ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

乾くるみ「物件探偵」/綾辻行人「人間じゃない 綾辻行人未収録作品集」

こんにちは。桜開花が宣言されましたが、連日の寒さで満開まではまだ遠そうですね。
まぁ、ゆっくり咲いてくれた方が、観る方は楽しめて良いですけれど。
週末はまた雨が降って気温が下がるとか。お花見予定の方にはお気の毒ですね。
見頃は4月に入ってからになりそうですね。花冷えでお風邪など召されませぬように。


読了本はまた二冊です。今日読み終えた1冊はまた次回。予約本ラッシュ中なので、
がんがん読むつもりではいるのですが・・・追いつかない^^;でも幸いなことに、
今回回って来てる本、文庫で読みやすいのが多いんです。まだ取りに行ってないけど、
ビブリアの最終巻も回って来ましたし。なんとか全部読み切れるかなぁ。


乾くるみ「物件探偵」(新潮社)
久々乾さんの新刊。タイトル通り、不動産に纏わる謎を解き明かす『物件探偵』を主人公に
した連作短編集。
読書メーターの感想だと割合辛口評価の方も多かったのですが、不動産物件(チラシ
含め)を見るのが大好きな私としては、かなり楽しく読めました。ちょっと前に
北川景子さん主演でやっていたドラマ『家売るオンナ』も興味津々で観てましたしねー。
まぁ、確かにミステリとしては少々食い足りなさはありましたけれども。あと、
作中に出て来る物件の多くが、1Kの分譲中古マンションっていうのも、ちょっと偏り過ぎかな、
とも思いましたし。一棟建てアパートと賃貸アパートが一作づつ入ってはいるけど。
できれば、普通の賃貸マンションやら建売分譲やら、新築マンションやらデザイナーズ物件やら、
物件のバラエティはもうちょっとあっても良かったと思うな。あと、気になったのが、
購入する人がほとんどローンなしの現金一括払いって点。こういう大きな物件購入を考える人で、
ローン組まずに買う人ってそうそういないと思うんだけどなぁ。そこはちょっと、首を傾げてしまった。
それとも、中古で1Kだからこそ、一括で買っちゃう人が多いってことなのかな。
まぁ、ツッコミ所はそんな感じでいくつもあるのだけど、それぞれの物件に纏わる悲喜こもごもの
部分は面白かったので、まぁいいかな、と。オチも、全部が黒い訳じゃなく、ほっこりするものも
あってそこはバラエティに富んでいましたしね。
不動産薀蓄もいろいろ勉強になりました。一棟建てアパートの話は、個人的理由で
一番興味がありました。って、別に私が一棟建てアパート買おうと思ってるとかじゃ
ないですよ!(当たり前か)ちょっと、知り合いにアパート経営している人が
いるのでね。いろいろ困ったりもしてるみたいなんで。これ読んで、やっぱり
経営者っていろいろ大変そうだなーと思いました。年取って働けなくなった時に
不労所得があるっていいなーと漠然と思っていたけど、やっぱり楽して金は稼げない
ってやつよね・・・。
マンションで階下の足音が気になって・・・ってやつは、やっぱり集合住宅だったら
必ず出て来る問題なんでしょうね。騒音のレベルにもよるだろうけど、毎日眠れない
程の足音が聴こえて来るって、地獄だなー^^;私も一人暮らしでアパートに住んでた時、
上の階の生活音がうるさくて大変だった経験はありますけどね。上の階の人、
ものすごい早朝とか深夜とかに洗濯とかするんだもの^^;マンションならそれほど
響かないのかと思いきや、やっぱりよっぽど防音がしっかりしている所でもない限り、
そういう問題はついてまわるんだなー。
探偵役の不動尊子(ふどうたかこ←すごい名前)さんは、最後まで掴みどころのないキャラ
でしたねぇ。
物件の気持ちがわかる、というのは面白かったけど。物件に共感して、涙を流すところは
人情味も感じられたのだけど、基本的に淡々としていてちょっと無機質な印象を受けました。
15歳で宅建取得って、天才か!と思いました^^;宅建って、そんな年齢から受け
られるんですねぇ。知らなかったー。
不動産売買って、ほんときちんと物件と不動産屋を見極める目がないと、エライ目に
遭いそうですね。買い物の額が大きいだけに。手に入れた物件と自分の相性が良ければ、
この上もなく幸せになれるものでもあると思いますけどね。もちろん、賃貸でも部屋との
相性は大事だと思いますけどね。
幸いなことに、今自分が住んでるところはすごく気に入っているので、今後も大事に
住んであげたいな、と思います。
不動産業界に興味のある方は楽しく読めるのじゃないかな。私はシリーズ化希望。
今度は戸建て編もお願いしたいです。


