ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小路幸也/「HEARTBEAT」/東京創元社刊

メフィスト賞受賞でデビューした期待の新人小路幸也さんの「HEARTBEAT」。

高校時代優等生だった原之井は、あるきっかけで不良少女のヤオと仲良くなる。お互いに心を
許した二人だったが、やがて別れがやってくる。別れの時、原之井は10年後にヤオにあるもの
を渡す約束をする。そして10年後、米国にいた原之井は約束を果たす為帰国し、約束の場所へ。
しかし、そこにいたのはヤオの夫と名乗る男で、ヤオは3年前に失踪したと告げられる。ヤオを
捜す決意をした原之井は、当時の同級生巡矢を訪ねることにする。一方、大財閥の子息ユーリは
屋敷に出る幽霊に怯えていた。幽霊の正体とは・・・!?

一見全く関係なさそうな二つの事件がそれぞれに語られて物語は進んで行きます。非常に構成が
上手いです。そして、爽やかでいて、とても切ない話です。最後の最後でのどんでん返し、
「ああ、やられた」感が、これぞミステリの真髄という感じ。原之井が「人の心音を聴くことが
出来る能力を持っている」ことが、この作品の最大のキーポイントです。
個人的には巡矢のキャラクターがとても好き。彼と原之井の関係がすごくいい。シリーズ化して
欲しい位ですが、この作品はこれだけで完結しているので、今後登場することはないでしょうねー。
巡矢だけでも出して欲しいなぁ。