ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

今野敏「マル暴総監」/大崎梢「スクープのたまご」

どうもこんにちは。六月も終わりですね。今年も半年が過ぎたとは・・・。
年々、一年が経つのが早くなっている気がするなぁ。
子供の頃は、一年が長くて長くて仕方がなかったのに。不思議。
そういえば、我が家の薔薇さんたちは二番花が咲きはじめました。
やっぱり、どの株も、一番花よりも花が小さめ。こじんまりした感じです。
見栄え的にはいまいちですが、元気に花をつけてくれるだけで嬉しくなります。
ちょこちょこ葉っぱば病気になったりしてますけど、まずまず順調に育っております。
新苗の方も続々と葉っぱを増やしていて、この調子だと、秋には花をつけさせても
大丈夫かも(今は摘蕾していますが)。
でも、これから、最大の難関、夏越えがあるので、気を引き締めなければ。
薔薇さんたち、とにかく暑さに弱いらしいので。今年の夏は暑そうだから、
早めに対策を練らなくては。


読了本は今回も二冊です。



今野敏「マル暴総監」(実業之日本社
任侠シリーズの日村さんがゲスト登場するとの情報を得たので、読んでみました。
が、借りてから、これがシリーズの二作目だということを知って愕然^^;
前作から読みたいところでしたが、間に合わず断念。でも、読み始めて、主人公の
甘糟が、任侠シリーズで阿岐本組にたまに顔を出しては、出されたお茶を
断る、気の弱い警察官だということに気が付きました。彼が主役のシリーズが
出ていたとは、知らなかったです。任侠シリーズの時は、そんなに好感持って
なかった覚えがあるんですが、今回読んでみて、なかなかいいキャラだな~と
考えを改めました。
なぜ彼のような気の弱い人間がマル暴担当になってしまったのか謎ですが、
やるべきことはちゃんとやるし、意外と真面目に仕事に取り組んでいて、
コンビを組む強面刑事の群原から仕事を押し付けられても、くさらずに素直に
従うし。まぁ、これは、やらないと群原の報復が怖いからっていうのが本音で
しょうが(苦笑)。なんか、憎めないキャラだな~と思いました。

内容は、非常に軽めの警察もの。ある日、数人のチンピラ同士の諍いに駆け付けた甘糟は、
その場を、突如現れた謎の白スーツの男が収めるところを目撃する。その日はそれで
収まったが、翌日、チンピラの一人が死体となって発見される。警察は、謎の白スーツの男が
犯人だと目星をつけるが、一向に正体が知れない。唯一その場にいて白スーツの男の顔を
目撃していた甘糟は、ある日思わぬ場所でその男と再会し、その正体を知って愕然とする。
そこから、甘糟の受難が始まった――。

謎の白スーツ男に翻弄される甘糟が気の毒になりつつ、そのドタバタぶりが笑えました。
白スーツ男、いいキャラですね~。今野さんらしいなー。まぁ、身近にこんな人がいたら、
迷惑なだけだろうとは思いますが^^;ちょっと、有川(浩)さんの三匹のおっさんを
思い出したのだけど(あれは三人いますけど・・・^^;)。
コンビを組む群原は、仕事を全部甘糟に丸投げして、自分はパチンコとか行っちゃう
無責任な人だし。こんな人間が相方で、甘糟が可哀想だと思っていたんですが・・・
終盤で、その考えは180度覆されました。これは反則だ~。群原さん、めっちゃ
優秀な人じゃないかー。表面は全く仕事してないように見えて、実はちゃんと
やるべきことはやる人だったんですねぇ。甘糟はいい勉強になったんじゃないですかね。

阿岐本組で、相変わらず甘糟がお茶を固辞するところが可笑しかったです。毎回
同じやり取りするんだもの(笑)。日村さん登場も嬉しかったな。欲を言えば、もうちょっと
ストーリーに絡んでほしかったけど。

