンバー達からなけなしのお金をかき集めて
村おこしを計画。しかし、企画を依頼したのは倒産寸前の広告代理店、ユニバーサル広告社。
お互いの起死回生を狙った企画は『牛穴村 新発売キャンペーン』――果たして彼らの村
おこしは成功するのか!?第十回小説すばる新人賞受賞作。


以前に読んだ「なかよし小鳩組」のユニバーサル広告社が活躍する第一弾(つまり私は続編から
読んでしまったのです^^;)。なかなか図書館で見つからず読めずにいたのですが、ようやく
手にすることができました。うん、本書もユーモアたっぷりで面白かったです!牛穴村のなまりは
ほんとに未知の言語を読んでいるようでした。これでも一般の日本語に近づけて書いてあるって、
一体実際の方言はどんななんだ!?と興味津々です(笑)。人のいい彼らがユニバーサル広告社の
とんでもない企画に乗って四苦八苦する姿に大いに笑わせてもらいました。村人たちのキャラが純粋
だからこそ、真剣にくだらない企画に取り組む姿が微笑ましかったです。各キャラも個性的で
いい味出してて良かった。もちろんユニバーサル広告社の面々のキャラは言うまでもなく。

特に好きなのは人気女性キャスターの涼子と悟のエピソード。赤と白のフタマタカズラのくだり
がとてもいい。これがもしミステリ小説だったらこの植物には全く違う役割が与えられたので
しょうけど・・・特に赤いフタマタカズラに・・・なんて考えてしまうところが、根っからの
ミステリ読みの困った性^^;二人にとってはこれはまちがいなく吉兆の花だったということで。
キャスターの地位も好きだった男もすっぱり切り捨てて、悟の元に来る涼子の決断力と行動力
に拍手。ただ、涼子が村にやって来たことで結局は村おこしは大団円を迎える訳で、これは
理想論的結末でリアリティに欠けると云えなくもない。でも、こういうユーモア小説ならば
これ位すっきり爽快な結末の方が楽しい。最後のアノ鳥のくだりはやりすぎって気もしますが
・・・まぁ、「なかよし~」で結局かれらは相変わらず倒産寸前状態なので、夢は夢のまま
だったということでしょうね(苦笑)。彼らには赤貧状態でひーひー言いながら頑張ってて
欲しい気がします(ヒドイ)。

「なかよし~」への伏線のような、杉山と早苗ちゃんのくだりも良かったですね。新しいパパは
もしかしたらすごくサッカーが上手だったかもしれない。でもきっと早苗ちゃんはどっちにしろ
同じ言葉を言ったでしょう。くぅ。泣かせるじゃないか~(泣いてないけど)。

荻原さんのユーモアセンスが随所で光る楽しい一冊でした。「なかよし小鳩組」とセットで
読まれるとより楽しめますよ~。