ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

村山早紀「星をつなぐ手ー桜風堂ものがたりー」/ほしおさなえ「菓子屋横丁月光荘 歌う家」

どうもこんばんは。秋ですねー。ついついスーパーで栗イモ系の新作おかしを手に取って
しまう。特にチョコ系。あと、最近ではハロウィンバージョンのパッケージも多いから、
可愛らしくて買ってしまう。結果、我が家には新作おかしが山のように・・・。
月末のハロウィンの時は、今年もお隣の子供たちが仮装して襲撃(笑)してくるそうなので
(来てもいいか聞かれたw)、お菓子を用意して待っていなくては。子供たちの仮装は
可愛らしくて、見てるだけで癒やされるので、楽しみなのです。今年はクッキーでも焼こうかなーと
100均でかぼちゃやらおばけやらのクッキー型も入手。当然、失敗した時の為に市販の
お菓子も買っておくけど!準備は万端なのである(笑)。


今回も二冊です。


村山早紀「星をつなぐ手―桜風堂ものがたり―」(PHP研究所
本屋大賞候補にもなった『桜風堂ものがたり』の続編です。巷の大絶賛に乗っかる程
のめり込めた訳ではなかったのですが、設定や世界観は好きだったので続編も手に
取ってみました。
相変わらず、徹底して『いい人』しか出て来ないし、優しくて温かい奇跡が
たくさん起きるお話でした。
・・・うん、すっごく、『いい話』なのは間違いないと思う。本を好きな人なら誰でも、
消えそうな書店にこういう奇跡が起きることをいつでも願っていると思うし。私だって
そうです。書店が舞台の物語は大好きだし。潰れかけた書店を立て直すお話だって
大好きだ。
・・・けど。なんか、前回と感想が全く同じなんだよね。いくら何でも、こんなに
偶然重なる訳ないだろー!ってツッコミたくなるっていうか。主人公が
幸せになるように、すべての偶然が積み重なっていい方向に進んで行く。
いい人が出て来る話は好きだし、人間性善説を否定する訳でもないのだけど、
どうにもこの作者のお話作りには反発心が芽生えてしまうのだなぁ。
なんでだろ。例えば、小路幸也さんのバンドワゴンシリーズとかは、
ご都合主義でも受け入れられるのに。
私が気に入らないのは、多分、主人公が特に何もしていないのに、いつも
困っていると向こうから幸せな偶然がすべり込んで来るからだと思う。
これが、主人公がもがいてもがいて、必死で頑張った末に転がり込んで来た
偶然や奇跡ならば、もっと心から、良かったね、と思えるのだと思うのです。
本人がしているのは、ただ書店の未来を憂いて、自分の桜風堂をこれから
どうしたらいいのか思い悩むだけ。困って悩んでいたら、周りの人々の方から
桜風堂に救いの手を差し伸べてくれる。もちろん、周りの人々が主人公の一整
を好きだからこそだし、彼がどれだけ優れた書店員かを知っているから
なんとかしてあげたいと思わせるのだし、それはそれで彼の功績なのも
間違いはないと思うのだけれど。それでも、そういう彼だからこそ、
自分自身の力で桜風堂を立て直す力があると思うし、そういう物語が
読みたかった。本人ががむしゃらに頑張った上ならば、もっと周りの善意が
すんなり受け入れられると思うんだけど・・・。なんか、棚からぼたもちで、
全部が上手く行ってしまうってのがね。良かったね、人徳だね、みたいなね。
人文の棚を充実させたいと思っていたら、人文に詳しいコーヒー屋の店長が
手伝わせてくれと言ってくるし、二階に漫画やラノベの棚を設置しようと
思ったら、そっち方面に詳しい女の子が名乗り出てくれるとか。せめて、募集
かけるくらいはして欲しいです。何もせずに奇跡が転がり込んで来るって。
世の中に、そんなに偶然溢れてないよ。
それに、それじゃ全然、感動がないんだよね。ふうん、って、最後は冷めた
感情で読み終えてしまった。せっかく、とてもいいお話なのに。一整のキャラは
好きだし、彼が幸せになるのは嬉しい筈なのに。クライマックスの星祭りの情景も
美しくてきれいだったし。世界観はとても好きなのに。
なぜか、いまいち好きになれないんだよね、この作者の物語自体が。あまりにも、
ご都合主義的過ぎて。きれいな物語を作りたいが為の物語としか思えなくって。
一整の恋愛相手が苑絵ってところも気に入らない要素かも。今回も、一整が
銀河堂に来ただけで泣くって。え、なんでそこで泣くの?ってもう、理解不能
情緒不安定もいいところだ。私が一番苦手なタイプなんだよねぇ。
まだ、渚砂の方が良かったのに。ま、渚砂も好きなキャラまではいかないのだけど。
ただ、渚砂がなぜあんなに苑絵を守りたいと思っていたのか、そこが前作では
いまいち理解出来なかったのだけど、その理由が今回明かされて、なるほど、
そういうことだったのかと腑に落ちました。過去の行動の贖罪の気持ちもあったの
ですね。もちろん、苑絵の存在に渚砂自身が救われているからっていうのが大きい
のでしょうけども。
終盤の、サイン会のくだりも、やりすぎなくらいに良い偶然が重なっていて、
さすがにちょっと引いてしまった。無名な地方で、有名作家三人の合同サイン会
なんて、ちょっと現実的にありえないと思うけど・・・。せめて一人にしておけば
良かったのに。
うーん。確かにいいお話なのは間違いないのだけど、何かきれいすぎて
しらけてしまうって感じかなぁ。何事も、やりすぎはよくないってことですか?
っていうか、単に私がひねくれているだけなんでしょうね・・・。
多分、読んだほとんどの人は、温かいお話だった、素敵な物語で感動したって
感想だと思います。またしても黒べるこが出て来てしまった。
こういう物語を素直に良いと思えない私の感性がおかしいのかな。すみません・・・(涙)。
桜風堂の大事な仲間であるオウムと猫の出番が少なかったもの残念だった。
一応二作で完結なんだそう。もっと続けようと思えば続けられそうではありますが。
桜風堂の今後が気になるところではあるけれど、きっと周りの助けを借りて、少しづつ
売上を伸ばして行って、生き残って行くんだろうな。銀河堂の後ろ盾もありますしね。



