ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

沢村凛/「黄金の王 白銀の王」/幻冬舎刊

沢村凛さんの「黄金の王 白銀の王」。

百数十年にわたり、国の支配をかけて戦い続けてきた鳳穐一族と旺廈一族。生まれた時から
「敵を殺したい」という欲求を植えつけられていた二人の王。だが、彼らは過去のしがらみを
断ち切った。そして、争いのない平和な世の中を作りたいという思いを理解し、陰で協力し合う
道を選んだ。しかし、それは想像以上に厳しいものだった…。敵に捕われの身となった王と、
混乱する二つの国をなだめて統べる王。二人が思い描いた理想は、はたして実現することが
できるのか(セブンアンドワイよりあらすじ引用)。


すみません、ちょっと風邪気味で体調が悪いので頭が働きそうにないのと、出て来る漢字が
難しくて普通に出て来ないと思われるので、あらすじはコピペさせて頂きました^^;

智さんとabeさんが絶賛していて、「絶対読むべき!」と言われた作品です。うちの図書館では
普通~に開架に置いてあったのですが、どうやら世間では予約待ち作品のようです。実は借りたは
いいけど、ぱらぱらめくってみたら難しい漢字がとにかくやたらに出て来るので、なかなか読む気
になれず、期限内に読めずに延長してほっぽってありました・・・すみません^^;せっかく
借りたのだから読まねば!と重い腰をあげようやくページを開いてみたのですが。

うぉっ、面白い!

いや、実は読み始めはほんとに挫折しそうだったんです。だって、登場人物や土地の名前が
とにかく難しい。こんな漢字みたことない!ってののオンパレード。これって舞台中国か!?と
思った位。で、また読み方もめちゃくちゃ難しい。一度出て来ただけでは到底覚えられない。
毎回「これ、何て読むんだっけ・・・」と前のページを確認しながら読むのはかなりストレス
でした。途中で思わず「なんでこんなに難しい名前ばっかつけるんだよーーー!!!」とマジで
叫びました。ほんとに。たまに西澤さんの作品でも思うけど、読者がストレスに感じる位
読みにくい名前をつけないで欲しい。そんなとこで躓きたくないんだよぅ^^;

とにかく、名前はもう途中で諦めました。適当かつ雰囲気で読むことに専念しながら
読むことに(苦笑)。気になった方は本の冒頭に人物紹介が載っているので見て
みて欲しい。絶対読めないってのがわかってもらえると思う。漢字出すの面倒なんで
例は出しません(っていうか、出て来ない漢字もかなりある気がするぞ)。と言いつつ、
主役二人のみ明かしますと(ひづち)と薫衣(くのえ)。さすがにこの二人は覚えました
けどね(笑)。

まぁ、名前はともかく(苦笑)、ストーリーは読み進むにつれてどんどんのめり込んで
行きました。実は時代劇なんかの権力争いものってあまり好きじゃないんで、最初は人物関係や
権力関係を把握するのに一苦労。生まれながらにして死を意識しなければいけない立場
というのがどうしても今の世の中で生きていると理解しにくい。穭と薫衣がお互いにささいな
ことで相手を殺そうとする感情にどうしても抵抗を感じてしまう。そういう世の中で生きて
いるというのはわかるのだけれど。それでも、「なすべきことをして歴史を変えて行く」
という二人の信念に基づく行動を追ううちに、次第に読む手が止められなくなって行きました。
一つが成功しても、一つ危機がやって来る。歴史を変えようとする二人にはたくさんの困難が
差し掛かる。その中で、お互いに対する思いも少しづつ変わって行く。正直、薫衣の内面
はあまり出て来ないので終盤までいまひとつ人物像がよくわからない部分もあったのですが、
それが最後に明かされることで一気に大きな感動が押し寄せて来ました。





以下、ラストについて触れています。未読の方はご注意下さい。







私が一番好きだったのは、< 常闇の穴 > に行くと決めた薫衣を稲積(にお)がなりふり
構わず止め、そこで初めて夫婦が心を通わせることが出来たシーン。お互いの立場も超えて、
ただ相手が大切だと気付けることの幸せ。二人の心が繋がって本当に嬉しかった。
稲積はかなり好きなキャラでした。始めの夫婦生活の場面も微笑ましかったな~。

それだけにラストはあまりにもやるせなかった。それが彼の宿命なのはわかるけれど・・・。
それでも、彼は真の王であり続けた。自分の運命を粛として受け入れ、旺廈の王として
なすべきことをした
それはもう、周りがとやかく言える筋合いのものではない。それを決断した穭が一番誰よりも
辛かったと思う。二人の間には二人にしかわからない見えない信頼の糸が繋がっていたの
だから。ラストはほんとに読んでて辛かった。その少し前に薫衣の幸せな姿が描かれている
だけに・・・。感動の後に深い慟哭がやって来たという感じ。だからといって、後味が悪かった
訳ではなく、ただ、薫衣の運命が悲しかった。もっと普通に、稲積と子供二人と静かに幸せ
な生活をさせてあげたかった。それが夢物語だとわかっているけれど・・・。







終盤は二人の王に感情移入しまくりでした。戦のシーンなんかは、昔に読んだ田中芳樹
さんの「アルスラーン戦記」を思い出しましたね。いろんな策略を考える薫衣が軍師
ナルサスと重なりました(ナルサスファンだったんで(笑))。

とても壮大で素晴らしいファンタジー作品でした。
読めて良かったです。自分だけでは絶対手に取らなかった作品なので、智さんとabeさんには
多大な感謝を捧げたいです。
ありがとうございました!