ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

誉田哲也/「ケモノの城」/双葉社刊

イメージ 1

誉田哲也さんの「ケモノの城」。

ある街で起きた監禁事件。
保護された少女の証言に翻弄される警察。
そんな中、少女が監禁されていたマンションの浴室から何人もの血痕が見つかった―。
あまりにも深い闇に、果たして出口はあるのか?小説でしか描けない“現実”がここにある―。
圧倒的な描写力で迫る衝撃のミステリー(紹介文抜粋)。


久しぶりに誉田さん。出た時新聞広告で大々的に宣伝されていたし、かなり話題になっている
ようだったので予約してみました。確か、今年一番の問題作、みたいな書かれ方してたんじゃ
なかったかな。
・・・いや~・・・、問題作。確かにその通り。なんかもう、感想っていわれても・・・って
感じです。
読んでる時、現実にもこんな事件があったよなーと思いながら読んでいたのですが、何のことはない、
そのものズバリ、実際に起きた『北九州連続監禁殺人事件』を下敷きにして書かれた作品なのだ
そうです。事件の大まかな流れなんかはほとんど一緒なのだとか。
・・・ってことは、実際にこういうことが行われていたってことですよね・・・。
信じられません。タイトルはケモノの城、ですが、ケモノじゃなくて、ケダモノの所業です。
ストーリーの多くは、口に出すのもおぞましい描写のオンパレード。ヨシオと呼ばれる男に
よる身の毛もよだつ拷問シーンや遺体処理シーンには、何度気が遠くなりかけたことか。
っていうか、ほんとにすべての場面で、生理的嫌悪感しか覚えなかった。こんなエグい話、
なんで書こうと思ったんだろう。北九州の事件を、もっと世間に知らしめたかったのかな。
あまりの事件のエグさに、報道規制がかかっていたらしいので・・・。
ミステリーとしては、それほど凝った作りになっている訳ではないし、結局ほとんど
猟奇的なシーンだけで構成されているだけに、読み終えた後に残るものが何もなかったです。
いや、何もなかったというより、吐き気を催すほどの嫌悪感だけが残った、という方が正しい。
とにかく、後味の悪さは半端なかったです。
せめて、ヨシオの正体がもうちょっとひねってあったらなぁ。聖子の父親(三郎)との繋がり
がわかった辺りは面白かったのだけど。辰吾が捕まって聖子が現れた時、もしかしてヨシオの
正体って・・・と意外な人物を思い浮かべたのだけど、全く見当外れでガッカリ。まぁ、
よくよく考えると、その推理はどう考えても無理があったのだけど^^;ただ、ミステリの
展開としては、そっちの方が面白かったなーと思ったりして。現実の事件を下敷きにしている
から、小説的な面白さは後回しにしたのかなぁ。
そういえば、誉田さんの『月光』も、嫌悪感全開の描写が出て来たっけなぁ。こういう、
悪魔の所業的な物語を書くのがお好きなのかも・・・。
しかし、この作品が、あの爽やかさ200%みたいな武士道シリーズを書いたのと同じ
作者だとは・・・。

特筆すべきは、すべての元凶となるケダモノ・・・もとい、鬼畜男、梅木ヨシオの人物造形でしょうか。
彼については、他人の証言からしか語られない為、その実体は最後まで謎に包まれています。ただ、
関係者から彼の言動が語られる度に、そのあり得ないくらいのサイコパスっぷりに怖気が走りました。
読者は100%、彼の人間性に嫌悪感を抱かずにいられないでしょう。彼の標的にされた人間たちは、
みんな彼に従う奴隷と成り下がってしまう。そして、最終的には廃人となって、最悪の場合は死に至る・・・。
もっとその前の段階で逃げ出せなかったのか、とか、拒否出来なかったのか、とか、たくさん
疑問は覚えたけれども。そうした絶対的君主の前では、自分の意志なんてなくなってしまうので
しょうね・・・。ある意味、ヨシオは彼らにとって宗教の教祖のようなものだったんでしょう。
とにかく、こんな人間がいるってだけでも、怖くて仕方がなかった。こんな人間と関わり合って
しまったことが、関係者たちの最大の悲劇だと思います。

最後まで読んでも、多くの謎は残されたままです。聖子と三郎はどうなってしまうのか。
結局、ヨシオとは何だったのか。麻耶にはヨシオの狂気が伝染しているのか。終盤、麻耶の
本当の人物像を知って、背筋が凍りつきました(それが真実かどうかもわかりませんが)。
最近起きた佐世保の女子高生を思い出してしまった。

いやー・・・なんかもう、ほんと、何書いていいやら。ちゃんとした感想になってなくて
すみません・・・。何度か、まじで具合悪くなりました。特に、死体処理のシーンは
すごかったな・・・今思い出しても、夢に出て来そうで・・・うげぇ。本だから、ニオイが
なくてほんとに良かったよ(><)。
とにかく、スプラッターな描写とか拷問シーンとか、生理的にキツイシーンがダメな人は
ぜっっっっっっったいに!!!読まない方がいいですっ!!
ここまで生理的嫌悪感の酷い作品を読んだのは久しぶり・・・。普通の人よりはその手のシーンに
免疫がある方だと思っていたけど、これはキツかった・・・。
かといって、読むのをやめてしまおう、とは思わなったのだけどね。怖いものみたさ、というやつかな。
覚悟のある方だけ、お試しあれ。到底、オススメは出来ませんけれども。
あ、あと、食事前は絶対やめた方がいいですよ。食欲、なくなりますから・・・。