ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

乾ルカ「ミツハの一族」/鳥飼否宇「憑き物」

どうもこんばんは。
もう6月ですねぇ。上半期もあとわずかですか。早っ^^;
このままいくと、あっという間に年末になっちゃいそうだ・・・。
そうそう、余談ですが、この間テレビで見てずっと欲しかったミルフィーユ包丁なる
包丁をネットで購入しまして。これがまぁ、よく切れること切れること。
見た目もカッコイイので、使うのが非情に楽しい。いい道具を使うと、
お料理するのも楽しくなるものなんですねー。お料理好きの父の為に、
父の日用にもう一本買ったので、渡すのが楽しみです。



今回の読了本は二冊です。

ではでは、一冊づつご紹介。


乾ルカ「ミツハの一族」(東京創元社
久しぶりの乾さん。多分4、5冊は読み逃しちゃってると思うんですが^^;
何せ刊行ペースが早いもので、ついて行くのが大変^^;
でも、本書は久しぶりに食指が動く内容っぽかったので借りてみました。
東京創元社からの刊行っていうのも大きいけれどね。
で、結果は、ドンピシャ!これはとっても私好みの内容でした。
なんとも耽美な世界観に、読んでてうっとりしちゃいました。
ファンタジー混じりの大正ロマン風ミステリとでも申しましょうか。
舞台は、乾作品お馴染みの北海道。
主人公八尾清次郎は、信州より北海道に移住し開拓した白石村小安辺の集落で
最も権力を持つ社宮司・八尾家の出身。この集落では、八尾家のことを
特別に『ミツハの一族』と呼んでいた。この辺りでは、死者が未練を残して
死ぬと鬼となり、井戸の水を濁らせ、枯らしてしまう。それを阻止する為には、
鬼となった人物の未練を断ち切り、常世に送らねばならない。その役目を代々
担って来たのが、八尾家の血筋に生まれて来る、特別な目を持った『烏目』である。
また、八尾家にはむくろ目と呼ばれる目を持って生まれた女が、村の水源である
安辺池を守る『水守』となる。池に留まる鬼の姿を見られるのは、水守だけ――。
烏目を持った男とむくろ目を持った女。鬼が出た時は、この二人が協力して
死者の魂をあの世へと送るのだ。
ある日北海道大学で医学を学ぶ清次郎の元に、故郷で烏目の役目を担っていた
従兄の庄一が突如死去した旨の電報が届く。急ぎ故郷に駆けつけると、
次の烏目は清次郎だと告げられる。そして、亡くなった庄一がこの世に
未練を残し鬼となった為、烏目として庄一をあの世に送って欲しいと
頼まれる。清次郎はしぶしぶ承知し、今の水守の元へ協力を仰ぎに
赴く。水守は代々醜女と言われているが、清次郎が目にした彼女は、
この世のものとも思えない程の美しい容姿をしていた――。

薄暗くなると物が見えにくくなる烏目の清次郎と、薄暗くなければ物が
見えにくくなるむくろ目の水守。対照的な二人が織りなす儚くも美しい
物語世界にどっぷりはまってしまいました。いやー、良かったです。
不思議な設定が北海道の大地にぴたりとハマっている感じ。
清次郎から小学校の教科書をもらって水を得た魚のように生き生きと
学問を吸収していく水守が可愛らしかったです。
二人の関係がすごく微笑ましいなーと思っていただけに、ラスト一章には
ガツンとやられてしまいました・・・。もしかして、最後の鬼となるのは彼
じゃないかな、という想像は途中で過ったりもしていたのだけれど・・・。
富雄が水守にした仕打ちがあまりにもショッキングで。そのシーンには
息を飲んでしまいました。仕方がないことと割り切ることは出来なかったなぁ。
水守の清次郎への想いが切なかったです。
もっと二人の物語を読んでいたかったです。水守が今後どうやって生きて行く
のか気になりますね。
世界観は『蜜姫村』に近いかな。とっても良かったです。
読み逃しの乾作品もぼちぼち読んでいかなきゃなぁ。


鳥飼否宇「憑き物」(講談社ノベルス
<観察者>鳶山シリーズ、読み逃していた作品。たまたま行った地域図書館で
見つけて、予約本が落ち着いていた時期だったので借りてみました。
中編三作+書きおろしの短編が一作入ってます。
人間よりも虫や動物に興味がある変人・鳶山の奇行は相変わらず。
一作目で出て来た生き物に噛まれた時に、鳶さん大丈夫かな?とちょっと
心配したのだけど、その伏線がラスト一篇に繋がっていたとは。鳶さんみたいな
職業(?)に就いてる人は、常にこういう危険と隣合わせなんだろうな、と
思い知らされ、ぞっとしました。奇心が強いのもほどほどにしないと・・・。
今回出て来た生き物は、正直あんまり見ていて気持ちいいものではないもの
ばかりでした。三作目の『冥き森』の冒頭で出て来たアレの大群なんて、
想像しただけでぞぞーーーー(><)。虫キライなんだよぉ(涙)。
これに出て来たユタの祈祷の怪異現象の真相は、道尾(秀介)さんの
真備シリーズを彷彿とさせました。こんなに上手く行くものなの?という
疑問はありましたが、なかなか面白いトリックだなーと思いました。
このシリーズらしい生き物トリックというか(笑)。虫キライとしては
ちと読むのがキツイところもありましたが^^;しかし、よくもまぁ、
こんなことが思いつくものだ(呆)。
二作目『呻き淵』のアレが、遠目から見ると人間の赤ちゃんに見えるっていうのは、
ちょっと無理があるような・・・と思ったのですが。暗いところなら見間違える
こともあるのかなぁ。色とかビジュアルとか違い過ぎる気がするんだけど^^;
ラストでそいつが迫って来るところは完全にホラー。怖かった(><)。
一作目の『幽き声』は、ちょっとラストが有耶無耶な感じでモヤっとしたの
ですが、それがラスト一篇の伏線になっていたとは驚かされました。
沙姫の人物像を含め、ラストの反転はお見事ですね。三作目のラストを
受けてラストの『憑き物』に繋がる流れも含め、非情に巧い構成だと
思いました。
自然と生き物を上手くミステリに絡めたこのシリーズ、やっぱり面白いです。
しっかり本格を意識してるところも好み。これが刊行されたのが二年前だから、
そろそろ新刊出ないかなぁ。今度は長編が読みたいな。