ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

畠中恵/「ころころろ」/新潮社刊

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畠中恵さんの「ころころろ」。

ある朝突然若だんなの目が見えなくなった!誰が?なぜ?若だんなの光を取り戻す為、妖たちは
生目神の玉を探しに東奔西走!でも、こんな一大事に、仁吉は男女二人の幼児の世話をする羽目に
なり、佐助は妻と暮らし始めた――どうなる、若だんな!?大人気しゃばけシリーズ第8弾。


しゃばけシリーズ新刊です。毎回毎回病弱なくせに、お約束の如くに災難に遭いまくる可哀想な
若だんな、今回もやっぱり災難に遭いました。必死に頑張って生きているのに、なぜ彼はこうも
悲惨な目に遭うのでしょうか。作者もひとが悪いなぁ。
さて、今回の若だんな、ある朝目を覚ましたら視力が失われているという、とんでもない災難
に遭ってしまいます。ことの始まりは、彼が12歳の時に経験したある出来事が発端となって
います。ただ、若だんなに非がある訳では全くないので、言ってみれば単なるとばっちりで、
ただただ気の毒としか言いようがないというか。でも、相変わらず酷い目に遭っている割に、
若だんな自身はさほど嘆くことなく災難をそのまま受け入れているので、あまり悲壮感がない。
良くも悪くも、おぼっちゃん育ちの人の好さがこういうところに出て来るということなのか。
その分、周りの人間や妖たちは大騒ぎ。本人そっちのけで彼の光を取り戻そうとして各々
走り回ることになります。今回は仁吉や佐助、それぞれに焦点が当てられ、妖たちも総出演
なので、ファンにはなかなか嬉しい一冊になっているのではないでしょうか。ラストの一作
ではきちんと若だんなの見せ場もありますしね。


以下、各作品の感想。

『はじめての』
最初読んでた時は単に12歳の一太郎が経験するほろ苦い出来事を描いた一作だと思って
いたのですが、その後の作品を読むと、この時の出来事がかなり重要であったことが
わかりました。ラストの一太郎の静かな涙にきゅーんとなりました。兄やたちもこの時ばかりは
優しく見守ってあげるところが心憎かったですね。

『ほねぬすびと』
突然目が見えなくなってしまった一太郎ですが、見えないなりに長崎屋に持ち込まれた難題
解決に乗り出します。今回初登場の、佐助に過去助けてもらった恩義を感じて活躍する五徳猫が
いい味出してます。問題になったものが干物だけに、猫が出て来たのかな(笑)。

『ころころろ』
仁吉にスポットがあてられた一作。一太郎の光を取り戻す為に行動していた筈が、なぜか余計な
厄介ごとが次から次へと仁吉の元に持ち込まれてしまいます。振袖を着た人形に取りついた妖の
小ざさ、見世物小屋から逃げ出してきた少年・万吉、仁吉と小ざさが追いかけている河童・・・
なぜかいろんなモノの面倒を見る羽目になる仁吉のおろおろっぷりがなかなか楽しかったです。
上野の広徳寺の寛朝と弟子の秋英も再登場。宏徳寺に預けられることになった万吉は今後もまた
登場しそうですね。

『けじあり』
最初、あれ、この佐助って、あの佐助だよね?と一瞬動揺してしまった。いきなり妻がいて
二人暮らししてるんだもの。完全に作者の姦計にはまった感じでした^^;石見銀山鼠取薬で
鳴家たちが殺されなくてほっとしました^^;たまごやきには要注意!?(笑)タイトルの
意味がさっぱりわからずにいたのですが、わかった時は『なるほど~!』と思いました。
ちなみに、アリの種類じゃないですよ(笑)。

『物語のつづき』
神様を罠で捕まえるという発想に面喰いました。想像するとかなりマヌケな図のような・・・
ぷぷ。有名な童話のお話の続きの解釈はなかなか面白かったです。よもや、浦島太郎と神話の
神々が繋がっているとは・・・!生目神との問答対決を受けて立つ一太郎が勇ましかったです。
一太郎、一作ごとに病は重くなるけれど、確実に一作ごとに成長しているのが嬉しいです。



やっぱりこのシリーズは安定した面白さで安心して読めますね。まぁ、一太郎の体調と身の上は
心配になりますけれど^^;今回、私の贔屓の栄吉や松之助兄さんが出て来なかったのが寂し
かったな。まぁ、松之助兄さんは縁談がまとまったからっていうのもあるかもしれないけど^^;
それにしても、一太郎の受難は一体どこまでエスカレートするんでしょうか^^;ほんとに
素直な良い子なので、いつか報われる日が来ると良いなぁと願わずにいられません。一太郎
病気が治る(妖とか神様が作った)奇跡の薬が手に入るとかね・・・ないか^^;