金融業界ミステリの名手、池井戸潤さんの「金融探偵」。
リストラされた元銀行員・大原次郎は、次の就職先を見つけようと職探しの真っ最中。しかしなかなか上手くいかない。困った次郎は、食いつなぐ為になりゆきでお金のトラブルを抱える人を相手に‘金融探偵’を始めることになるが・・・。
タイトルからしてちょっとお堅い内容かなと思ったのですが、難解な金融の話が出てくる訳ではないので、知識がなくてもすんなり読み進められました。
主人公・次郎の飄々としたような、とぼけた感じのキャラが結構好き。普通金融探偵でお金がもらえるとわかったらそっちの仕事一本でやっていこうとしそうなものですが、今の厳しい世の中、敢えて本職は別とばかりに、懲りずに就職活動に勤しむ姿勢がいい。次郎は仕事は出来そうなので、元いた銀行でも結構やり手だっただろうに、時代のあおりなんですかねぇ。今時珍しくはないでしょうけど。
‘探偵’と掲げる程難しい事件が起きる訳ではなく、どちらかというと巻き込まれ型の次郎が、銀行員だった頃の知識を生かしてなんとなく事件を解決しちゃうというような、ちょっとコミカルな作品。
池井戸さんの小説はほとんど（全部かな？）が金融関係の作品ですが、私はまだ本書しか読んだことがないので、他がどんな感じなのかはわかりません。話題になった作品も結構あるので、他にもチャレンジしてみたい作家さんではありますね。ただ、金融業界っていうとちょっと敬遠したくなっちゃうのですよね。この作品みたいに読みやすかったらいいのですが。
次郎が今後就職できるのか、金融探偵として一人立ちして行くのか、是非続編を書いて欲しいものです。
連作短編形式なので、どっかで連載しないかなぁ。
