ミステリ読書録

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近藤史恵/「モップの魔女は呪文を知ってる」/実業之日本社ジョイ・ノベルス刊

近藤史恵さんの「モップの魔女は呪文を知ってる」。

スポーツクラブで起こった不審な出来事、女子大生が溺愛していた猫がある日取り替えられた謎、
小児病棟で噂された‘魔女’の正体と、相次ぐ些細な医療ミスの背景に隠された真実、はずみで
妹を殺害してしまったアクセサリー会社の社長が遭遇する予期せぬ出来事とは――可愛らしい
お掃除請負人、キリコが全ての謎を綺麗に解く!シリーズ第三弾。


近藤さんの作品の中で最も好きなシリーズは?と聞かれたら、私は今泉シリーズではなく
真っ先にこのキリコちゃんシリーズをあげると思います。毎度毎度、主人公キリコちゃんは本当に
可愛らしい。そして、彼女の素晴らしいお掃除っぷりにはいつもいつも感嘆させられます。
私は掃除が苦手なので、彼女のような手際でてきぱきと掃除をする手際を見習いたい。
そして、彼女のすごい所は、お掃除をとてもとても嬉しそうにすること。このシリーズを
読むと、普段何気なく使っている施設が気持ちよく使えているのは、彼女のようなお掃除を
してくれる人たちがいるからなんだということに気付かせてくれます。第二話で清掃作業員を
体験する女子大生が、使う側がほんのちょっとでも気を遣えば掃除する側も楽になるのに、と
いうようなことをぼやきますが、確かにその通り。でも、ゴミを捨てる時にほんのちょっと
配慮をするだけで誰かが楽になるなんてことは普段考えることもない。誰もが、その側に立って
みなければわからないことってあるんだなぁと思う。お掃除してくれる人がいなかったら、街は汚く
なる一方なのですから。感謝しなければいけないなぁとしみじみ思います。

一般的には清掃作業員というと、ある一定以上の年齢の人間がやるものだという認識があると思う。
でも、キリコちゃんは清掃作業員ということを恥じるどころか、この仕事にプライドと自信を持ち、
実に楽しげに仕事をする。そういうキリコちゃんを見ていると、こちらまで嬉しくなってしまいます。
彼女と出会う人間は誰でも彼女に気を許して、彼女が好きになって行く。それはやっぱり、彼女の
言葉がいつも温かく、優しく人の心に響くから。遭遇する事件は苦い結末のものもあるけれど、
それでも読後が爽やかなのは、彼女の存在が誰の心にもほっこりと温かい何かを残して行くから
でしょうね。出会えて良かったと心から思える人柄なのです。

今回は、キリコちゃん自身もとても辛い経験をします。いつも誰かを癒している彼女が、
自分のことを責めるシーンはとても切なかった。誰の目にも明らかに彼女に責任がないとわかる
ことでも、彼女は自分を責めてしまう。キリコちゃんの中にも弱さがある。こういうエピソードは
とても近藤さんらしいですね。悲しい涙を流すキリコちゃんが可哀想で、抱きしめてあげたく
なりました(キリコ萌えなんで・・・オヤジか!^^;)。

ただ、キリコちゃんの旦那・大介が出て来ないのはちょっと寂しかったです(名前が一度出て来た
だけという^^;)。二人のラブラブエピソードもまた書いて欲しいなー。

天使→精(妖精)→魔女と来たから次は何だろうなぁ。天女とか?何にせよ、キリコちゃんの
可愛さは人間を超えているのだ!
モップを持った可愛らしい美少女に癒されること請け合いです^^