ラストは、痛快でスカッとしました。このあたりは、任侠シリーズに通じるものがありますね。
白スーツ男の方はどうなっちゃうのかなーと気をもんでいたら、それも実に痛快に
解決されていたので、溜飲が下がりました。
テンポよく、とても楽しく読めました。警察ものとは思えないくらい軽かったですが(笑)。
連ドラにしたら面白そう。甘糟は誰がいいかなぁ。白スーツ男は、安岡力也とか哀川翔とか(笑)。
これは早めに、一作目も読まなくちゃ。




大崎梢「スクープのたまご」(文藝春秋
大崎さんの新刊。奇跡的に文芸の老舗出版社「千石社」に入社出来た信田日向子は、
入社二年目で国内トップクラスの週刊誌『週間千石』に異動に。連続殺人事件に
芸能人のスキャンダル、行方不明の高校生・・・あらゆるスクープを取る為に、新米女子
編集者が奮闘するお仕事小説。
文春から出ている週刊誌といえば、もちろん、あのセンテンススプリングがこの作品の
モデルなのは言わずもがな、でしょうね。
最近の文春は、本当にスクープに次ぐスクープで一人勝ち状態ですから。
普段私は週刊誌って全く買わないのですが、たまに職場の人が買ったのをくれることが
あって、読ませてもらう機会はあります。政治・芸能・医療界と、話題は多岐に亘って、
それぞれに興味深くはあるものの、眉唾ものだなぁ、と一蹴したくなるものも多い。
個人的には、週刊誌の情報はあまり鵜呑みにしない方がいい、というのが持論だったり
します。まぁ、ぶっちゃけ、週刊誌というものにいい感情は覚えないというのが本音。
でも、記事を書いてる側にしてみれば、どんな話題に対しても真剣勝負、嘘は書けない、
綿密な取材の元に自信を持って書いている、という人がほとんどなのでしょう。 日向子が
勤める千石社の編集者たちも、皆強い志を持って仕事しているのが伝わってきました。
スクープを取る為に、何時間どころか、何日も張り込んで、食事や寝る間を惜しむ間もなく
仕事。時には蔑まれ、罵倒され、怒鳴られながらも、真実を伝える為に身体を張る。
気力も体力もなければ続けられないだろうなぁ、と思いました。精神的に弱い人には
絶対無理だろうとも思う。っていうか、私には絶対無理だと思いました・・・絶対
途中で心が折れると思うよ・・・。徹夜とか無理だし、もう・・・(年齢的に^^;)。
そういう意味では、24歳の女の子である日向子がやる仕事じゃないと思うのだけど、
彼女はいつでも前向きで、全力で仕事にぶつかっているところがすごいな、と思いました。
始めの方こそ、慣れない仕事にへこたりたりしていましたが、次第に週刊誌の仕事に
やりがいを感じて行く。彼女の身体を張った頑張りに、こちらも応援したい気持ちに
なりました(同時に、無茶なところが心配にもなりましたが^^;)。

連作短編形式になっていますが、一作通して一つの事件を追う形にもなっています。
最終的に、それぞれの話の断片が一つになって、最初に出て来た連続殺人事件の
からくりが浮き彫りになって行くという。なかなか事件の背景が複雑なので、
終盤ちょっと混乱したところはありましたが、最後は上手くまとめたな、という感じ。
真実を白日の下に、という週刊誌編集者たちの必死の思いを強く感じる作品でした。

今回出て来た千石社を舞台にしたシリーズは他に二作出ていました。すっかり
忘れていたのだけども^^;
女性ファッション誌に配属になった男性編集者が主人公の『プリティが多すぎる』と、
文芸編集者が主人公の『クローバー・レイン』
どちらも面白かったです。大崎さんは、この手の出版業界を舞台にした作品を書いている
時がやっぱり一番持ち味が出るように思いますね。内情も良く知ってらっしゃるで
しょうから、リアルですし。
興味のある出版業界の内情が伺い知れるので、読んでいる方も非常に楽しい。
次はどこの部署かな。児童書とか専門書とか?まだまだ書こうと思えば、いろんな
ジャンルが書けそうです。
ぜひまた書いて頂きたいですね。