ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

夏川草介「君を守ろうとする猫の話」(小学館)

『本を守ろうとする猫の話』の続編。とはいえ、前作の内容をきれいさーっぱり

忘れていましてね。まぁ、読み始めたらなんとなく思い出すだろう、と思って

たんですが・・・最後までほとんど思い出せないままでしたね・・・^^;

なんか、前作は主人公が男の子だったよなぁってくらいは覚えていたので、本書

の主人公が女の子であることにアレ?とは思ったのですけどね。

途中で、前作の主人公林太郎が出て来て、ああ、この子が主役だったんだっけ、と

少し思い出したという。確か、前作でもファンタジーとしての設定の甘さを感じた

覚えがあって、その印象は本書でも変わらなかったです。ジュヴナイルを想定

して書かれているのかもしれないけれど、それにしてもファンタジー小説としては

いろいろと消化不良な点が多い。不思議な猫に導かれて異世界への扉が開かれる、

という根本的な設定は、いかにもファンタジーの王道って感じで良いとは思うの

だけれど。異世界に行ってからの、向こうの世界の設定がいろいろと中途半端

過ぎて、あまり心に響くものがなかったなぁ。子供が読むにはこれくらいの内容

の軽さでちょうどいいのかもしれませんが・・・。なんとも薄っぺらい感じが

して、最後までいまひとつ作品世界の中に入っていけなかったです。220ページ

弱でこういう世界を描き切るには、ちょっと無理があるんじゃないかな・・・。

図書館の本を奪った敵との対決も、相手を完全な悪人にしないせいで、緊迫感とか全然

なかったし。主人公のナナミが良い子なのはわかるんだけどね。せめてもうちょっと、

対決シーンはしっかり描ききってほしかったなぁ。なんとなく、会話だけで決着

が着いちゃった感じで、拍子抜けでした。

前作は世界中で翻訳されてヒットしたそうですが、本書の評価はどうなるんだろう。

海外でヒットした数々の有名な児童書に比べて、正直物足りなさは覚えるんじゃ

ないかなぁ・・・。

しかし、アマゾンの他の方の感想読んでたら、みんな結構絶賛されているみたい

なので、私の感覚がおかしいのかも。

主人公のナナミが、本を大事に思う強い気持ちは伝わって来ましたけどね。

なんか、思った以上に黒べるが出て来ちゃった。

あと、タイトルなんですが、この内容でこのタイトルはおかしいような。

どちらかというと、『本を守ろうとする君の話』か、『猫を守ろうとする君の話』

じゃない?猫がナナミを守るシーンってありましたっけ。あったかもしれないけど、

逆のシーン(傷ついた猫をナナミが守るシーン)の方が印象が強いんですが。

若い頃はファンタジー小説も好きで良く読んでたんですが、最近はめっきり苦手

になってしまって(ミステリーにハマってしまったせいかもしれませんが)。

なんだか、昔のようには、ファンタジーが心に響かなくなっているせいで、

こういう感想になってしまったのかも。

夏川さんは、やっぱり本職である医療系の作品の方が、作家としての本領が発揮

出来るんじゃないかなあ・・・(※個人の感想です)。