ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

恩田陸/「夜の底は柔らかな幻 上下」/文藝春秋刊

イメージ 1

イメージ 2

恩田陸さんの「夜の底は柔らかな幻 上下」。

特殊能力を持つ“在色者”たちが、“途鎖国”の山深くに集まる“闇月”。殺戮の風が、次第に
暴れ始めるー。殺人者たちの宴が、幕を開ける(紹介文抜粋)。


恩田さんの最新長編。上巻読んでから下巻回って来るまでひと月くらいかかっちゃったんです
けどね。出来ればこれは一気に読みたかったな~って感じでした。
恩田さん久々の長編。上下巻だし、読み応えありました。また、内容がなんともまぁ、スケールの
おっきい話でして。いってみればパラレルワールドの日本なんでしょうけども。基本的な説明
とか一切なしで、いきなり作品世界に入って行く感じなので、設定を把握するのに結構戸惑い
ましたね。
雰囲気的にはネクロポリスに近いかなぁ、と私は思ったんですけど。あれをもっともっと
ダークで荒唐無稽なお話にした感じ?全然違う?^^;あれは異世界のヒガン(お彼岸)の
話でしたけど、こっちも闇月という特殊な期間に巡礼を行う人々が出て来たりするんで。
日本古来の風習を恩田陸風味にアレンジしたって意味では似てるかなー、と。ま、その
味付け具合がなんともぶっ飛んでるんで、目が点の連続だったんですけど^^;
SFのような、ファンタジーのような、ホラーのような。結構、殺戮シーンも満載だし、描写も
グロいし、読んでて気持ちの良いお話ではなかったんですけどね。いやー、鹿ボールにはほんと、
吐きそうになりましたわ。絶対映像化しないでもらいたい・・・(><)。でも、恩田さんだから、
ぐいぐい読まされてしまう吸引力のすごさ。ページをめくる手が止められない。ぞわぞわ
鳥肌立ちながらも、この先どうなっちゃうの!?とドキドキワクワク。ツッコミ所も多々
ありましたけどね^^;




以下、若干ネタバレ気味感想になっております。
未読の方がご注意下さいませ。
















上巻で広げに広げまくった風呂敷を、一体どうやって畳むつもりなんだと思ってましたが、
案の定最後はなし崩し状態だったような・・・。結構無理矢理終わらせた感がなきにしも
あらずだったり。神山はもっとラストで大悪人っぷりを披露するのかと思ってたのに
姿すら見せずに終了。悪魔のような彼の息子も、もっとその力を大々的に見せつけたり
するのかと思ったんですけどねぇ。ま、その前に屋島風塵が手を打った訳なんですけども。
もうちょっと、全員が衝突するような大々的なバトルシーンがあったら盛り上がったのかな~
と思わなくもなかったです。
なんといっても、実邦と神山の再会シーンがなかったのが残念だったかなぁ。実邦の能力を
もっと神山に見せつけて、彼女のすごさを再認識してもらいたかったな。結局、神山にとって
実邦の存在ってほんとに単なる捨て駒の一つだったんだろうなぁ、と思うとちょっと実邦が
可哀想になります^^;神山の息子って、一体いつ出来た子供なんですかねぇ?実邦と結婚する
前?後?浮気して出来た子供なのか、それとも離婚した後の子供なのか。上巻返しちゃったんで、
その辺りの時系列がわからないままだったんですよね~^^;読み取り不足ですみません^^;

それにしても、一番意外だったのは、ラストでいきなり実邦と葛城がいい雰囲気になったこと。
い、今まであそこまで敵対してたのにいきなり!?と面食らわされました^^;実邦はずっと
心のなかでは葛城の目のことを後悔していたんでしょうね・・・。でも、葛城の態度もころっと
変わったから、ちょっとずっこけた^^;この二人、これからどうなるんでしょ。って、今更
どうにもならないか。










なんか、いろいろ、これからどーなっちゃうの!?って感じで終わるんで、その辺はやっぱり
恩田陸だなーと(笑)。
在色者とか闇月とか途鎖国とか水晶の中の「ほとけ」とか、基本的な説明全部すっ飛ばして
読者完全置き去り状態で話が進んで行くのに、これだけ読ませてしまうんだから、やっぱり
さすが恩田さんだと思いますね。まぁ、不満に思う読者も多いかもしれないけれども。

なんともはや、不思議なお話でございました。殺戮系とかグロ系とか苦手な人はちょっと
要注意かもしれません。
でも、面白かった。久々にがっつり恩田ワールドを堪能したって感じ。長編はやっぱり
読み応えありますね。満足、満足。