ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「七つの大罪」(宝島社)

キリスト教において、人を罪に導く七つの悪徳 <七つの大罪>をテーマにした、

七に関係する作家七人によるアンソロジー

ちなみに、七つの大罪は『傲慢』『嫉妬』『憤怒』『怠惰』『強欲』『色欲』の七つ。

面白い趣向のアンソロジーですよね。イヤミス感プンプン漂ってるテーマで。実際

ほとんどがイヤミス系ですが、唯一毛色が違っていたのが『色欲』を担当した

カモシダせぶんさんと『怠惰』を担当した岡崎琢磨さんの作品。他の作品がどす

黒いやつばっかりなので、ちょっとほっこり出来て、個人的にはどちらも好き

だったな。カモシダさんのはエロ関係で下ネタ満載だけどw

でも、イヤミス系の他の作品も力作揃い。

名前が七に関係する作家ばかりというのも面白い。ただ、三上幸四郎さんまでは

(なんとか)納得できるけど、岡崎琢磨さんはなぜ?と思ったら・・・七月七日

生まれだそうな。名前じゃないんかい。

 

では、各作品の感想を。

<傲慢> 中山七里『罪の名は傲慢(プライド)』

人気のジャーナリスト畔倉から、共著の打ち合わせの後で性的暴行を受けた寒川玲奈

は、すぐさま警察に駆け込み、後日会見を行った。しかし、会見を受けて畔倉は

反撃の会見を開き、合意の上だったと宣った。泥仕合に発展するかと思われたが、

畔倉の死体が発見されて――。

犯人は意外でしたね。いや、分かる人にはすぐピンと来るのかもですが。そっちかー!

と思いました。

 

<怠惰> 岡崎琢磨『手の中の果実』

小学一年生の息子・櫂が学校に行かなくなった。妻によると、学校に行こうとすると、

お腹が痛いと言いだすらしい。今まで妻に子育てを任せっきりだった私は、会社を

休んで長期の休みを取り、農家をやっている妻の実家に櫂と二人で身を寄せることに

――。

これは先に述べたように、ほっこり出来て好きでしたね。息子が怠惰にならざるを

得なかった理由に、心を打たれました。その理由を解明したのがお姉ちゃん

ってとこもよかったですしね。優しい子に育って良かったね。

 

<憤怒> 川瀬七緒『移住クライシス』

自閉スペクトラム症の息子・音也の為に、地方の集落に移り住んだ和人。集落の人々

はいい人ばかりで、上手くやって行けると思っていた矢先に、音也が池に落ちて

亡くなった。悲嘆に沈む夫婦の前に、鎌を持った老婆がやってきた。なぜか老婆は

夫婦ふたりに憎悪の目を向けるのだが――。

老婆の憎悪の理由は、音也の死の真相と合わせて、なんとなく想像がつきました。

ラストの和人の憎悪にぞっとしました・・・まぁ、対象の人物は自業自得では

あるのだけど・・・復讐は達成されるでしょうか。

 

<嫉妬> 七尾与史『オセロシンドローム

久呂恵は、矯正がきっかけで歯科医のKと出会い、夏目漱石の『こころ』がきっかけ

で親しくなり交際に発展した。しかし、彼女の嫉妬深さが原因でKから別れを告げ

られてしまう。久呂恵は、彼が別れを告げたのは、彼に言い寄る女がいるからだと

思い込み、彼への執着心が抑えられずにいた。ある日、出かけた先で心療内科

クリニックの看板を見かけた久呂恵は、自分のこの執着心が病気なのかが知りたく

なり、診察を受けてみようと思い立つのだが――。

最後、予想外の人物が現れて面食らわされました。確かに伏線ばっちり張られて

いましたね。度を超えた嫉妬心は怖いね。

 

<強欲> 三上幸四郎『十五分』

突撃系の動画サイトで人気の配信者イッツミーは、同業者のQRお雪の殺人容疑

拘置所に入れられていた。週刊タイムズの記者綺ケ瀬は、15分間と決められて

いる面会時間の間に、イッツミーこと相良逸美に取材を申し込むのだが。

イッツミーとかQRお雪とか、現代の動画配信の話の割に、なんかセンスが昭和

っぽいなぁと思ってしまった。タイトルの十五分は、面会時間の15分かと思って

ましたが、ラストまで読んで、もう一つの意味があることがわかりました。

 

<色欲> カモシダせぶん『父親は持ってるエロ本を子どもに見つからないように

しろ』

妻の千春が男を作って出て行ってから十四年、息子の架琉と男二人なんとか暮らして

来た。架琉は自分が育てたにしてはとてもいい子に育っている。しかし、ある日

オレは架琉の部屋で、オレが隠し持っていたエロマンガ雑誌を見つけてしまう。

架琉を叱ろうとすると、相手の反応は予想外のもので――。

いやー、これは面白かった。架琉君がいい子過ぎてほっこりしたなぁ。あの

エロマンガ雑誌から、あれほどの推理が開帳されるとは・・・。父親の秘密を

次々と暴き出す高校生男子に慄きました(笑)。下ネタ満載だけど、ミステリと

しても十分面白くて、最後は親子の愛にぐっと来るという満足度の高い一作だった。

 

<暴食> 若竹七海『最初で最高のひとくち』

わがままで厄介な性格だけど、可愛い公介のために、ママはたくさんの料理を作る。

冷凍庫の肉を解凍し、様々な肉料理を。手間と時間とお金をかけて。でも、公介

は食べたい料理を一口づつしか食べない。残った料理は、もったいないからママが

食べるから、どんどん胴回りが太くなってしまう。それより、最近公介がおかしい。

もしかして、また――。

これは、完成度の高さではピカ一じゃないでしょうかね。もう、さすが若竹さん、

としか言いようのないドス黒さ。気持ち悪さ。七つの大罪、若竹さんならどれを

取っても完成度の高い作品を書いてくれるだろうけど、その中でも<暴食>を

担当させるところに編集者さんのセンスを感じますね。期待通りの作品を書いて

くれたと思います。読むのキツかったけど^^;どんでん返しの後の、最後の最後

まで気を抜けない凄まじい作品だった。ラストの衝撃よ。ひぇぇ。あと、葉村晶

登場という、ファンにはたまらないおまけもついております。トータルで

若竹七海の凄みを感じる一作だった。