ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「七人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー」/鯨統一郎「タイムスリップ信長 vs三国志」

こんばんはー。またしても台風襲来ですね。ワタクシ、明日の台風に備えて、
選挙は早々に期日前投票してきちゃいました。暴風雨の中傘指して歩いて行くのは
さすがにツライですからね・・・。同じような考えの人が多いのか、結構混んで
ましたねー。


今回も二冊ご紹介~。


「七人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー」(講談社ノベルス
先日行った綾辻さんと京極さんと辻村さんのトークショーの時に会場で売っていて、
買おうか非情に迷った作品。なんせ、寄稿作家がめちゃくちゃ豪華。綾辻さんの
サイン入りだったら間違いなく買ってたんだけど、残念ながらこちらはサインなし
だったので、だったら普通に買うのと一緒かーと思って断念。無事図書館に入って
くれてよかったです。
副題通り、新本格30周年を記念して刊行された特別なアンソロジー新本格時代
を生きて来た私にとっては、これを読まずして何を読む!ってくらいのメンバー
勢揃い。30年前と変わらずみなさん作家活動を続けて下さっていて、嬉しい限り。
しかもみんな、ちゃんと本格ミステリ作家として活動されているのですからね。
こういう作品を読むと、やっぱり本格ミステリはいいなぁと思わされるのでした。

 

では、一作づつ感想を。

 

麻耶雄嵩『水曜日と金曜日が大嫌い―大鏡家殺人事件』
久しぶりにメルカトルと再会。実はデビュー作を読んでからしばらく読まず嫌いになって
いた麻耶作品。最近は好きで新刊も追いかけるようになったのですけれど。だから
読んでない作品は結構多かったりします。それもデビュー作のメルカトルの印象が
非情に悪かったからなのですが・・・(Yさんごめんよ)。
この作品もメルは相変わらず傲岸不遜な態度でイヤな奴です(笑)。しかし、問題なのは
そこじゃなくって、美袋君が体験した大鏡家の殺人事件に関して。トリックはまぁ、
ある意味反則技とはいえ、感心したところもあったんですよ。でも、動機とかハ音記号の意味とか
その他もろもろ、投げっぱなしで終わっちゃうのはねぇ・・・なんとも。しかし、一番衝撃的
だったのは、ラスト一行。おーい・・・。美袋君、こんな所にいる場合じゃないだろ!
ってか、もっと早く教えてあげなよ、メルさん・・・(絶句)。
あと、タイトルの意味がわかりません。水曜日と金曜日、どっから来た?誰か解説
してくださいーーー(><)。

 

山口雅也毒饅頭怖い 推理の一問題』
落語とミステリを融合させたシリーズの一作だそうです。山口さんは推理冴子シリーズ
くらいしかちゃんと読んでないからなぁ・・・^^;
嘘つきの父親が饅頭を食べて毒殺された。容疑者は五人の息子たち。それぞれの証言の中、
二人が嘘つきだという。嘘つきは誰なのか。そして、父親を殺したは?誰が嘘をついているのか
の検証過程には、なるほど、と思わされました。頭の体操みたいな感じね。苦手ですけど^^;
しかし、父親殺しの真相が全然予想外の方向に行ったのはビックリ。そして、最後は
脱力・・・ダジャレか!(苦笑)

 

我孫子武丸『プロジェクト・シャーロック』
世界的ヒットになった名探偵の頭脳を持ったAI「シグマ」を開発した木崎が殺された。
木崎がシグマの開発者だと気づいた鑑識の長澤は、木崎のパソコンを調べ、怖ろしい事実を
知ってしまう。そして、その長澤が更に何者かに殺されて――。
AIの将棋が話題になってますが、名探偵のAIが出る日もそう遠くない日のような気がします。
ほんとに、この内容がそのうち実現可能になってしまいそうでちょっとぞっとしました。

 

有栖川有栖『船長が死んだ日』
有栖川さんの名探偵といえば、やっぱり火村先生(江神さんは、この手の企画ものに登場
させるキャラじゃないでしょうしね・・・書いて欲しいけど!)。
元貨物船の船長だった男が自宅で殺された。痴情のもつれで殺されたらしいのだが――。
ポスターの意外な使われ方に感心。なるほど。そこに目が行く火村センセの慧眼に感服。
船長の寝言に関しては、そんな聞き間違いするかなー?とは思いました。全然違う単語に
思えるけど・・・^^;勘違いで殺されたのだとしたら、気の毒としか言いようがないけれど。

 

