ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

友井羊「スイーツレシピで謎解きを~推理が言えない少女と保健室の眠り姫~」/大崎梢「横濱エトランゼ」

こんばんは。梅雨明けした割に毎日すっきりしない天気が続きますねぇ。
迷走台風には困ったもんです。ほんとにこっちに来るんだろうか・・・(戦々恐々^^;)。


今回も二冊ご紹介~。


友井羊「スイーツレシピで謎解きを~推理が言えない少女と保健室の眠り姫」(集英社文庫
『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』シリーズの作者の新作。あちらはスープ屋のお話なので
スープが中心に出て来ますが、今回はスイーツが中心。各作品に様々なスイーツが登場し、
謎解きに関わって行きます。旅行の移動中に読み始めたのだけど、読みやすいので、
さくっと旅行中に読み終えてしまいました。
主人公は吃音症を持つ高校生の菓奈。人と喋ると吃ってしまう為、人としゃべるのが
苦手で、教室でも仲の良い子はいない。そんな菓奈が憧れているのが、同じクラスの
真雪君。彼は究極のスイーツ男子で、食べるのも好きだけど、作るのもプロ級の腕前。
お菓子のことになると我を忘れてウンチクを垂れる困った面もあるが、性格はとても
優しい。そんな真雪がある人物の為に作ったチョコレートが、ある日紛失してしまう。
チョコを置いていた家庭科準備室の鍵を持っていたのは、日直である菓奈しかいなかった為、
菓奈が疑われてしまう。しかし真雪は菓奈のことを信じてくれた。菓奈はその思いに
報いる為、チョコ紛失の謎を解く手伝いを申し出る。そのチョコレートは、真雪が
『保健室の眠り姫』の為に作ったものだった。菓奈は、真雪と共に、チョコ紛失の報告に
保健室に行き、保健室登校を続ける美少女と対面したのだった――。
うん、良かったです。主人公の菓奈が吃音症という障害を抱えながらも、少しづつ
勇気を出して謎解きをして行くことで、友達が増えて成長していく過程が爽やかです。
出て来るスイーツがしっかり謎解きのポイントになっているところがいいですね。
お菓子の意外なウンチクなんかも勉強になりました。菓奈が理数系が得意ということで、
お菓子に関わる謎解きなのに、なぜか化学的な変化や数字が出て来たりするところが
面白かった。料理は化学変化だ、というのがよくわかりました。確かに、味覚も今は
数値化出来るんですよね。全く違う食材でも、数値が一緒なら味が同じになったり。
不思議なものだなぁと思いますけれど。菓奈が、一作ごとにお菓子作りの腕前を上げて
行くところも頼もしい。作って美味しいと言ってくれる存在がいることが大きいので
しょうね。真雪のプロ並のお菓子も食べてみたいけれど。真雪のキャラは、本当に
マンガに出て来るヒーローのよう。優しくて、爽やかで。お菓子作りに情熱を燃やす
あまりか、勉強はそれほど出来ないらしいところと、お菓子薀蓄を語り出すといつまでも
止まらない困ったところはご愛嬌ですが(笑)。
でも、一番好きだったのは、保健室の眠り姫、悠姫子さんのキャラ。菓奈に対する
ツンデレなところがもう。なんて可愛らしい人なんだー。こんな人が保健室登校
なってしまったことが腑に落ちなかったけれど、第六話でその謎が明らかになります。
彼女の中で、いろんな葛藤があったのだと思う。菓奈が彼女の中で燻っていた謎
を解いてあげたことで、少しづつ良い方向に向かって行きそうで、ほっとしました。
最終話の葵の秘密にも驚かされましたね~。全く意識していなかったです。前に
戻って確認してみたら、多分ものすごく気を使って文章が書かれていることが
わかるでしょうね。そこまでしなかったけど^^;
最後のおまけ部分の『センパイ』は、もしかしたらあの人物のことかな?と思ったら、
やっぱりそうでした。成長した姿が見られて嬉しかった。『私』にとっては、
『センパイ』は、誰より頼りになる心強い存在だったんですね。ちょっと意外
でしたが、本来はそういう性格だったのでしょうね。『センパイ』とあの人が
進展しているのかとても気になりました。良い方に進んでそうですよね。
眠り姫のその後も気になるし、続編書いてほしいな。


大崎梢「横濱エトランゼ」(講談社
大崎さん最新作。今回は、横浜が舞台。横浜のタウン誌『ヨコハマ・ペーパー・
コミュニティ』略して『ハマペコ』編集部でバイトする高校三年生の千紗が主人公。
推薦で進学が決まったことで、幼馴染の小谷善正が編集長代理を勤めるハマペコ
編集部でバイトをすることになった千紗。時間を持て余していることもあるが、
何より、7歳年上の善正との距離を少しでも縮めたいから。けれども、千紗は
善正がずっと片想いをしていることを知っている。その相手は、美しい千紗の従妹の
恵里香だ。彼女は現在アメリカにいるが、善正は変わらず彼女を思い続けている・・・。
善正への切ない片想いを抱えながら、千紗はハマペコでの仕事に奮闘する――。
情緒溢れる横浜の風景がたくさん出て来て、横浜好きとしては楽しめました。
ただ、ミステリ部分はちょっとわかりにくいし、謎解きものとしては
食い足りない。かといって、善正との恋愛部分もいまいち盛り上がらず・・・。
善正が、千紗のことをどう思っているのか最後までわからなかったのがね。
なんとなく、良い方向に向かいそうな雰囲気は醸し出していたような感じ
ですけども。そもそも、恵里香への思いが変わったのはいつだったのだろうか。
恵里香は、アメリカの恋人と別れて日本に帰って来たら、急に善正のことが
気になって来たのかな。なんか、それはそれで勝手なような。今更感満載だし。
善正が引いても無理はないとも思うけれど。
あと、千紗はいちいち泣きすぎ。恋する女は情緒不安定なものなんですかね。
善正の為に、ハマペコの仕事に一生懸命になる姿は健気で可愛らしかったですけど。
千紗が書いた横浜マップ、見てみたいな。可愛らしいイラストやちょっとした文章
が添えてあったりすると、地図も楽しく見れそう。
ちょっと作品としては物足りなさもありましたが、また横浜に行って異国情緒
溢れる洋館や建築物を眺めてみたい気持ちになりました。