ほしおさなえ「菓子屋横丁月光荘 歌う家」(角川春樹事務所)
活版印刷日月堂シリーズが終わってしまって寂しい思いをしていたので、新しい
シリーズが始まって嬉しい。こちらも同じ川越が舞台で、『三日月堂』の世界とも
リンクがあるようです。三日月堂は今回は出て来なかったけれど、今後出て来る可能性も
ありそうです。
こちらは、家の声を聞くことが出来る特殊な能力を持つ大学院生の遠野守人が主人公。
理由あって川越の古民家で建物の管理人として住み込むことになった守人。紹介された
建物に入った瞬間、家が歌っているのが聴こえて来た。一体何の歌なのか。
家が発する声を聞くことが出来るという、ちょっとファンタジックな設定。
この家が、菓子屋横丁という、昔お菓子の製造卸しのお店が並んでいた路地の
一角にあるというのも面白い。名前聞いてるだけで、甘い匂いが漂って来そう。
川越の歴史ある街の雰囲気がとてもいいですね。三日月堂の時も思ったけれど、
古き良き時代の雰囲気を残した独特の空気感が素敵です。出て来る人々も素敵な
人ばかりだし。両親を早くに亡くして、孤独に慣れて来た守人にとっては、川越に
引っ越して来たことはとても良かったのではないかな。他人と一線を引いて生きて
来た彼が、川越の月光荘に住み始めていろんな街の人々と触れ合うことで、少し
づつ心がほぐされて行くところが良かったです。同じ大学のべんてんちゃんの
キャラもいいですね。彼女がなぜ守人にあんなにおせっかいを焼くのか、その辺り
の理由も今後明かされて行くのかなぁ。単にそういう性格ってだけだったり?
守人の大学の指導教授の木谷先生も、いい先生だし。古地図の博物館ってのも
ちょっと興味あるな。自分が住んでいる街が昔どんな所だったのか、地図上で
見たらいろんな発見がありそう。でも、民家の一角だったら入る勇気が出るか
自信ないけど・・・^^;
二話目で出てきた旭屋文庫の建物も素敵そうでしたね。写真館を改装した
安藤さんの喫茶店羅針盤』とかも。川越は古くて歴史ある建物が多いのかな。
ほしおさんの作品を読むと、川越の町並みを歩いてみたくなります。
ほしおさんは、伝統あるものを残して大事に伝えて行きたいという意識が強い方
なのかもしれないなぁ。活版印刷もその最たるものですものね。
また素敵なシリーズが始まって、続きを読むのが楽しみです。