ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

住野よる「か「」く「」し「」ご「」と「」/羽田圭介「成功者K」

こんばんは~。桜も散ってしまいましたねぇ。あっという間に、もうGWですか。早っ。
GWといっても、暦通りなんで、長い連休って感じは全くないですけどね。もともとの休みが
ほとんど連休と被っているしね。


読了本は二冊です。


住野よる「か「」く「」し「」ご「」と「」(新潮社)
『君の膵臓をたべたい』でブレイクした住野さんの最新作。前作はちょっといろいろと
腑に落ちない点が多く、辛口評価の記事を書いてしまったので、今回はどうかなぁと
若干不安に思いつつ読み始めました。
・・・う、うーーーーん・・・微妙。登場人物は主に5人の高校生。一章ごとに一人づつ
主役を務めます。この五人、実はそれぞれに人に言えないかくしごとを抱えています。
それは、他の人には持っていない、ある『能力』をそれぞれに持っているということ。
その能力によって、各主人公たちはほんの少し、他人の心の動きがわかってしまう。
そのことで、五人の気持ちはそれぞれに揺り動いて行く――という感じ。
読む人によっては爽やかな青春小説なのは間違いないと思うんですが・・・。
各キャラの性格とかそれぞれの関係性とか、なんか私にはちょっと受け入れがたいというか、
共感出来ないというか・・・。私が年を取りすぎてしまったのがいけないのでしょうか・・・。
ヒーローになりたい女の子とか、片想いの男の子を応援する為に好きでもない男の子に
想いを寄せるふりをする女の子とか、隣の席の男の子に嫌われてると思い込んで不登校
なっちゃう女の子とか。それぞれに理解出来なかった。それに、友達にパッパラパーの
パラなんてあだ名つけるの、どう考えてもいじめだと思うけど。本人がそう思ってないから
いいのかもしれないけど・・・私だったらすごく傷つくと思うなぁ。一話目の主人公、京が
一番いい意味で『普通』で好感持てたかな。三木さんに対する煮え切らない態度には
イラっとしましたけども。モテないクラスのヒエラルキーの下の方にいる男の子なんて、
そんなものなのかもしれないですけどね。控えめで優しいそんな彼の恋を、クラス一の
モテ男ヅカやパラが応援してあげたくなる気持ちには共感出来ました。
一番よくわからなかったのは三木さんですねぇ。彼女のキャラは、ほんとに理解不能
だったな。天真爛漫で良い子なのは間違いないのだろうけど・・・ちょっと言動が
ぶっ飛び過ぎてて、ついて行けなかったなぁ。まぁ、控えめで大人しい性格の京が、
彼女のような太陽みたいな明るい子に憧れる、というのはわかる気がするけどね。
このタイトル、ちょっと変わってますよね。最初本を手に取った時、何じゃこりゃ、
と思ったんですけど、作品読むとちゃんと意味がわかるようになってます。各章のタイトルも
おなじ『か「」く「」し「」ご「」と「』ではあるんですが、各「」の中に入るものが
違います。文字というか記号なんですけどね。それが、各主人公たちの能力を表して
いるという、ちょっと凝った設定になっているところは面白かったですね。あと、
かくしごと」という単語も、二重の意味が含まれていたりして、そういう所はよく考えられて
いるな、と思いました。
ただ、プロローグとエピローグの会話の意味がいまいちよくわからなかったです。これって、
京と三木さんの会話??多分私の読み取り不足なんですけど^^;;できればもうちょっと、
わかりやすく書いて欲しいと思ってしまいました。
うーん。なんかなー。青春小説としていまいち心に響くものがなかったんですよね・・・。
こういう作品は、やっぱり若い頃に読まないとダメなのかもしれないなぁ。なんか、
煮え切らない感想ですみません・・・。


羽田圭介「成功者K」(河出書房新社
芥川賞でブレイクした羽田さんに初挑戦。テレビか何かで本人が宣伝していて、面白そうだなーと
思ったので。
ご本人自身がモデルということで、どこからどこまでがフィクションなのか読んでいると
だんだんわからなくなって行きました。始めの方はそのままなんじゃないかと思うけど、
ファンと関係を持っちゃう辺りからはフィクションなのかなぁ、と。もしそこも現実に即して
書いてるとしたら、ドン引きなのは間違いない。著者のイメージを悪くするような作品
書いてどうするんだって感じ。この主人公の『成功者K』が、芥川賞獲ってテレビに出まくった
ことで有名人になって、ファンやら女優やら出会った女性とやたらと身体の関係を持つんですよ。
ほぼ全篇に亘って、そういう描写が続いて行くので、さすがに中盤以降飽きてしまったし、Kには
嫌悪感しか覚えなくなってしまった。っていうか、中盤でKが全国セック○スツアーをやり始めた
時は、こいつマジで気持ち悪い、と思いました・・・。女性はほんとに引くんじゃないかな・・・。
最初の方は面白く読んでいたのだけども。性格も天狗になって行くし、成功者の典型的なダメ例を
読まされているって感じ。途中ファンの女の子からストーカーまがいの行動をされて
恐怖にかられて行ったりもするんだけど、そのファンの子とも結局大きな騒動とかに
ならずに有耶無耶に終わってしまっていて、特に大きな事件が起きる訳でもなく。あと、
ドッキリ番組が知らない間に終わっていた件はどうなったんだ?一体どんなドッキリだった
のか、そこはちゃんと書いて欲しかったです。
最後まで読んでも、結局何が言いたいのかよくわからなかったな。しかも、最後の
最後で現実と空想がごっちゃになって、よくわからない世界観になって行くし。
途中の中だるみを我慢して、頑張って読んだのに、あのオチはないよ・・・。
多分、一度賞を獲って一時的に有名になってお金が入ったとしても、それに浮かれていい気に
なっていると、足元すくわれかねない、みたいな自戒の気持ちで書いたのでしょうけどね・・・。
確かに、芥川賞の待ち会の時の変装が話題になって、テレビに呼ばれるようになって、
その飄々としたキャラが面白がられて、一時期やたらにテレビ出まくってましたもんね、羽田さん。
『情熱○陸』も出ていたのでしょうね。私の中では、鳥の胸肉をやたらに食べる人、みたいな
イメージですけど(笑)。
ただ、なぜか同時受賞で羽田さん以上に話題になった又吉さんのことには全く触れられてなかった
ですね。羽田さんの後に芥川賞獲って話題になったコンビニ人間の村田さんをモデルにした
と思われる女性作家は出て来るのに。又吉さんをモデルにした人物を出してしまうと、Kが
成功者っぽく見えなくなっちゃうからかな。明らかに、あの時文學界の話題をかっさらって
いたのは又吉さんでしたもんねぇ・・・(売上もしかり)。
まぁ、こういう自分をモデルにした小説をいけしゃあしゃあと書いてしまうところが、
羽田さんの面白いところなのかも。
文章は思ったよりも読みやすかったですけど、所々で文法的にひっかかる文章なんかも
ありました。それが羽田さんのスタイルなのかもしれないですけど。正直、文章的には
あんまり惹かれるものはなかったなー・・・(すみません)。
相方が、これの前に出たゾンビものの作品を読んでいて、それは面白かったらしいですけど
(私はゾンビに全く興味がないので読まなかったですが)。
今後の作品を読むかは、内容次第かな。芥川賞のはちょっと気になってますけどね。