ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

メフィスト編集部編/「学び舎は血を招く メフィスト学園①」/講談社ノベルス刊

「学び舎は血を招く メフィスト学園①」。

6人の作家が描く学園ミステリ・アンソロジー


えっと、先日読んだメフィスト道場がなかなかの良作揃いだったので、同時期に出たこちらも
借りてみました・・・が、あちらと比べると遥かに出来が悪くてがっかりでした。まほろ
入っているのが気になったのですが(冴さん、これでした^^;)、まぁ短編なら我慢できるだろう、
と思ったのが間違いでした・・・。結果は短評で(もうだいたい予想できるでしょう^^;)。
そもそも、なんでこのメンバー?と思える寄稿陣。初読みは日日日さんだけで、後は一冊は
読んだことがある作家ではあるのですが・・・学園ミステリであるのに、どの作家の作品にも
ほとんど好感の持てる学生キャラが出て来ないというのはどういうことなんでしょう。これなら
メフィスト道場に収録されてた村崎さんの作品の方がよっぽど(作品にもキャラにも)好感が
持てたよ・・・。


では、各作品の短評を。

竹本健治「世界征服同好会」
最初読んだ時はそれほどいい作品とも思えなかったのですが、他のを読んだ後だと遥かに
ましであることがわかりました。やはり、御大の実力ゆえでしょうか。ただ、汎虚学研究会自体
の意味がよくわからなかったし、出だしの悪魔の紋章は肩透かしだし、キャラ造詣もなんだかなぁ
という・・・って、全然褒めてないな^^;でも、ラストの世界が変貌を遂げる真相はなかなか
面白かった。

楠木誠一郎「殺人学園祭」
この人は随分昔に文豪を探偵に据えたミステリを何作か読んでいて、結構面白かった覚えが
あるんですが、これは酷かった。学園ミステリということでYA向けにしたのかわかりませんが、
文章もキャラ造詣も酷い。前に読んだ時はそこまで文章が下手だったとは思わなかったのですが。
そもそも、あの状態で死んだ人間がダイイングメッセージなんか残せるわけないだろ・・・
ツッコミどころがありすぎてある意味笑えました。


古野まほろ「敲翼同惜少年春(センチメンタル・レヴォリューション)」
・・・挫折
だからこの人の文章無理なんだってば!!10ページ読んだ自分を褒めたいくらいだわ。
日本語とは思えない文章の羅列に眩暈がしました。1ページ読むごとに怒りが・・・。
私、アンソロジーで挫折した作品初めてですよ・・・。この作品の面白さを誰が読んで
教えて下さい。完全に「ついてこれるやつだけついて来い!」って感じの作品だと
思います。ついて行ける人はどうぞ。

福田永一「闇に潜みし獣」
この6作の中では一番良かったかな。登場人物には嫌悪しか感じなかったけど^^:
いつもの福田さんのほのぼのした作風とは全く赴きを変え、黒さを全面に押し出した学園ミステリ。
売春斡旋でお金を稼ぐ高校生たち・・・世も末です・・・。犯人は予想通りではありましたが、
もう一つの連続殺人と絡ませた辺りはなかなかトリッキーでよかったです。

日日日「かものはし」
この人は結構気になっていた作家さんだったのですが、なかなか手に取る機会がなく、今回が
初読みとなりました(ゆきあやさんにお薦めしていただいてる作品、いつも古本屋で探して
いますが未だにめぐり合えておりません^^;)。
むー、これは商業ベースに載せていい作品なんでしょうか。理解不能。文章も稚拙。なんとなく
書きたいことはわかるのですが、文章力がついて行けてない。これじゃ読者はついてこないよ
・・・(黒べ)。

門井慶喜パラドックス実践」
これは学園ミステリとは言えないですね。読後感は悪くないけど、主人公の教師が三人の生徒
たちを論理で打ち負かすくだりには脱力。高校生離れしたあんな詭弁家たちが、○○○で納得
させられちゃうっていうのはどうも説得力に欠けるように思いました。普通の高校生だったら
それで充分なんでしょうけど・・・。そして、相変わらずこの人の文章は無駄に難解な用語が
多すぎる。学園ミステリに、そこまで難しい言い回しを使う必要性はないと思うのですが。語威力
豊富であることを鼻にかけた感じはどうも苦手です。文章自体は悪くないので、そこだけは
改善して欲しいなぁ。




むむむ。メフィスト道場が良かっただけに、期待していた分ちょっとがっかりなアンソロジー
でした。まぁ、個人的に好きな福田作品が読めただけでも良しとするしかないかな(この作品自体
はそんなに好きでもなかったけど^^;)。