ミステリ読書録

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岸田るり子/「過去からの手紙」/理論社刊

岸田るり子さんの「過去からの手紙」。

高校一年生の純一は、一週間の沖縄合宿から帰ってみると、母親が奇妙な置き手紙を残して
いなくなっていた。手紙には「タンシチュー用の肉を買いに行って来る」旨が書かれていたが、
なぜかゴミの袋の中にまだ賞味期限が残っている肉が捨てられていた。買い物に行った日は
十年前事故で亡くなった兄の誕生日で、毎年この日に母は兄の好物だったタンシチューを
作って仏前にそなえるのだ。どうやら母は買い物に行った日から家に帰って来ていないらしい。
数日後、病院で記憶を失って入院している女性が母であることが判明する。一体母に何があった
のか。純一は、幼馴染の静海と供に母の空白の時間を追い始めるが――ミステリYA!シリーズ。


岸田さんのミステリYA!シリーズ。キャラ造詣なんかはなかなか面白かったのだけど、
その面白さがいまひとつ物語に生かされていないような印象。全体的にかなり微妙。
母親の失踪と記憶喪失の謎を追う高校生コンビという、いかにもYA的な展開は青春していて
いいのですが、そこに絡んで来る兄の幽霊の存在がなんとも中途半端。こんな扱いなら
なくても良かったのでは・・・。兄が遠隔透視の能力で視たことが一応のヒントらしきには
なるけれど、別にその目撃証言を幽霊にさせる必要性は感じなかった。それに、兄の事故死に
関しても意外な事実が隠されているのかと勘繰ったりしていたのに、完全に肩透かしだったし。
母の失踪の謎に関してはそれなりに辻褄が合っていて、出来は悪くないと思うのですが、そこ
以外のいろんな部分で消化不良を感じることが多く、全体的にすっきりしない印象が強かった。
静海と純一の、お互いに反発し合いつつも気になる存在であるという関係は青春してて嫌いでは
なかったけれど。でも、静海の性格って、純一じゃないけど客観的に見てちょっとウザい。悪い子
ではないと思うけど、あんまり付き合いたいタイプではないなぁ。クールに見せて、結局静海の
尻に敷かれちゃう純一の性格は結構好きでしたけどね。

マテリアルクッキング部の設定は面白かった。彼らが作る料理はどれも美味しそう。でも、純一と
静海以外の部員二人を純一の母親失踪の事件に協力させるくだりが必要だったのかは疑問。
その二人が事件解決に重要な働きをしたかというと全くそうでないし。どうも、いろんな部分で
不必要な設定が多すぎるように感じました。もっとシンプルな展開にした方がキャラや設定が
生きて面白かったのではないかという気がします。崖とかモクの出番を増やすとかね(この二人
もかなり中途半端な扱いだったから)。

なんとなく、このミステリYA!シリーズを追う気力が無くなってきている今日この頃・・・。
読みやすさは抜群だけど、その分内容も薄いものが多く、なかなか当たりがない。
とか言いつつ、また開架で見かけたら手を出しちゃうんだろうなぁ(懲りない)。
レーベル制覇の道は通し・・・。