ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

綾辻行人「深泥丘奇談 続々」/大倉崇裕「スーツアクター探偵」

こんばんは。昨日の暑さが一転、今日は台風の影響で雨で涼しい一日でした。
涼しいのはいいのだけど、雨は憂鬱だ・・・。これから関東直撃かもしれない
なんて、イヤ過ぎるー(><)。ブーメラン台風って何だよー。戻ってくんなよー(涙)。


読了本は二冊。今日読み終えたのもあるけど、そっちはまた次回にね。


綾辻行人「深泥丘奇談 続々」(角川書店
待望の、深泥ヶ丘シリーズ第三弾。ゆきあやさんの記事で出たことを知って、慌てて
予約しました。でも、冊数結構入ったので、運良く一番手で回って来ました。
今回も、幻想怪奇な物語が9作収録されております。でも、前二作に比べると、
ちょっと奇抜さや独特の酩酊感が薄れたような感じがしました。まぁ、十分面白かった
のですけれど。
どちらかというとホラーよりのシリーズだと思うのですが、今回は少し、その中に
ミステリ色の強い作品なども入っていて、ミステリ好きにも楽しめる一作になって
いると思います。
主人公が、おみくじを引いたら大吉とか凶とかではなく、『奇』を引いてしまう、
というのがなんともらしくて、笑ってしまいました。奇妙なものにばかり出会って
いるから、おみじくにまで『奇』が出ちゃうんでしょう(苦笑)。
このシリーズらしさが出ているのは、冒頭の『タマミフル』とかオオネコメガニ
なんていう珍種の蟹が出て来る『忘却と追憶』なんかだと思うのですが、
主人公の体重が減らない謎を取り上げた『減らない謎』や、猫で塞がれた密室の
話を作家の主人公が考える『猫密室』なんかもいつもと毛色が変わっていて
面白かったです。『減らない謎』は、ダイエットって、絶対停滞期があるものだから、
減らない時期があるのが普通じゃないのかなーと思いましたけど(苦笑)。
『死後の夢』のオチには脱力したけど・・・単なるオヤジギャグじゃないか^^;
今までの作品にも度々登場して来たお馴染みの咲谷看護師と、主人公の妻との
意外な関係には驚きました。ラストの仕掛けは、綾辻さんらしいな、とニヤリ。
シリーズはこれで完結らしいので、最後にふさわしい作品になっているのでは
ないでしょうか。まだ、謎だらけではあるのですけども(苦笑)。

そしてそして、やっぱり特筆すべきは装丁の素晴らしさ。もう、ため息が出るくらいどの
ページも細部にまで拘りがあって素敵すぎる。表紙を見てはうっとり、ページをめくっては
うっとりしながら読みました。ほんとに、手元に置きたい本というのは、こういう作品の
ことを言うのよね(図書館で借りたけどさ^^;)。
猫ちゃんがたくさん登場したから、表紙も猫ちゃんなのね。かわいいー。
祖父江さんの神っぷりに目を瞠る素晴らしい出来になっていると思います。
これでシリーズ完結とは寂しいなぁ。でも、あとがきの感じでは、いつかまた、
この世界観に出会えるような気もするなー。そうだといいなぁ。


大倉崇裕スーツアクター探偵の事件簿」(河出書房新社
また、マニアックな大倉さんの新シリーズが登場しました。怪獣の着ぐるみの中に
入るスーツアクターを目指す男が主人公。ヒーローではなく、怪獣専門ってところに
拘りを感じます(苦笑)。
主人公の椛島は、怪獣専門のスーツアクターだったが、ある日仕事中、着ぐるみを着たまま
プールに突き落とされ、溺れかける。その時プールに飛び込んで助けてくれたのが、現場仕事中で
その場にたまたま居合わせた太田太一だった。椛島は、その時から、着ぐるみを着るのが怖くなって
しまい、スーツアクターとしての将来を閉ざされた。そこで、椛島は、体格のいい太田のことを
思い出し、自分の代わりにスーツアクターとして怪獣の中に入ってもらうことを思いつく。太田は、
気弱な性格から、仕事が続かず、その日の現場仕事もクビになったところだったのだ。
その日から、太田のマネージャーのようなことをし始めた椛島だったが、仕事の先々で
太田と共に、度々トラブルに巻き込まれる羽目に――。

怪獣大好きな大倉さんの、マニアックな面が全面に押し出された作品だと思います(苦笑)。
怪獣映画好きなら楽しめると思うのですが、残念ながら、私には全くその手の趣味がなく。
スーツアクターにもさっぱり興味がない人間なので、いまいち引いている自分がいました。
一応事件が起きて、主人公が探偵まがいのことをして解決、という流れにはなっている
ものの、ミステリ的な面白さもそれほどなかったような気が。
椛島のトラウマも、結局最後までどうにもならなかったしなぁ。彼は、スーツアクター
戻ることが出来るんですかねぇ。
驚いたのは、マニアの人は、怪獣の中に入るスーツアクター自体のファンになるの
だというところ。中の人の動きのことなんて、気にしたことがなかったので、目から
ウロコの思いがしました。
かつての特撮映画なんかが好きな方には、たまらない作品なのかも。最近、『シン・ゴジラ
みたいな映画が流行っているから、その手の映画が好きな人というのは、結構多いのだとは
思うのですけどね(まぁ、『シン・ゴジラ』は、CGがほとんどなのでしょうけど)。
一番驚いたのは、最後、太田と飛田さんが、いつの間にかそういう仲になっていたこと。
最初は、椛島といい雰囲気になるのかな、と思っていたので意外でした。なんかちょっと、
唐突な気はしたんですけどね^^;
個人的には、いまいち乗り切れない作品だったかなぁ。大倉さんご自身は、非常に
楽しんで書いたのでしょうけれどね(苦笑)。