ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾「素敵な日本人」/又吉直樹「劇場」

こんばんはー。
5月31日、ようやっと神代植物公園のバラフェスタに行って来れました。最終日でした。
相方と予定が合わず、伸び伸びになっていたのです。けど、やっぱり少し遅すぎたようで、
開花最盛期から外れてしまい、薔薇さんたちは大分花が終わってしまっていました。がっかり。
でも、入り口脇のショップで、またも新苗をひとつ購入してしまいました・・・(凝りてない^^;)。
新苗なので来年まで花は咲かせられませんけど。
もともと一つ咲いていたお花はすぐに摘み取って部屋に飾りました(株を疲弊させないため)。
今回のニューフェースさんは、殿堂入りバラのダブルデイライトさんです!ぱちぱち。
クリーム色の花弁に、赤い縁取りがあって、とっても愛らしいお姿のバラさんです。
バラ園で咲いている花の香りを嗅いだら、その素晴らしい芳香に一目(鼻?w)惚れ。すんごいいい香り。
二つの喜びって意味だそうです。花の美しさと香りの素晴らしさ、二つの喜びが入った
バラだからそう名付けられたそう。花びらに二つの色が入っているしね。素敵な名前!
お花を咲かせられるまで大事に育てるぞー。


読了本は今回も二冊。大分前に読了したやつで、記事は下書きしてあったんですけど、
なかなか再校する時間がなくって上げられませんでした。現在あと三冊記事上げてない
本がたまってます・・・^^;



東野圭吾「素敵な日本人」(光文社)
東野さんの最新短編集。ノンシリーズの短編集って久しぶりじゃないですか?
読みやすいのでほぼ一気読み。ま、東野さんの作品はいつもそうですけど。
表題作の短編が入っているのかと思いきや、そうではなかったです。純粋に
このタイトルは、短編集のタイトルなのでした。しかし、内容に合っているかは
ちょっと謎でしたが。すべての作品の主人公たちを指しているのかなぁ。
中には全然素敵じゃない人もいましたけどね(苦笑)。
9作の短編が収録されています。どれも短いながらもほどよく纏まっていて、
面白かったです。

 

では、各作品の感想を。

 

『正月の決意』
やる気のない署長の態度には辟易。お正月から死体が発見されて、やる気が出ない気持ちは
わからなくもないけど、それが仕事なんだから、ちゃんとやれよ!ってイラっとしました。
ま、そこが作品に漂うコミカルさを醸し出す要因でもあった訳なのですが。
第一発見者の夫婦の身の上にはビックリ。彼らの生命を救ったのが署長たちの
やる気のなさだとすれば、彼らも良いことをしたと言えるのかな(苦笑)。

 

『十年目のバレンタインデー』
十年も経ってチョコレートを渡したいなんて、何かあるだろうな~とは
思ってましたが、こういう意図があったとは。驚かされました。しかし、
よく十年も引っ張れたなぁ。

 

『今夜は一人で雛祭り』
私の家では雛人形って飾ったことがないんですよね。姉妹二人いるのに^^;
まぁ、不満に思ったことはないですけど。お内裏様とお雛様って呼び方が
雛祭りの曲の中だけだとは知りませんでした。しかも、あれの歌詞が間違いだらけ
だとは。
亡き奥さんの義母への小さな復讐には、ちょっと胸がすく思いがしましたね。
ただ、彼女の血を引いていたとしても、娘の真穂は結婚した後苦労しそうな気が。
ああいう家庭に嫁いだら、毎日気疲れしそうだ。

 

『君の瞳に乾杯』
『十年目のバレンタインデー』と対になるような作品ですね。立場が逆ですけど。
こんな偶然あるかなぁ。こういう職業、あの組織の中に実際あるんでしょうか。
なんか、頭おかしくなりそうですね・・・。

 

『レンタルベビー』
なんか、近い将来こういう商売ほんとに出て来そう。私も子供がいないので、
ちょっとこういう経験してみたい気はするけど・・・でも、トラブル折り込み済み
ってのはちょっとなぁ。心臓と胃に悪い^^;
一番驚いたのは、ラストの一行。作品が一気にシュールな世界に・・・しーん。

 

『壊れた時計』
主人公が、壊れた時計を持ち去って修理したことが、こういう結果に繋がるとは。
これは、素直に巧いなーと思いました。余計なことしなきゃ良かったのにねぇ。

 

サファイアの奇跡』
イナリの結末にはショックを受けたけれど、青い毛の猫にこういう秘密が
あったとは。ラストは、主人公の未玖が意外と打算的だったことにちょっと
げんなり。しっかり商売してるし。良い話で終わると思ったのになぁ。それにしても、
あんな価値のある猫をすんなり未玖に渡してしまうってのがちょっと理解出来なかった。