綾辻行人「人間じゃない 綾辻行人未収録作品集」(講談社
こちらもタイトル通り、デビューから30年を経た著者の、未収録短編を集めた
作品集。ミステリよりは、ホラーというか、幻想怪奇的な作品が多かったかな。
初期の頃の作品って、何作か未読があるんですよね、実は。『眼球奇譚』
未だに読めてなかったりするし。なんか、当時気持ち悪そうだなぁと思って
敬遠しちゃってそのままなんですよね。その割に、『殺人鬼』は読んでるという
(でも多分『Ⅱ』は読んでない)。綾辻作品に度々登場する『由伊』が出て来る
んですよね。なんで綾辻さんの作品のヒロインは『咲谷由伊』が多いんでしょうか。
気に入った名前なんですかねぇ。深泥ヶ丘のアノ人も同じ名前でしたもんねー。
綾辻さんの各作品って、パラレルワールドっぽい位置づけなのかな。謎。

 

とりあえず、各作品の感想を。

 

『赤いマント』
『赤いマント』という都市伝説をテーマにした作品。トイレに閉じ込められ、
赤い血のようなものを浴びた少女に何が起きていたのか?
なんとなく想像していた真相とは若干ズレていたのだけど、考え方としては
悪くなかった。犯人自体は合っていたし(って、他に考えようがないと思うけど^^;)。
でも、血を浴びせた理由が○○の方だとは思わなかった。もうちょとエグい真相かと
思っていたのだけどね。本人解説の通り、綾辻さんにしては『普通の』ミステリ
短編でしたね。

 

『崩壊の前日』
先述した『眼球奇譚』の姉妹編だそうな。ということで、当然『由伊』がヒロイン。
少しづつ狂って行く会話にぞくりとさせられる。ラストシーンはやっぱりエグい。ひぃ。

 

『洗礼』
『どんどん橋落ちた』に収録しきれなかったシリーズ作品だそう。U山さん
ご逝去は、やっぱり綾辻さんにとっても本当に大きな出来事だったのですね。
作中作(中作?)の犯人当て小説『YZの悲劇』、私は全く当てられなかったんですがー・・・
その場にいた全員が正解って^^;ま、確かにちょっと考えれば想像出来なくは
ない真相なのかもしれませんけど。音楽知識ないからわかんなかったもん。ぷん
(開き直った!)。
U山さんの死の状況が現実と同じなのだとしたら・・・奥さんはさぞかし悔しかった
でしょうね・・・。せめてその場にいてあげたかっただろうな、と。

 

『蒼白い女』
『深泥丘奇談』番外編。喫茶店にいる女の顔が蒼白い理由には拍子抜けしたけれど、
最後のオチにはぞぞぞ。携帯(スマホ)が普及した今だからこその作品。その場に
いた客たちがみんな同時に受け取れるメッセージですもんね。こわこわ。

 

『人間じゃない―B〇四号室の患者―』
『フリークス』の番外編。こちらも『咲谷由伊』がヒロイン。由伊が亡くなった
状況(密室)から、ミステリ的な真相が隠されているのかな、と思ったんですが、
完全にホラーな真相でしたね。どちらかというとパラサイト・イヴみたいな感じ?
(原作読んでないし、映画も観てないけど^^)
殺された現場はかなりの地獄絵図。こんなの見ちゃったら、トラウマになってその後の
人生めちゃくちゃになりそうです・・・。まぁ、綾辻さんらしい作品と云えるでしょうね。


装丁がめっちゃかっこいいです。綾辻さんの作品って、ほんと装丁が凝ってますよね。
作品の雰囲気とぴったりだと思いました。