法月綸太郎『あべこべの遺書』
二人の人間が相次いで不審な死を遂げる。それぞれの現場にはそれぞれ遺書が残されていたが、
双方の遺書が入れ違いになって、あべこべになっていた。その真相とは。
こちらは当然ながら法月綸太郎シリーズ。死体(あるいは遺書)があべこべになっていただけに、
これはちょっとからくりが複雑でわかりにくかったです。もうちょっとすっきり読ませて欲しかった
なぁ。一番問題なのは、私の理解力だとは思いますけどね・・・^^;

 

歌野晶午『天才少年の見た夢は』
戦争が始まり、世界は壊滅的な状態に陥った。天才を発掘する為に創造された地下シェルター
に、ぼくを始め数人の少年少女が残された。名探偵鷺宮藍もまた、このシェルターで発掘された
一人だった。悲観的な空気が流れ、少しづつ各人の精神が冒されて行く中、メンバーの一人の
少女が自殺してしまう。そこから、一日ごとに死体が増えて行き――。
これは完全にラストで騙されましたね。特に、アイの正体には唖然。このアンソロジーの中の
ある人の作品と若干ネタが被ってしまった感があるのが残念ではありますけれど。まぁ、切り口が
全然違うから大した問題じゃないのかな。

 

綾辻行人『仮題・ぬえの密室』
トリを飾るのは、やっぱりこの人が相応しいでしょう。新本格を始めた作家さんでもあります
からね(ま、本人が始めた訳じゃないですけどw)。
京大ミステリ研の犯人当て小説に、かつて『ものすごかった』と言われた幻の作品があった。
綾辻、小野(不由美)、法月、我孫子それぞれに、その作品の記憶の断片は残っている。
しかし、どんな作品だったのか、誰も思い出せない。一体誰が書いたどんな作品だったのか。
気になった四人は、その場で各々の過去の記憶から検証を始めるのだったが――。
私小説風ですが、一体どこまでがフィクションなんでしょうか。ほぼすべてが事実だったら
面白いのだけど。特に、『ぬえの密室』をお蔵入りした理由に関しての部分。あれが事実だと
したら、ものすごい縁で結ばれた二人ってことじゃないですか!?この作品が読めたことが、
今回は一番嬉しかったです。『ぬえ~』を書いた人物に関しては、やっぱりなーって感じ
でしたけど(笑)。本当に、『ぬえの密室』は実在したんでしょうか。どんなトリックだったん
だろうなぁ。読んでみたいなぁ。書いてくれないかなぁ、綾辻さんでも、あの方でもいいから。
さらっと、京極さんの『鵺の碑』についても触れてくれたのも嬉しかったなー。これは、
綾辻さんからの暗に早く出せというメッセージじゃないかしらん。講談社さんへのメッセージ
でもあるのかも?(苦笑)


各扉ページの喜国さんのイラストも素敵。表紙もいいんだなー。力入れて描かれたのがよく
わかります。それぞれの作家さんの特徴めっちゃ捉えてますね。さすがー。
新本格好きなら絶対に読んで頂きたい豪華アンソロジーです。是非一読を!



鯨統一郎「タイムスリップ信長 vs 三国志」(講談社ノベルス
奇しくも、講談社ノベルス二連チャンとなりました。いやー、ひっさしぶりのタイムスリップ
シリーズ。大好きなシリーズなんだけど、あんまり図書館入ってくれないから、なんとなく
読み逃して数年経ってました^^;新刊案内で久しぶりにタイトルを見かけたので即予約。
しかし、信長も三国志もあんまり興味ない人間なんで(なんせ、歴史が苦手・・・)、
イマイチ乗り切れなかったなぁ。内容は毎度のことながら、トンデモない。なんせ、
三国志に出て来た呉王(孫権)の代わりをタイムスリップした信長にやらせるっていうんだから、
もう、何が何やら。何でもありすぎだろ^^;
中国名に苦戦して、敵と味方の区別が全くつかないし、頭混乱したまま最後まで
読んでたって感じです。
唯一笑ったのは、頼酢馬香と今備荷かな(さて、どう読むでしょう?w)。この発想は、
いかにも鯨さんらしいですよね(笑)。
呉の地に、安土城をあれだけの期間で建てちゃうってもう、あり得ないと思うんだけどね。
そこツッコんだら、多分このシリーズ成り立たないと思うんで(苦笑)。
しかし、うららの活躍もいまいち少ないし、なんだか読み足りない感じで終わってしまったな。
このシリーズには、もっともっとはじけて欲しいと思うのですけど。モリリンとか、あの
釈迦如来(個人的にシリーズ最高傑作だと思っている)みたいにね。
でも、何だかんだツッコミ入れつつ、読んでしまうのがこのシリーズでもあり。
今度はもうちょっとわかりやすいネタでお願いします(苦笑)。