ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

若竹七海「パラダイス・ガーデンの喪失」(光文社)

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若竹さん最新刊。最近はほんとに毎年コンスタントに新作を出してくださって、

嬉しい限り。今回は、久しぶりの葉崎シリーズ。湘南・鎌倉近くの架空の街・

葉崎市を舞台にしたシリーズです。出て来る登場人物は作品ごとに全然違って

いたりするので、シリーズものといっても、共通するのは同じ葉崎市で起きる

出来事ってくらいだったりするんですけれども(ちょこちょこ重複するキャラクター

が出て来ることもありますが、私自身は大抵把握出来てません^^;)。

今回、出てきた二村警部補は再登場らしいですが、前にどの作品で出て来たのかは

さっぱり覚えておりませぬ・・・(面目ない)。なかなか個性的なキャラクター

なんですけどね。私の記憶力ってどうなってるんですかね(知るか)。

コロナ真っ只中の2020年9月、葉崎市の楡ノ山の個人庭園『パラダイス・

ガーデン』の一角で、身元不明の女性の死体が発見されたことから物語が始まります。

『パラダイス・ガーデン』の女主人・兵藤房子は、第一発見者として警察に通報

するも、捜査に来た警察に、被害者と房子には何らかの関係があって、房子が何かを

隠しているのではないかと邪推されてしまう。身に覚えのない疑いをかけられて

憤る房子だったが、捜査を続けても一向に死体の身元がわからない。一体、この

女性は誰なのか。他殺なのか、自殺なのか――。

若竹さんらしい、ほろ苦ミステリー。登場人物がかなり多く、頻繁に場面転換する

ので、状況を把握するのが結構大変でした。まぁ、これは若竹作品にはいつもの

ことではあるのですが。ちょっとごちゃごちゃしてて、頭が混乱しましたねぇ。

作中に出て来るキルトにちなんで、章立てもキルトの図柄が採用されています。

ひとつひとつの章がキルトの如くに編み上がって行って、最後に一つのキルト

作品が出現する、という形で構成されている辺りも、さすが構成と伏線の鬼、

若竹さんって感じです。緻密に組み上がって行くだけに、全体像を把握するのが

難しい作品でもありましたが。コロナ禍の今の状況を非常に上手く物語に溶け込ませて

いる辺りはお上手ですね。二村警部補の、フェイスシールド代わりのサンバイザー

が、個性的な小道具として生かされているところもいいですし。シリアスな場面

なのに、妙な滑稽さがあって、このシリーズらしい軽妙洒脱な雰囲気を演出して

いる感じがしました。

パラダイス・ガーデンで見つかった死体の正体は、最後の最後まで二転三転

していたので、かなり翻弄されてしまいましたが、真相が明かされて、なるほど、

と思いました。様々な人間模様が絡み合って、かなりついていくのが大変でしたが。

基本、出て来る登場人物が面倒な人間ばっかりだったので、イラッとしたところも

多かったです。冒頭の方で、最初に房子のところに捜査に来た警察官なんて、

房子の話をちっとも聞かずに自分の偏見だけ押し付けて行くし。こんな警察官

やだよ~と思いましたね^^;

こういう作品は、映像とかで見た方がわかりやすいだろうなぁ。あ、でも

死体の正体とか、映像化するには難しい部分もあるか(ネタバレしやすい?)。

文章だけだと、どうしても頭に思い描くのに限界があって。人物相関図とか、

手元に用意して読むべきなのかもしれないけれど^^;

パラダイス・ガーデンのお庭は、ぜひとも訪れてみたいなぁと思いましたね。

房子さんの日々の手入れのおかげできれいに整えられたお庭を眺めて、カフェで

のんびり過ごしてみたいなぁと思いました。コロナ禍ならではの休日の過ごし方

って感じもするしね。