ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

西澤保彦「偶然にして最悪の邂逅」(東京創元社)

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西澤さん新刊。最近結構刊行ペースが早いような。なんだかんだでコンスタントに

新刊が出てますよね、西澤さんって。最近は過去に起きた事件を、何十年も後に

なって回想しつつ、当時解明されなかった謎を解く、という形式の作品ばかりの

ような気がします。なんかワンパターン化してるというか。そこにプラスして

セクシャルマイノリティーやアブノーマルといった要素が必ずついて来る、と。

だいたいどれを読んでもこの形が踏襲されている為、どれを読んでも同じような

感想になってしまいます。そして、それは今回も同様でした。ミステリ的には

そこそこ巧く出来ているとはいえ、さすがに飽きて来たなぁ。もうちょっと違った

タイプのものも書いてみて欲しいなぁ。それか、そろそろあのシリーズの新刊

を・・・!あるいは、『収穫祭』みたいな、こってこての本格ミステリの大作とかさ。

て、なんか西澤さんの記事の時って、毎回おんなじようなこと書いてる気が・・・。

ま、まぁ、いいや。とりあえず、本書の各作品の感想をば。

 

『ひとを殺さば穴ふたつ』

廃屋に埋められ、幽霊になった男が、38年経って過去の事件を考察する話。

次々憑依先が変わるところはちょっと目新しかったかな。いくら好きだからと

言って、一人の女にいろんな男が振り回され過ぎ。ファム・ファタルとはこういう

女のことを言うんだろうなぁと思いました。これが一番5作の中では比較的

わかりやすかったかな。

 

『リブート・ゼロ』

会社の女社長が自宅で何者かに殴打される事件が起きた。同日、別の場所では

女社長の娘が何者かに首を締められ、殺されていた。二つの事件のからくりとは。

もう、人間関係がぐちゃぐちゃ。整理しきれず読んでいたら何が何やらだった^^;

身内内の人間関係でこれだけアブノーマルな愛憎劇が繰り広げられているのもすごい。

最近の西澤作品はまともな恋愛する人がいなくて困るよ・・・。

 

『ひとり相撲』

アナウンサーの両坂の行方不明事件のことを告げられたぼくは、ついにこの日が

来たか、と観念し、過去の四つの殺人事件を告白し始めた――。

これも一人の女にいいように振り回される男たちの悲劇って感じだけど。女に命じ

られたからって、なんで言いなりになって殺人を犯すのか、その辺りの男たちの

内面心理は全く理解不能だった。そんな簡単に人を殺すなよ、とツッコミたくなり

ました。いろいろと腑に落ちなさの残る話だったな。

 

『魔女の隠れ処』

小学生からの同級生だった俺たち三人は、大晦日の夜、メンバーの一人ダバダの

経営する居酒屋で、もうひとりのメンバー、トーマスが書いたミステリ原稿

読まされていた。その原稿の中身は、過去に実際起きた事件を元に書かれたものの

ようなのだが――。

語り手の『おれ』の正体には騙されました。手術のこととか、ちょこちょこ伏線は

出て来ていたのだけれどね。過去の事件に関してはちょっとわかりにくかった。

まぁ、これはどの作品でも云えることなんだけれど^^;

 

『偶然にして最悪の邂逅』

学生時代、夏休み前のある一時期、毎日のように廃屋に忍び込んで女教師の情事を

盗み見していると、ある日、一人の女がそこへ乗り込んで来て修羅場になってしまう。

不可解なあの日の出来事とは一体何だったのか。

これもちょっと人間関係わかりづらかったなぁ。ラストで主要登場人物の『センセー』

と語り手の『ぼく』の正体がわかるのですが・・・ちゃんと理解してると『意外!』

となるんだろうけど、いや、確かに意外なのはわかるんだけれども、途中の人間関係

で大分混乱していた私は『・・・ふーん』ってくらいの感想で終わりました^^;

誰か私に理解力と読解力をくださいーーー(涙)。