ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

標野凪「こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。」(双葉文庫)

ちょいちょい、新聞広告で見かけて気になっていた作品。タイトルを漠然としか

覚えていなかった為、図書館の新着図書でタイトルを見かけて予約してみたの

だけれど、読み始めてこれが二作目だと気づきました。またやってしまった・・・。

薄いし、一話目まで読んじゃったから、もういいや、とそのまま読んでしまったけど。

まぁ、一話完結の作品集なので、多分そんなに問題はないのではないかと。ただ、

喫茶ドードーの常連さんの睦子さんに関しては、一作目を読んでおいた方が良かった

のかもしれないです。ちょっと理由ありな女性っぽいので。まぁ、仕方ない。

おひとりさま専用カフェ『喫茶ドードー』には、憂いや悩みを抱えた曰くのある

お客さんがやって来る。そんなお客たちは、店主のそろりの美味しい料理で癒され、

心をほぐしていく――。ハートウォーミングな連作集。

おひとりさま専用カフェなので、一人でふらっと訪れる人ばかり。二人以上で

連れだって来た場合って、お断りされてしまうのかな??それとも、別々に座れば

大丈夫なのだろうか。そのあたりはよくわからなかったな。作中はちょうどコロナ

真っ只中の時期なので、その時期だったらこういうお店は重宝されたでしょうね。

店主のそろりさんに関しては、結局よくわからない謎の人って印象。ただ、

だからといって冷たい印象はなく、心優しき青年って感じ。ちょっと抜けている

ところもあるし。料理に関しては必至に味を追求していて真面目って感じだし。

ただ、なぜ『そろり』なんて名乗っているのかはわからないし(本名ではない

模様)、なぜ『おひとりさま専用カフェ』なのかもよくわからない。これは、

1巻読んでないからなのかな??

やって来る客は、ちょっとした言葉で誰かに傷つけられたり、誰かを傷つけて

しまったりして、後悔を抱えている人ばかり。そうした後悔を、そろりさんや

そろりさんの料理で癒していく・・・って内容なのだけど。最終的には主人公が

そろりさんの言葉から気づきを得て、自分を顧みて反省するって感じ。そこが

個人的には、結構もやっとすることが多かった。相手からも傷つけられているのに、

結局そこは許して、最終的には自分が悪かったと反省して、自分の方が折れる形の

解決が多かったから。いくら相手が自分を気遣ってかけてくれた言葉だとしても、

デリカシーのない言い方してたりして、傷ついた自分がいる訳で。それを悪い方に

受け取る自分がよくなかった、みたいなもって行き方には納得がいかなかったです。

まぁ、その言葉をわざわざそういう風に受け取るの!?っていう、ちょっと面倒

なタイプの人もいましたけどね。そろりさんや常連の睦子さんのキャラは良かった

ですけどね。

なんとなく、思っていたのとは違った読み心地だったな。一般的には、ハート

ウォーミングで心癒される作品って感想なんだろうけども。私がひねくれている

せいだろうな・・・。一作目を読むか悩むところです。

あと、そろりさんがあげようと差し出す、謎のグッズを誰も受け取らないのが

ちょっと可哀想でしたね。確かに、なんでそんなものあげようとするんだ!?って

ものばかりだったけど。洗濯のりとかハンガーとかガーゼとかアルミのタライとか。

ただ、ラスト、今までの作品に出て来たそれぞれの主人公の鬱屈を、そろりさんの

ある行動で一気に昇華させたシーンは、なかなかよく考えてあるなぁと感心。

しかも、それまで出て来た謎グッズの伏線がここで生きるとは。

ファンタジックな要素が入って、いきなり現実から引き離された感はあったけど、

終わり方としてはすっきりして、美しいと思いましたね。こんな風に、嫌な思いとか

鬱屈が消えてなくなれば、世の中平和だろうなぁ。戦争をしている国にも、この

そろりさんの力が有効ならいいのにね。