ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小路幸也「ラブ・ミー・テンダー 東京バンドワゴン」/日明恩「優しい水」

こんばんは。ついに関東も梅雨入りしましたね。これから毎日じめじめした
天気かと思うとちょっと憂鬱。
ますます仕事に行きたくなくなるな・・・(おい)。
関係ないけど、部屋で育てている赤ちゃんバラの一つが元気ないのが最近の
一番の気がかり。
葉っぱが病気っぽくって。全然成長しなくなってしまった。
枯れちゃったらどうしよう(ToT)。



読了本は今回も二冊ご紹介。

 

小路幸也「ラブ・ミー・テンダー 東京バンドワゴン」(集英社
シリーズ最新作。しゃばけシリーズ同様、年に一度のお楽しみって感じですね。
今回は番外編になりまして、亡くなった秋実さんと我南人さんの出会いから
結婚に至るまでを描いた作品です。
二人の出会いにはかなり面食らわされましたねぇ。高校三年生の秋実さんが
不審な男たちから逃げているところに通りがかったのが、我南人さん率いる
<LOVE TIMER>のメンバーたち。彼女を助けた我南人さんは、理由ありっぽい
秋実さんを古書店を営む自宅に連れて行く。そこで、彼女が東京に来た理由を
聞いた我南人の家族たちは、彼女のために人肌脱ごうと動き出す――。
バンドワゴンメンバーの中では、記憶の中でしか語られない秋実さんのことは、
ずっと謎のままでしたが、ここにきてようやく彼女の人となりが明らかになり
ました。いろいろと意外なことの連続でしたね~。秋実さんが孤児院育ちとは。
でも、友達想いで行動力があって、責任感の強い秋実さんは、とても好感の
持てる女の子でした。そんな彼女の力になってあげたいと、バンドワゴンの
メンバーたちが一丸となって奮闘する姿は痛快でした。我南人さんの名言(口癖?)
『LOVEだねぇ』が初めて生まれた瞬間も描かれています。秋実さんがきっかけ
だったんですね~。あと、我南人さんの妙に語尾を伸ばすとぼけた口調が、
敢えてやっているせいだとは驚きました。普通にしゃべれたのか・・・^^;
ラストまで読んで、冒頭の我南人さんと秋実さんの出会いを思い返すと、
ちょっとニヤニヤしちゃいますね。思い返せば、この時から・・・ってこと
ですもんねー。我南人さん、高校生相手に・・・ねぇ。ま、我南人さん
自身も若かった訳ですしね。
サチさんと秋実さんの関係も良かったなー。勘一さんは相変わらず渋かったし。
いきなり息子が知らない女の子連れて来たら、普通はもっと戸惑うと思うの
だけど、この二人にかかると、そういうのすっとばしてまず力になって
あげたい!と思ってしまうのだから、ほんとに堀田家の人たちはお人好しで、
素敵な人たちだなぁと思いました。
この当時の芸能界といえば、やっぱり人気アイドル同士の恋愛沙汰なんて
絶対ご法度だったでしょうね。今だったらこんな騒動にはならないと思う
けれど。最後はこのシリーズのお約束、大団円で終わって良かったです。
今回も、LOVEいっぱいで読み終えられました。面白かったです。


日明恩「優しい水」(徳間書店
ひさーしぶりの日明さん。今回は、警察官の方でも消防士の方でもない、
ノンシリーズの長編。結構分厚いので読み切れるかちょっと心配だったの
ですけど(予約本が殺到中なんで・・・^^;)、一体どう収拾つけるのか
気になって、結局最後まで引き込まれて読了してしまいました。
発端は、両親の離婚で母の故郷に引っ越して来た中学一年生の石塚洋が、川に捨て
られている5匹の熱帯魚を見つけたことから始まる。熱帯魚たちは、水草や石と
ともに捨てられていた。魚が好きな浩は、そこに通りがかった犬を散歩させている
老人にわけを話して、ビニール袋をもらい、魚を持ち帰ることに。老人から、
飼いきれなくなった魚を引き取る施設、おさかなポストの存在を教えてもらった浩は、
持ち帰った熱帯魚をバケツに入れ、電車で数駅のおさかなポストへ向かおうとする。
しかし、電車に乗っている途中で次々と魚が弱って死んでしまう。結局全滅した魚を
バケツごと持ち帰った浩は、バケツの中に白い奇妙なもやもやが発生していることに
気付く。そのもやもやを祖父から借りた顕微鏡で見てみると、何らかの微生物で
あることがわかった。浩は、夏休みの自由研究と称して、祖父の自宅でその
もやもやたちを研究することに。白いもやもやは、時間が経つと透明になって
水と見分けがつかなくなることを発見した浩は、ほんの出来心から、喧しい隣の
犬や学校で浩をいじめる同級生にその水を飲ませてしまう。すると、犬や同級生の
体調に変化が表れ始め――。
現代のパンデミックを描きたかったのでしょうか。引き込まれたのは間違い
ないのですが、とにかく最後まで読んでも腑に落ちない部分が多くて、読後に
もやもやが残りました。



以下ネタバレあります。未読の方はご注意を。









結局、川に水草と熱帯魚を捨てたのは誰だったのでしょう?終盤で篠宮の上司の
森田重美の独白が出て来たので、意味深な言動は彼女が諸悪の根源だったから
だったのか!と溜飲が下がりかけたのに、結局彼女は川に熱帯魚を捨てた訳では
ないようです。だったら、浩が見つけた熱帯魚たちはどこからやって来た
のでしょう?
それに、夏休みの研究と称して祖父の自宅であれだけ至近距離で微生物入りの
水に触れていたのに、浩がその時発症しなかったのはなぜ?水を飲まなくても、
水と同じ空間にいるだけで発症するようなのに。
作品の流れとしては、まゆが紅茶に例の水を混ぜて浩に飲ませたからってことにしたいよう
ですが、そもそも彼女が飲ませなくたってそのうち発症していたのでは?
あと、橘たちの試験から、虫歯や口の中の傷等がある、ないで被験者が発症する、
しないに分かれる、というデータは何だった?その後、水の管理をしていた
人間はすべて発症しているのに。
他にもいろいろ納得いかないことがあった気がするけど、まぁ、とりあえず
気になったのは上記の部分。







とにかく、最後まで読んでも誰ひとり救われない結末に暗澹たる気持ちになりました。
浩に関しては、自業自得の部分もなくはないけど、あんな結末にしなくても。
結局、発症したら最後、治療法がない症例っていうのは、本当に怖い。しかも、
ただ水を飲んだだけで痴呆症のような症状になってしまうというのは・・・。
こんな微生物が存在したら、間違いなく生物兵器になりますよね・・・世界恐慌
陥ってしまいます。
それにしても、登場人物で一番怖かったのは、まゆでしょう。可愛い顔して、中学一年で
あそこまでの悪女。末恐ろしい子・・・。浩はあんな子の標的になってしまったことが
悲劇の始まりだったのかも。
今までの日明作品の中で、一番救いのない結末だったんじゃないでしょうか。
このタイトルをつけた意味もちょっとよくわからない。完全に逆のものだと思うのですが。
冒頭の新聞記事の意味もよくわからなかったし。水を飲まされた人たちの末路ってこと?
各章のカウントダウンのようなタイトルもあまり功を奏しているとは思えなかった(途中で
タイトルがついてない名前だけの章もあったし)。

 

やっぱり、既存のシリーズものの雰囲気の方が好きだな。