ミステリ読書録

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田中啓文/「こなもん屋馬子」/実業之日本社刊

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田中啓文さんの「こなもん屋馬子」。

お好み焼き、たこ焼き、うどん、ピザ、豚まん…。笑って泣いて無性に食べたくなる! 「こなもん屋」
のおばはんが、謎のレシピでお悩み解決。大阪発B級グルメミステリー。『ジェイ・ノベル』掲載
を単行本化(紹介文抜粋)。

UMAハンター馬子』のあのトンデモおばはん、馬子&弟子のイルカが帰って来た!って、あれれ、
こなもん屋?おんびき祭文は?UMAは??と、両者の馬子の関係性がよくわからないままに読み
始めたのですが、どうやらキャラクターだけが一緒で、あとは全くの別物と思って読むべき
作品のようです。別次元のキャラとでも言うのでしょうか。そもそも、今回の馬子とイルカの
キャラ自体が、お店を見つけた客たちの妄想の中だけの存在のような書き方なので、実在するのか
どうか最後まで曖昧なまま。いかにもそこらへんにいそうな『ザ・大阪のおばはん』キャラの馬子を、
実在するのかわからないような、ミステリアスな存在にしちゃうところが斬新でした。

馬子の傍若無人な性格は相変わらずなのですが、馬子が作るこなもん料理は、どれもがめちゃくちゃ
美味しそうで、読んでてお腹がぐーぐー鳴りそうになりました・・・。これは、夜中に読んだら
危険ですよ。特に、大阪のB級グルメが大好きな方、注意が必要です。読んでる途中で、思い立って
こなもん屋に走りたくなる欲求を抑えるのに苦労すること請け合いです。
ちなみに、『こなもん』とは、小麦粉を使った料理全般を指します。つまり、主な材料が
小麦粉だったら、なんでも馬子のお店で扱う可能性がある訳です。お好み焼き、たこ焼きは
もちろん、うどんや豚まんやピザやパスタまでがその範疇に入っちゃうのだから、どんだけ幅広い
んだよ、って言いたくなりますが^^;
ただ、馬子にかかれば、そのどれもが素晴らしく極上な『こなもん料理』に変身しちゃうのです。
一度食べたら病みつきになり、常連にならざるを得なくなってしまう。材料は至ってシンプルなのに、
魅惑の味になってしまうのだから、馬子恐るべし。

来る客によって、その時々で姿を変える馬子のお店。路地の一角にあったり、商店街のどん詰まり
にあったり、公園の隣にあったり、雑居ビルの地下にあったり、時には屋台であったり。そんな
神出鬼没な馬子のお店を訪れる客は、それぞれにワケありの客ばかり。でも、馬子のお店に通って、
至福の料理を味わううちに、自然とお客の憂いが晴れて行くのです。そして、常連客の憂いが
なくなると、馬子のお店はその客から姿を消してしまう。後に残るのは、舌が記憶する、馬子が作った
魅惑のこなもん料理の味だけ。お客は、その味を再び味わうことを目当てに、夜の街中を、馬子と
馬子のお店を見つける為にさまよい歩くことになる・・・。ワンパターンの展開が繰り返される
連作形式ですが、どのお話もとっても面白かったし痛快でした。やっぱり、馬子のキャラと、
彼女が作るこなもん料理が最高でしたね。めっちゃ大阪行きたくなりましたよ。大阪食い倒れツアー
に行きたいぞぅ。そして、馬子のお店を見つけて、私も常連になってあだ名つけてもらいたい(笑)。
ここに出て来なかったこなもん料理って他に何があるかなぁ。豚まんやピザは出て来たけど、普通の
パンは出て来てないから、パンのべる、とか?(笑)。でも、それじゃB級グルメって感じじゃないか^^;
だったらホットドックとか・・・うん。タイトルは『ホットドックのべる』だな(何の話だ?笑)。

一作ごとにしっかりミステリ的なオチもあって(まぁ、ゆるいですが)、お客の正体が最後に
わかるところも良かったです。
馬子は相変わらず傍若無人で破天荒なキャラですが、言うことはきちんと的を射ているし、度々
含蓄のある発言をするので、UMAハンターのあの馬子よりもずっとまともな性格に感じたし、好感も
もてました(笑)。常連になった客たちがみんな馬子に感謝してお店を後にすることから鑑みても、
それは明らかだと思います。弟子のイルカに対しては相変わらず酷い扱いで、ちょっぴり気の毒に
なりましたけどね(苦笑)。


いやぁ、めっちゃ面白かったです。ほんと、こなもん食べたくなりました。馬子の外カリ、中フワの
まんまるたこ焼きが食べたいなぁ・・・(じゅる)。
梅寿シリーズ最終巻も、ようやくもうちょっとで回って来そうなので、楽しみ、楽しみ。