ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

瀬尾まいこ「君が夏を走らせる」/ニャンニャンにゃんそろじー

こんばんはー。残暑が厳しいですね。雨続きの毎日が終わったかと思いきや、
今度は猛暑再来。一体、今年の夏は何なんだー^^;
一言メッセージでも書いたのですが、来月6日に京極さん、綾辻さん、辻村さんの
トークショーに行って来ます!大好きな作家三人揃い踏みで、これに行かずして何に行く!
って感じで、情報ゲットして即チケットを入手しました。この手のイベントに行くのは
久しぶり。何年か前に京極さんのイベントに行って以来かしら?ぐふふ。楽しみ過ぎる。
サイン本等の販売もあるらしい。買いたいなー。


読了本は今回も二冊~。


瀬尾まいこ「君が夏を走らせる」(新潮社)
久しぶりに瀬尾さんの新刊が読めて嬉しい。しかも、この作品、読み初めてから気づいた
のだけど、中学生駅伝を題材にした『あと少し、もう少し』の続編でした。あの作品
大好きだったのでとても嬉しかったです。あの作品で金髪不良中学生だった大田君が、
高校生になって再登場。あの駅伝を走ったことで、いろいろなことを学んだ大田君、
真面目に受験勉強をするも、敢え無く第一志望失敗。結局、底辺に近い高校に進む
しかなく、走ることもやめてしまって、だらだらと日々を過ごしていた。そんな大田君が
ひと月の間、三歳年上の中武先輩の子供の面倒を見るバイトをすることに。まだ二歳にも
満たない小さな女の子、鈴香。始めは大田の前で泣くばかりだった。しかし、少しづつ
二人の間の距離が縮まり始め――。
いや~、癒されました。とってもとっても、可愛らしくて爽やかな青春小説です。
大田君が、小さな鈴香の為に、あれこれやってあげるのが微笑ましくって。一見
不良なのに、その中身はほんとにまっすぐで真面目で、優しい好青年な大田君。
鈴香の為に美味しいごはんを作ったり、絵本を買ってあげたり、公園に連れて行って
あげたり。もう、そのひとつひとつの言動があったかくって、優しくって、大田君が
大好きになっちゃいました。なんて良い子なんだ~、大田~!ほんとは不良なんて
とっくに卒業してるのに、街で学校の不良たちに会ったら、彼らの話しに合わせてしまう。
タバコも、お酒も、バイクももうやめてるのにね。街で不良たちと会っちゃったシーンは、
彼らに合わせて悪いことに付き合っちゃうのかな、とちょっと心配したりもしたのだけど、
そういうことがバカらしいってもうわかってるから、さりげなくやり過ごす術も身につけて
いて、ほっとしました。
同じクラスの根暗女子、和音とのやり取りも良かったですね。やり取りって言っても、
和音の方はほとんどしゃべってないのだけど^^;あれでよくコミュニケーション取れる
なぁ、と大田君の処世術に感心しちゃいましたよ。和音は、大好きな漫画『君に届け』の
ヒロイン爽子(あだ名は貞子)みたいだなーと思いました。前髪出しても、美少女に
ならないところはちょっとずっこけましたけど(苦笑)。
でもやっぱり、何より、鈴香との全てのシーンに、ほっこりさせてもらいました。
大田君と二人になっただけで大泣きしていた始めの頃はどうなることかと思ったけれど。
美味しいご飯で気を引いたのが功を奏しましたよね。やっぱり、手作りのご飯に勝るものはなし。
ましてや、相手の為を思って、野菜も小さく切って、味付けも子供向けに薄めにして。まさに
新米ママそのものな行動に、ほんわかしちゃいました。でも、そりゃ「いしーね!(美味しいね、
の意味)」なんて、にこっとされた日には、次はもっと美味しいもの作ってあげよう!って
思っちゃうよね。鈴香ちゃんの愛らしさには、私もノックアウトだったなぁ。感心したのは、
何度も何度も、根気よく絵本を読んであげるところ。普通は、途中で嫌になってもうお終い!って
なると思うけど。絵本を暗記するくらい、大田君は真剣に読んであげて。なかなか出来ること
じゃないと思うな(ってか、私なら無理かも・・・^^;)。なんかもー、いちいちいい子
なんだもの、大田君。こんなに良い子なんだから、もっとやりたいこと、やって欲しいなって
思ってしまった。だから、終盤で、中学駅伝のコーチだった上原先生率いる現中学生駅伝生
たちと競争したシーンには感動してしまった。やっぱり、大田君は走っている時がいちばん
生き生きしてるんだなぁ、と。上原先生の、「大田君の走る場所は中学校にはない」という
セリフに胸を打たれました。私はてっきり、コーチに来てよって、乗り気になるかと思ったのだけど。
そうじゃないんだってぴしゃりと頬を叩かれた気持ちがしました。大田君の居場所はここじゃ
ないって気付かされました。上原先生って、ヘラヘラしてて頼りなそうなのに、ちゃんと
やっぱり教育者なんだよね。すごいなって、素直に感心しちゃいました。
高校生がひと月も二歳児の面倒を見るのだから、病気になったり迷子になったりという
ピンチの場面が出るのじゃないかとヒヤヒヤしながら読んでいたのだけど、特に
そういう場面はなくて、終始ほのぼの。
ただ、それだけに、ラストは切なかった。二歳児の記憶がほとんど残らないなんて、
切ないな。鈴香ちゃんには、大田君のこと、少しでいいから覚えていてあげて欲しい。
っていうか、バイトが終わったから鈴香との仲もこれで終わり、じゃなくって、その後も
ちょくちょく遊びに行けばいいのでは?と思っちゃったんですが。先輩の奥さんだって、
来て欲しがると思うけどなぁ。
最後は、え、これで終わり?って感じなので、もっとこの先が読んでみたかった。
先輩の奥さんの両親に出した手紙のその後も知りたいし、大田君が来なくなった時の
鈴香の反応も気になるし、大田君が約束した和音のサックスを聴きに行った時の様子も
読んでみたかった。気になるところがたくさん。もっともっと読んでいたかった~。
やっぱり、瀬尾さんの作品は良いなぁ。終始ほのぼの、最後はほろり。大田君と鈴香ちゃんの
虜になってしまった一作でした。


