ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三津田信三「誰かの家」/近藤史恵「昨日の海は」

どうもこんばんは。
もう8月も終わりですね。今日はほんとに一日涼しくて過ごしやすい一日だったな~。
一日、一日、こうして秋になっていくんですねぇ。
9月はまたシルバーウィークがありますね。私は祝日+定休日の日・木が
入るので、5連休。最後の2日で温泉に行くくらいで、それ以外は特に予定なし。
でも、9月は仕事が非常に忙しい月なので、大型連休があるのはありがたいなぁ。
本いっぱい読めると良いけれど(長い休みの時って、大抵読めずに終わるんだけどね^^;)。


今回も読了本は二冊です。


三津田信三「誰かの家」(講談社ノベルス
三津田さんの最新作。夏にはぴったりの、ホラー短篇集です。相方がいない
一人の夜に読むのはちょっと勇気がいるなーと戦々恐々としていたのだけど、
読んでみたら、思ったほどではなかったです。
ちょっと怖い体験談を集めたって感じかな。稲川淳二さんが朗読したりしたら
もっと恐怖感が増したかもしれませんが(笑)。
個人的に怖いなーと思ったのは、ドールハウスのお話(ドールハウスの怪』
呪いの人形のお話(『御塚様参り』)、ラストの気味の悪い洋館の話(『誰かの家』
辺りかな。よく考えると、全部人形が関わってる話だなぁ。人形って、ほんと
置いてあるだけで恐怖感を煽るというか。魂が宿るものみたいな印象があるからかな。
あと、後ろから何か得体のしれないものがひたひたと追いかけてくる・・・系のやつも
怖いですね・・・。三津田さんのホラーって、大抵そういうシーンが出て来て、
また擬音表記が怖いのよね^^;今回の短編にも、いくつかそういうシーンが出て
来ましたが。その度に後ろを気にしてヒヤリとしました。ぞぞー。
主人公が耳にした怪談話がほとんどなので、ミステリ要素はほとんどありません。
唯一『湯治場の客』がミステリ混じりだったかな。左肩に腱鞘炎の症状が出た
主人公が、湯治のために温泉宿に泊まった時のエピソード。主人公が宿で出会った
女は、一人で泊まっている筈なのに、なぜか混浴の温泉浴場でも、宿の彼女の部屋でも、
男としゃべっている話し声が聞こえてくる。実は、女には、元夫の生霊が憑いている
らしいのだが――というお話。生霊だと思っていた男の正体にぞくり。まぁ、そういう
オチだろうとは思ってましたが。ミステリ的展開もありますが、最後はやっぱり
怪談で終わるので、三津田さんらしい一編かもしれません。

面白かったですが、やっぱりそろそろ如きシリーズの方が読みたいなぁ。最近の
作品はどちらかというとホラーよりのものが多いから。三津田さんのがっつり本格
ミステリが読みたいです。


近藤史恵「昨日の海は」(PHP研究所
四国の南側に位置する、海に面した小さな田舎町に住む高校生の光介が主人公の
青春ミステリー。
平凡な高校生の光介の家に、ある日伯母の芹とその娘双葉が東京からやって来た。
自分の家に他人が一緒に住むことに始めは抵抗を覚えた光介だったが、次第に
二人がいることに馴染んで行く。その一方で、光介は芹から、自分の祖父母が
海で心中したことを聞かされる。しかも、芹はそれが心中ではなく、どちらかが
どちらかを殺した殺人だったのではないかと疑っているらしい。芹は事実をはっきり
させる為、この町に戻って来たのだ。カメラマンだった祖父と、そのモデルであった
祖母。二人の間に何があったのか。芹と共に、光介も過去の事件を調べはじめる――。
高校生のひと夏の経験とそれによる成長を描いた爽やかな青春ミステリーでした。
読みやすいので、さくさく読み進められました。
主人公の光介は割と素直で真っ直ぐな性格で、突然やってきた従姉妹の双葉に対しても
面倒見が良いので、好感が持てました。双葉は8歳の割には大人びているけれど、結構
わがままな性格なので、普通の人間だったらムッとくることも光介に対して言ったりするのだけど、
そのわがままに理由があることを察して、心配してあげたりする。いい子だなーと思いました。
キモとなるのは、もちろん祖父と祖母の死の真相なのですが、正直、そこの真相は
さほどの意外性がある訳ではなかったです。最後、レンズケースから見つかった領収書から
ドンデン返しの展開になるのかと思ったのに、その少し前に光介が推理した通りの真相を
裏付ける為だけのものだったというのに拍子抜け。でも、その真相だと、いろんな点で
無理があるような気もするんだけどなぁ。どちらかがどちらかをおぶって海に入った、
という証言もあるのだし。
あと、動機としても、それが相手を殺す程の殺意に発展するものなのかな?と疑問も
覚えました。殺意に至るには、もっと他の要素があったんじゃないのかなぁ。あまり
考えたくないけど、もっと醜悪な理由が隠されているような。
ただ、光介は、今回の出来事で、たくさんのことを学び、成長出来たと思う。一人で
東京まで行ったこともそうだし、誰かの為に秘密を抱えて生きることも学んだし。
ミステリ要素よりも、どちらかというと少年の成長物語に重点を置いた作品なのかな、と
思いました。
写真修復師という仕事があるんだなーと思いながら読んでいたのですが、ちょうど今日
ニュース番組でフィルム修復師という仕事を紹介していて、どちらも思い出を修復する
仕事という意味では似て非なるもののように思いました。過去の大事な思い出を
未来に繋いで行く、とても素敵な仕事だな、と思いました。