ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

又吉直樹・ヨシタケシンスケ「その本は」(ポプラ社)

又吉さんと人気絵本作家ヨシタケシンスケ氏のコラボ作品。装丁も内容も絵本

よりの作品ですかね。書店で見かけた時から「絶対読みたい!」と思っていたので、

図書館入荷してすぐに予約しておいたのですが、巷でも結構話題になっている

ようで。今は200人以上の予約が入っているようです。

読みやすいですし、絵も多いので、あっという間に読めちゃいます。1時間も

あれば、ほとんどの人が読めちゃうんじゃないかな。

冒頭に本が大好きな王様が出て来ます。本が大好きな王様でしたが、年を取って

ほとんど目が見えなくなってしまいました。それでも、もっともっとたくさんの

本が読みたい王様は、二人の男を呼び寄せ、二人に、世界中を旅して回って、

珍しい本の話を知っている者を探し出して話を聞き、その話を王様に話して聞かせて

欲しいと頼みます。二人の男はそれぞれに旅に出て、たくさんの珍しい本の話を

集めて戻って来ました。そして、その話を毎夜王様に語って聞かせるのです・・・。

二人の男とは、もちろん又吉さんとヨシタケさんがモデル。又吉さんサイドの

お話は小説風。ヨシタケさんサイドのお話はイラストとちょっとした文字で、

それぞれに集めた本のお話が披露されて行きます。毎度、語り始めは『その本

は・・・』で始まります。だからこのタイトルなんですね~。

くすっとできる話から、考えさせられる話、ほろっとさせる話、胸が痛くなる

ような話・・・いろんなタイプの本のお話が次々と披露されて行きます。ヨシタケ

さんサイドのお話は、絵がとにかく可愛らしくて、それを見ているだけでも

なんとなく癒やされました。ヨシタケさん御本人の体験談みたいなものも多く、

心をぎゅっと掴まれるようなお話もありました。

又吉さんサイドのお話は、さらっと読めるものもあれば、長編で読みたいくらいの

力作もありました。私が一番印象に残ったのは、多分収録作品の中では一番長い

第7夜の、クラスの中で一人浮いている僕と、転校生の竹内春のお話。冒頭の

一文に、ラストまで読むと、主人公僕の願いが込められていることが伺えて、胸が

苦しくなりました。主人公二人の交流に心が温まりましたが、終盤の展開はとても

辛く悲しかった。この一作だけでもこの本読む価値はあると思いましたね。又吉

さんの優しさが溢れている作品じゃないかな。

あと、第9夜のゾンビのお話はくすりと笑えました。うちの相方も以前、常に

ゾンビと戦う為にはどうしたらいいかを考えてる、とかフザけたことを真顔で

話していたことがあるので、それを思い出してしまいました(ゾンビ好きの人は

大抵同じことを考えている!と断言されましたが・・・そういうものなの?^^;)。

こちらはゾンビが怖くなくなる方法についてですけどね(笑)。

二人から本の話を聞き終えた王様のその後には切ない気持ちになりましたが、

たくさんの本の話を聞けた王様は満足だったのじゃないかな。

が、しかーし、驚いたのはその後のオチ。えぇ~・・・。

確かに、又吉さんらしいオチだと云えなくもないですけども。

まぁ、ラストはちょっとガクっと来たところもありましたけど、装丁も挿画も

内容も、とても愛らしい本だと思いました。ヨシタケさんの絵や文字は本当に

味があって可愛らしいですね。すべての本好きさんにオススメしたいですね。