ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小西マサテル「名探偵じゃなくても」(宝島社)

このミス大賞受賞作『名探偵のままでいて』の続編。なかなか面白かったので、

意外と早く続きが読めて嬉しかったです。さすがに、まだ前作の内容覚えている

ので(笑)。人気あるみたいで、回って来るのには少し、時間がかかりましたけどね。

クリスマスの直前、居酒屋で岩田の幼い頃に経験した「サンタクロース消失事件」

について話を聞いていた楓と四季。謎について三人で議論を交わしていると、

紳士然としたオールバックの男性に声をかけられる。男性は我妻と名乗り、楓の

祖父のかつての教え子だったのだというのだが――。

 

 

感想、ネタバレ気味です。未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

今回登場の我妻さん、めっちゃお気に入りになりました。渋いし優しいし、かっこ

いい~。でも、やっぱり一番素敵なのは、楓のお祖父さんですけどね。今回も、

謎解き直前に言い放つ「楓。煙草を一本くれないか」のセリフにしびれました~。

各作品のミステリの謎解き部分には、少し無理やりな印象も受けましたけどね。

一番ツッコミたくなったのは、第三話の『泣いている男』。警察官の被害者の

遺体には涙のあとがあった。泣いていたのはなぜなのか、というお話だけど・・・

まさかの真相。いやいや、そんなものをいくら何でも涙と間違えないでしょう

・・・。目撃した我妻さん、大丈夫?って思いました^^;その後乾いて消えて

いた理由にはなるほど、と納得できましたけど。そもそも、間違えないと思うけど

なぁ。

第四話の『消えた男、現れた男』に出て来た、四季のマンションの管理人にも

ツッコミたいところがあったのだけど・・・これは、しっかりその部分も伏線が

回収されたので溜飲が下がりました。今のご時世、いくら住人が行方知らず

になっているからって、そんな簡単に他人に店子の部屋の鍵を渡す管理人が

いる筈ないよ、と思いましたもん。その時点で、楓も美咲も不自然に思うべきだと

思うんだけどね。楓は、四季の消失で気が動転していたのだとしてもね。ミステリ

マニアな訳だしねぇ。

四季の態度の急変は、多分楓のためなんだろうな、というのは推測できました。

でも、あんな危険なことを考えていたとは・・・。四季の楓への深い愛情には

胸を打たれましたね。

しかし、あいつがまた登場するとは思わなかったです。楓への執着の強さにぞっと

しましたが、余罪があると聞いてびっくり。え、他にも執着してる人いたの!?

親子二代に亘ってターゲットにしてたのに!?と、そこに一番ビックリしたかも。

最終話は、とても切ない展開。一時良くなったと思っても、やっぱり病気の進行は

深刻のようですね・・・。楓とお祖父ちゃんの穏やかな時間が、少しでも長く

続きますようにと願わずにいられません。いつか、本当にイギリス旅行に行けると

いいのに。奇跡が起きればいいのにな・・・それが願わぬことも重々承知なの

だけれども。

 

しかし、楓の想い人の件はまだ引っ張るか!とツッコミたくなりました。

途中その人といる時の楓の内面心理描写で、そっちだろうなぁとは思うのだ

けれど。でも、もうひとりの方も愛情の深さは負けてなさそうだし。

さすがに、次の巻では明らかになるかな?