ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

標野凪「本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます」(ポプラ文庫)

少し前にこの作者の、喫茶ドードーシリーズの二作目を読んだのですが、同じ時期

に予約してあった作品。なんとなくほのぼのして面白そうなタイトルだったので

予約してありました。

札幌にある『本のない絵本屋、クッタラ』は、文字通り本を置いてない絵本屋。

顧客の話を聞いて、それにぴたりと合う本を、店主の奏と二階にいる相棒の八木が

見繕って発注し、取り寄せてから手渡す、オーダーメイドの絵本屋だ。クッタラには、

本を置いてない代わりに、店主が作る美味しいスープが飲める。いわば、本屋兼

カフェなのだ。今日もクッタラには、悩める客がやってくる――。

悩みや憂いを抱えた客に、店主がそっと差し出す絵本とスープは、温かく心を

癒やしてくれる。心温まる一冊・・・というコンセプトなのだけれど。うーむ。

いろいろ、ツッコミところはありましたねぇ。こんな形で商売になるか!とも

思うし、取り扱いが絵本だけってところも引っかかるし。客の要望に合わせて

本を選んでくれるのはありがたいけど、絵本見ただけで憂いが晴れるってのは

ちょっと説得力に欠けるような気がして。もちろん、その絵本を選んだ理由を

聞いて、ある程度は納得出来るんですけど。そもそも二階にいる相棒の存在がね。

うん、可愛いんだけどさ。いるかな、この設定・・・??この相棒の存在が

さほど物語に機能してない感じもするんだよね。もう少し、生かして書いても

良かったんじゃないのかなぁ。

まぁ、全体的にはほのぼのしてて可愛らしい作品ではあると思うのだけど。

なんとなく、全体的に腑に落ちないというか、食い足りなさみたいなものは

感じました。

5話目の『誰かのためのスープ』に出て来たイラストレーターの女のキャラは

ひどかった。彼女のしたことには嫌悪しかなかったです。奏は、あの場で

ちゃんと注意すべきだと思うんですが。窃盗ですよね・・・。注意しなかった

理由は後で相棒に明かしてましたけど。でも、見るだけじゃなくて、中身の写真

撮り始めた時点でストップかけるべきでした。売り物じゃなければまだしも、

ちゃんと売り物なのに。しかも本人、まったく悪びれてないし。最悪!って思い

ました。忙しいからって、こんな適当な仕事してたら、いつまで経っても本来やりたい

仕事はやれないでしょうね。奏の差し出した絵本でこういう人間が改心してくれる

とは思えないんだけどなぁ。

奏が作るスープは美味しそうでしたけど、同じスープが出て来る作品なら、スープ屋

しずくシリーズの方が好きかな。

クッタラの意味は、最後にわかります。アイヌ語かぁ。『食ったら』かと思って

た(笑)。私は食べたことないかも。前に有川さんの『植物図鑑』に出て来た

食材(?)だなぁと思い出しました。

ちょっと感想がひねくれててすみません。あれ、記事にしてみたら、思った以上に

黒べるよりだった・・・?(しーん)。