ミステリ読書録

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浦賀和宏/「萩原重化学工業連続殺人事件」/講談社ノベルス刊

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浦賀和宏さんの「萩原重化学工業連続殺人事件」。

プレイボーイの零は、ファーストフード展で出会った少女・祥子の不思議な魅力に取りつかれる。
彼女は、自らのことを「不死身」だという。二人はその日のうちに一線を越えるが、その最中、
零は祥子の首を絞めて殺してしまう。しかし、警察が来た時、祥子の死体は忽然と消えていた。
祥子は本当に不死身なのか!?――一方、森の中の一軒家で一人の少女の死体が発見された。
死体の頭部は鋸のようなもので脳の部分だけ切断され、持ち去られていた。そして、同じ手口で
第二第三の殺人事件が――事件の背後に見え隠れする萩原重化学工業の正体とは――!?
『僕はこの小説を書くために生まれてきました』著者渾身の長編ミステリー。


こんなに早く読むつもりはなかったのだけど、隣町の図書館の『本日返却棚』に置いてあって、
見た瞬間手に取っている自分がいました・・・。予約してる人もいなかったんだね・・・新刊
なのに^^;八木シリーズ途中なのに、新シリーズに手を出しちゃったよ。あーあ。
で、読み終わって今更確認なんですけど、これって『安藤シリーズ』だったんですか!?
読了して恒例の書評巡りをして、そのことに言及している記事を読んで初めて気付いたという・・・
ってか、読了した今も一体どこが安藤シリーズと重複しているのかさっぱりわからないのですが、
他の方の記事によると『萩原』社長らしいですが・・・あ、あのー、あのー、萩原社長って誰
でしたっけ・・・あーあー、すみません、すみません。私は安藤シリーズのファン失格です。
だって、内容さっぱりおぼえてないんだもの・・・でも、今更再読すんのもなぁ・・・。
でも、本書の内容的には、安藤シリーズの内容覚えてなくても(読んでなくても)、全然問題なかった
です。安藤シリーズを知らない方でも大丈夫です!(お前が言うなーーー^^;)
ってか、安藤シリーズなのに、なんで安藤君が出て来ないのよ。せめて名前くらい出せよ・・・。
これから出てくるんですよね。やっと会えるんですね。安藤君に・・・(ほんとに?)。

って、前置きなげーよ。っていうツッコミが聞こえたような気がしますが、気にせず行きます。
んで、本書ですよ。いやーー、長かった。読みやすいからページは結構さくさく進むのですが、
いろんな寄り道が多すぎて、ストーリーがなかなか進まないから途中結構イライラしました。
作者が書きたいことがたくさんありすぎて、ちょっと散漫になっちゃったかなぁという感じが
なきにしもあらず。でも、面白かった。要素要素は八木シリーズとかなり重複していて(死なない
人間とか、ひきこもり人間とか、醜い顔とか、『組織』とか・・・)、またあれの二番煎じなのか
なぁなんて思いながら読んでいたのだけど、終盤の謎解きではそれらの要素がきちんとミステリ
として効いていて、「おおーー!」とちょっと興奮しちゃいました。天国の門の真相には口
あんぐりって感じでしたが・・・^^;脳が切り取られているという浦賀さんらしい猟奇殺人の
真相もらしいというか、なんというか・・・まぁ、荒唐無稽っちゃ荒唐無稽なんだけど、安藤
シリーズの世界観ならアリなのかなぁと思いました。零と一の関係は割と早い段階で見当がついて
しまいましたが。一と綾佳の関係を読んで、浦賀さんって綺麗な女の子が醜い男を好きになる
ってシチュエーションが好きなのかなぁ、と思ってしまった。この間『世界でいちばん醜い子供』
を読んだばかりだから余計そう思ったのかもしれないですけど。綾佳の思考回路と純菜の思考回路
がなんとなく重なる部分があるんだもん^^;

祥子が『不死身』という設定の筈なのに、あっさり『死体』になっちゃうからずっと腑に落ちない
まま読んでいたのだけど、それもラストできちんと説明がつけられているのですっきりしました。
まぁ、完全にSFの世界ですけど・・・。小説だと割り切って読むべき作品でしょうね、これは。

面白かったけど、やっぱり全体的に冗長な印象はぬぐえない。視点がころころと変わるので、
読んでいて「今って誰視点だったっけ?」とわからなくなることもしばしば(バカ)。登場人物の
うざい内面描写なんかはもっと端折って欲しかった。それは八木シリーズで充分書いたでしょ・・・。
まぁ、浦賀作品一重厚なミステリになってることは間違いないのでは。

それにしても、カバー折り返しの『僕はこの小説を書くために生まれて来ました。あなたも
きっと、この小説を読むために生まれてきたのです。』とは、随分大風呂敷を広げましたよねぇ。
それだけ、自信作ってことなんでしょうね。

とにかく、次回作では是非とも安藤君を出して欲しいです。それしかもう、望みません、わたし。
というか、それさえあれば、何でも許せます。はい。