ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

西加奈子/「しずく」/光文社刊

西加奈子さんの「しずく」。

フリーのイラストレーターである私は、ある日エレベーターの中で幼馴染の『くみちゃん』
と偶然再会する。久しぶりの再会で意気投合した私たちはその場の勢いで二人旅をすることに。
行き先はロス。けれども、せっかくの旅行なのに二日目からはもう時間をもてあましてしまった。
子供の頃は、くみちゃんのランドセルを握っているだけで私は守られている気持ちでいられた。
大人になってしまった私たちは――(「ランドセル」)。様々な形の『女同士』を描いた6作の
短編を収録。


最近巷で大変人気があるらしい西さん。この間偶然観ていたテレビ番組でご本人も見たこと
だし、丁度開架に置いてあったので手に取ってみました。


ううむ。困った。大した感想がない。正直に云えば、皆様がそれほど絶賛するほどいい
とは思えなかった。確かに人気があるのは頷ける作風だと思う。でも、この本読んで
「西さんてこういう作風」というのが私にはイマイチ見えて来なかった。文章や内容
もいまひとつ個性が感じられず、つまらないとは思わないけど、強烈に印象に残る‘何か’
がなかった。多分、一週間後にはほとんどの話を忘れてしまうかも・・・。結局、私の
ようなミステリ読みに、こういう『普通の』話は面白いと感じられないのかもしれません
(どんな体質だ^^;)。
短編だったからなのかな。正直、これを読んでまた他の作品を読みたい!
とは思わなかったです。評判のいい「きいろいゾウ」からにすれば良かったかなぁ。
西さん人気あるのに・・・また敵を作ってしまったな^^;;


一番気に入ったのは「シャワーキャップ」。天真爛漫な母親に、それを少し冷めた目で見ている娘。
娘からすれば「何の苦労もしてなさそうな母」を苦々しく思う気持ちは理解できる。でも、
母親の苦労なんて、自分が母親になってみなくてはわからないことなんだろうと思う。今幸せで
悩みがなさそうでも、子供を育てるということの中に苦労がなかった訳ないし、辛くて悲しくて
泣いた時があって当然。でも、子供がそれに気付けるのはきっと自分が子供を育ててみて、初めて
理解できることなんだろうな。私にはまだ子供がいないから、きっと本当の意味でその苦労を理解
してないんだろうと思う。母がまだ健在で、私を愛して育ててくれたことを心から感謝しなければ、
と思わせられました。母の苦労と愛に気付けた主人公は幸せですね。

表題作の「しずく」もほのぼのしてて良いのですが、ちょっと先が見えてしまったので、
もう一ひねり欲しかった。猫の鳴き声の擬音もイマイチ可愛いと思えなかったし。2匹の
猫がしずくをなめるシーンは好きだな。それだけに、ラストは切ないですね。


西さんファンの方すいません^^;
私の評価はこんなですが、いろいろ書評を見たら絶賛記事ばかりでした・・・。
時間を置いてまた違う作品にもチャレンジしてみたいです(え、読むな?^^;)。