ミステリ読書録

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若竹七海/「ポリス猫DCの事件簿」/光文社刊

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若竹七海さんの「ポリス猫DCの事件簿」。

100匹を超える猫と、息つく間もなく起こるトラブル。“猫島”にひとりのおまわりさんは、
今日もてんてこまい。これでもかとばかりに襲いかかる大小様々な事件に忙殺される七瀬晃巡査と、
頼れる相棒・ポリス猫DCの活躍がたっぷり楽しめる、傑作コージー・ミステリ(あらすじ抜粋)。


若竹さんの最新作。最近出す作品は全部葉崎市シリーズですねぇ。今回は、その中でも猫島を
舞台にしたシリーズニ作目。派出所の七瀬巡査と、相棒のポリス猫DCが巻き込まれる騒動を
描いた連作短篇集です。最初読んでる時はタイトル程ポリス猫のDCが目立ってる訳じゃないよなぁ
と思いながら読んでいたのですが、ラストまで読むと、しっかりDCが活躍する作品になっている
辺りが上手いな~って思いました。途中で出て来た土管があんな風に効いてくるとはね~。一話
完結形式ではあるのですが、ちょこちょことその後への伏線が挟まれていて、若竹さんらしい
小技の効いた連作集になっていると思います。
猫島が舞台なだけに、DCを中心に、猫がわんさと出て来ます。これでもかってくらいに、猫中心
です(笑)。若竹さんって、よっぽど猫好きなんですかね。そうじゃなきゃ、こんな設定作らない
か(苦笑)。
それぞれのお話で殺人事件も出て来るのですが、呑気でとぼけた猫島気質が作品全体にも漂って
いて、楽しく読めました。ただ、事件の真相には、若竹さんらしい毒が含まれていて、救いが
なかったりもするのですけれどね^^;
七瀬巡査って、職務には忠実だけど、一見そんなに有能そうにもやる気があるようにも見えない
のに、実は結構鋭いところがあって、しっかり事件解決に貢献してるんですよね。DCの有能さと
相まって、両者はとても良いコンビですね。七瀬巡査も、DCのことをちゃんと有能な相棒と認めて、
大事にしているのも作中から伝わって来ましたしね。ただ、七瀬巡査の警察官らしからぬ『~っす』
って語尾の話し方にはどうも違和感があって、イラっとさせられるところもあったのですが^^;
葉崎シリーズお馴染みのキャラたちも、ところどころで顔を覗かせるのが嬉しい。一作目の
猫島ハウスの騒動に出てきた猫島ハウスの響子ちゃんもいっぱい出て来ますし。でも、
響子ちゃんと良い雰囲気だった虎鉄君が出てこなかったのは残念でしたが。ロマンス的な要素は
今回まったくなかったですね^^;この状態で、七瀬巡査に嫁をもらうのは難しいんじゃないの
かなぁ。猫島の住人自体30人程度しかいないし、勤務終えて猫島から自宅に戻った後じゃ出会い
もないだろうし・・・。駐在さんって、結婚してないとなれないんですね。知らなかったです。
確かに、独身で駐在さんになっちゃうと、出会いゼロになりそうですけれど^^;

ラストの、七瀬巡査とDCの出会いのシーンが良かったです。DCも苦労してきたんですね・・・。
おばあさんとのくだりが切なかったです。『センセー』は、葉崎市在住のあの作家先生のこと
でしょうかね。

それにしても、この間江ノ島に遊びに行ったばかりだったので、猫島のイメージは完全に江ノ島
のまま読んでしまいました(苦笑)。猫島の全景の絵を見ると、ほんとに江ノ島そっくりなんだ
もの^^;江ノ島にも野良猫いっぱいいたしねぇ。温泉施設も洞窟も神社もあったし。もちろん
架空の島だとの断り書きがありますが、モデルはどう考えても江ノ島ですよね(苦笑)。葉崎の
モデルは葉山でしょうしね~。

今回もお馴染みの杉田さんのイラストがとっても可愛らしい。猫島ののんびりした雰囲気に
ぴったりですね。
若竹さんらしいコージーミステリ、今回も楽しく読めました。
それにしても、あれほど寡作な作家さんだったのに、最近コンスタントに作品が読めて嬉しいなぁ。
この調子で書いてもらえるとファンとしても嬉しいのですけれど。そろそろ葉村シリーズも読み
たいなぁ・・・。