ニャンニャンにゃんそろじー」(講談社
タイトル通り、猫にまつわる作品を集めたアンソロジー。作家には猫好きが多いという
印象があるので、声をかければいくらでもこういうアンソロジーは出来そうですよね。
小説+漫画で構成されているので、あっという間に読めちゃいます。ピンと来ないものも
あったけど、有川さんの作品が読めたからまぁ、いいか。
有川さんの『猫の島』は、『アンマーとぼくら』の前日譚。まだリョウの父親が生きていた頃、
三人で石垣島の離島に行った時のお話。ついこの間行ったばかりの竹富島が舞台で、
めっちゃ嬉しかったです。ただ、私が行った時は、そんなに猫見なかったけど・・・。
この作品読んで初めて、竹富島が猫の島と呼ばれていると知りました。確かに
ネットで検索してみると、私も行った浜に猫が数十匹集まっている写真がアップ
されていました。確かに、東屋でだらっとしてる黒ブチ猫はちゃんいましたけどねー。
しかし、リョウはいつ腰が曲がったおばあさんの正体に気づいたのかな。父親と晴子
さんが片目の悪い猫を助けたエピソードを知った後でしょうか。最初から気づいていた
のかなぁ。でも、最初『近所の人かな』って思うエピソードがあるし。ミステリ読みだと
こういう文章につい反応してしまう(苦笑)。まぁいいか。最後は、今もあの時の猫が幸せに
暮らしているとわかって嬉しかったです。
あと印象に残ったのは、イヤミスで有名な真梨幸子さんの『まりも日記』。最初、本当に
ご本人のブログを載せているのかと思いました(笑)。今みたいにブレークしなかったら、この
主人公みたいな暮らしを今でも続けていたのかなぁ。売れない小説家たちが読んだら、
笑い話に出来ない作品かもしれない・・・^^;ラストの震災で、猫はどうなって
しまったのでしょうか。最悪の想像はしたくないけれど・・・。なぜ、あの日に限って
ストーブ点けたままにするかな・・・。貧乏暮らしで動物を飼うって、なかなかに
覚悟がいるんだな、と思い知らされる作品でした。
小松エメルさんの『黒猫』も良かったですね。新撰組は全然興味ないけど、魁の朴訥で
優しい人柄は気に入りました。終盤、さとが魁への想いを打ち明けるシーンも良かった。
孤独な魁が、たくさんの家族に囲まれていると知って嬉しくなりました。たくさんの人を斬って、
悲惨な人生を歩んで来たけれど、最後は穏やかに暮らせているようで、ほっとしました。
最後の町田康さんの『諧話会議』は、なかなかにくせのあるお話。ちょっと私にはピンと
来なかったけど、文章読んでて、確かに又吉さんが好きそうな文章だなーと思いました(苦笑)。
動物たちが会議する光景は面白かったですけどね。ちょっと、途中で飽きて来ちゃったかな。
漫画はどれも短いものばかりなので、可もなく不可もなくって感じ。ねこまきさんの
『猫の島の郵便屋さん』が一番ほのぼのしてて好きだったかな。
猫好きによる、猫好きの為の、猫たちのお話ばかりを集めたアンソロジーでした。
猫にまつわるアンソロジーだから、にゃんそろじー(笑)。犬バージョンならわんそろじーに
なるのかな~(笑)。