ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

神永学「心霊探偵八雲 INITIAL FILE 魂の素数」(講談社)

春香に出会う前の八雲が、心霊事件を解決した三つの事件を描いた中編集。しかも、

確率捜査官・御子柴岳人シリーズの御子柴とガッチリタッグを組んだ、両シリーズ

のファンにはたまらない作品集となっております。ただ、私個人としては、確率

捜査官シリーズは一作目しか読んでおらず、しかもその記憶もほぼ残っていない

状態だったので、御子柴ってこんなはた迷惑なキャラだったっけ・・・?と戸惑い

ながらの読書となりました。

しかし、本書でこれほど二人が親しく(?)なっているというのに、本編の方で

御子柴が登場したことってありましたっけ・・・?本書の三つの事件って、春香

と知り合う直前の出来事の筈ですよね。だったら、1巻辺りでも登場していないと

おかしいような・・・。いや、どこかで登場していたかもしれないけど、私が

覚えてないだけかな。

しかし、八雲が幽霊絡みの事件を解決するようになったきっかけが、御子柴だった

とは。自分勝手な理由で八雲の噂を流す御子柴に、ちょっとイラッとさせられ

ましたけど。こんなはた迷惑な人間に、身勝手な理由で付きまとわれてしまう八雲が

ちょっと気の毒になりましたが、最終的には御子柴のことを気に入っているのが

わかって、微笑ましくなりました。なんだかんだで、御子柴の推理力には八雲も

一目置かざるを得なかったということでしょうね。

御子柴との共演ということで、本家の八雲シリーズよりもミステリ度が高めで、

ホラーとミステリがほどよく融合されていて、面白かったです。一冊の完成度

でいえば、本編よりもずっと上かも。ミステリ的にも、意外な真相が隠されて

いたりして、読み応えありました。

春香と出会う前の、とんがりまくっていた八雲に会えたのも嬉しかったですし。

ちらほら、春香とニアミスしているところにもニヤリ。

目に見えるモノしか信じない物理主義の御子柴と、人間の目には見えない幽霊が

視える八雲、正反対の二人ですが、根本的には似ているところもあるような気が

します。なんだかんだで、二人はいいコンビなんじゃないかな。御子柴の言動に

振り回されて翻弄される八雲は、ちょっぴり可愛らしい。

お互いのシリーズのボーナストラックみたいな作品ですが、これで終わりは勿体

ないので、是非シリーズ化してほしいなぁ。八雲が振り回される姿なんて、相手が

春香か御子柴くらいしか見れないでしょうしね。

今度は、春香と出会った後の八雲と御子柴の絡みも読んでみたいですね。