 

『クリスマスミステリ』
わかりやすい下衆男が主人公。こういう男に入れあげてしまったことが
間違いの始まりなんでしょうね。アリバイの作り方も非情にオーソドックス。
被害者の方が一枚も二枚も上手だったということですね。死んじゃったけどさ。

 

『水晶の数珠』
これだけちょっぴりファンタジックというか、SFちっくなお話。一度だけ
時間を戻せる能力かぁ。なんか、いつ使っても後悔しそうな気が・・・。
父親が最後に能力を使った理由に胸を打たれました。過去には、使わないで
一生を終えた人もいたのかなぁ。



又吉直樹「劇場」(新潮社)
又吉さん待望の第二長編。薄いのですけど、結構文章がぎっしり詰め込まれて
いるせいか、意外と読むのに時間がかかりました。
今回は事前情報から恋愛小説だとは聞いていたので、又吉さんが恋愛ものを
どう描くのか、楽しみにしていました。
うん。いかにも、又吉さんらしい恋愛観。主人公の永田は、『火花』の徳永と
神谷を足して二で割ったようなキャラ。根暗でうだうだと面倒なことを考える
性格は徳永っぽいし、平気で女に食わせてもらって生活する自堕落なところは
神谷っぽいし。もともと、書き始めたのはこちらの『劇場』の方が先だと言う
のだから、ここから派生して徳永と神谷のキャラが出来たとも云えるのかも。
永田は、売れない劇団で脚本家をしている冴えない男。そんな永田が、ある日
画廊から出て来た女性に一目惚れをすることから始まるストーリー。
恋愛小説っていうほど、恋愛描写が出て来る訳ではないです。永田の恋心の機微
ってのは全く伺い知れなかった。もうちょっと、心理描写の面を中心に書いても
良かったんじゃないのかなって気はしました。せっかく恋愛小説っていう新たなジャンルに
取り組んだのだから。出会いの場面からして、いきなりストーカーまがいの
行動をした永田に対して、相手の沙希は、最初こそ不審に思いつつも、その後は
割合すんなり彼を受け入れてしまう。沙希が、永田のどういうところを好きだと
思ったのか、それがいまいち伝わって来なかったんですよね。その後、沙希の
家に転がり込んで、生活費も入れずにだらだら毎日を過ごす永田に対しても、
負い目があるかのように何も言わずに受け入れてしまうし。典型的な、ダメンズ
を好きになる女性のタイプっていう感じ。勇気を出して生活費を入れて欲しい旨を
告げても、永田はのらりくらりとかわして終わり。そこでもっと強く言わない
沙希に対しても苛立ちを感じたし、ちゃんと向き合わない永田には嫌悪しか
覚えなかったです。結局、永田の抱える鬱屈を、沙希は支えきれずに逃げ出して
しまいます。お互いにもっと正面から相手と向き合っていたら、こういう結末
にはならなかったんじゃないのかな・・・。永田なんか、自分から好きになって
付き合い始めた割に、沙希への思いやりとか全然なかったし。こんな男とよく
付き合っていられるなと、ほとほと呆れました。ただまぁ、小さな劇団で夢を
追いかける男なんて、大なり小なりこんな感じなのかもしれません。プライドだけが
高くて、ちょっと批判されるとこの世の終わりのように落ち込んで、周りに当たったりして。
それが人間ってものなのかもしれない。
ストーリーは決して楽しいお話じゃない。っていうか、むしろ好きではない。
でも、文章はやっぱり時折はっとさせられる言い回しがあったりして、
引き込まれてしまいました。やっぱり、又吉さんの文章好きだな。
キャラ造形には若干問題があるような気がしないでもないけど・・・。
永田の女性に対する態度とか、まんま又吉さんが投影されている感じがする。
女性と話すのが苦手とか気後れがするって言ってる割には、付き合う女性には
ちょっと高圧的になってしまうとか・・・って、又吉さんが女性に高圧的になるわけ
ないか^^;でもなんか、どうしていいかわからなくて相手を攻めるようなことを
つい言ってしまう辺り、不器用な又吉さんならやりそうな気も。
ラストは予想通りの結末ではあったのだけど、必至で沙希の気持ちをつなぎ
止めようと言葉を捻り出す永田の想いが切なかった。今までの態度を考えると、
今更何なのって思うのだけど、それでも二人の別れが悲しくて、やるせなかったです。
賛否両論あるとは思いますが、紛れもなくこれは又吉さんの世界だな、と
思いました。話は好きじゃないけど、又吉さんの世界はやっぱり好きだ。
今後の作品にも期待したいです。