ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

鯨統一郎/「浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話」/カッパノベルス刊

鯨統一郎さんの「浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話」。

ここは日本酒をワイングラスで出す嫌味なバー「森へ抜ける道」。常連の僕こと工藤と、
山内、マスターの島、三人合わせて「ヤクドシトリオ」は、今夜も四方山話に花を咲かせて
いた。その片隅にいる可憐な女子大生・桜川東子さんを意識しながら・・・。この東子さん、
僕らのどうでもいい話にはそっぽを向いているが、話がこと、私立探偵の僕が抱えている
不可解な殺人事件になると途端に目を輝かせて話に乗ってくる。そして、上品に日本酒の
グラスを傾けながら、するりと事件の謎を解き明かしてしまうのだ――「九つの殺人メルヘン」
のあのメンバーたちが再び登場!



むむむ。「九つの殺人メルヘン」はとても好きな作品だっただけに、あれの続編と聞いて
いたのでかなり期待して読んだのですが・・・。正直、どうでもいいヤクドシトリオの
昔のテレビやラジオなどの懐かし話は時代がずれていてほとんど飛ばし読み状態^^;
おそらくヤクドシトリオと同年代以上の方には懐かしく面白い部分なのでしょうけど。
更に、東子さんの日本昔話を交えた殺人事件の謎解きがいまひとつ説得力がなく、単なる
こじつけのように感じてしまい感心するところまで行かなかった。いつもはとんでもない
と思いつつ、新たな歴史の解釈になぜか納得させられてしまう自分がいるのですが、今回は
それがなかった。殺人事件と日本の昔話の繋がりもかなり無理があり、なんだかとって
つけたような印象でした。ただ、カバー折り返しに次のような作者による断りがあります。


「この作品は、ミステリ部分、昔話の新解釈部分、昔のテレビ番組などのなつかし話
部分と、三つの要素から成り立っていますが、その三つがお互いに少しも関連していない
という珍しい構成をとっています。」(<著者のことば> カバー折り返しより引用。)



・・・まぁ、作者が意図してそうしているのだけはわかりますが。
なんじゃーそりゃー!!と言いたくもなるような。っていうか、関連させようよ・・・。



ただ、工藤がいちいちマスターの言葉にツッコミを入れる部分はついついおかしくて
噴出してしまいましたが。この辺りは前回読んだ「マグレと都市伝説」と同じですね。
マスターの東子さんへの台詞はかなりセクハラに近いような・・・。東子さんがさらっと
受け流してしまうからあまりそう感じられませんけど^^;うるさい女性だったら訴え
られてもおかしくないぞ。
東子さん自身よくわからないキャラですね。彼女自身のことについてはお嬢様の女子大生
という位しかほとんど出て来ないので、どうにも得体の知れない所がある。純真なのかと
思いきや、マスターのセクハラ的質問にもしっかり受け答えしたりするし。実はかなり
強かな女性なのかなという感じはします。頭は良いのだろうけど、どこかポイントがずれてる
気もするし。
各短編の最後に彼女がいつも言う決め台詞。


「もしかしたらこの事件が遠い将来、形を変えて、新たな昔話になるかもしれませんね」



・・・ならないと思うよ。


といつもツッコミを入れつつ読み終えてました(笑)。

副題のように‘恐ろしい’かどうかは疑問ですが、慣れ親しんだ日本昔話のトンデモない
新解釈と、クダラない四十路男たちのなつかし話と、つけたしのような(笑)殺人事件の謎解きで
構成された作品です。是非お手に取って・・・とは言いませんが、鯨さんのアホな作風を
愛している方ならば楽しめる・・・かもしれません(あくまで推測w)。