ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

光原百合/「銀の犬」/角川春樹事務所刊

光原百合さんの正統派ファンタジー「銀の犬」。

人々に降りかかる災厄を音楽で打ちはらう「祓いの楽人(バルド)」。その選ばれし
「祓いの楽人」でありながら声を失くした麗人オシアンと、相棒の少年・ブランの二人は、依頼が
あった村々を旅して回っている。悲しみに沈んだ魂を浄化させる為に、オシアンの竪琴
が鳴り響く。ケルト民話をもとに、光原百合が織り成す珠玉のファンタジー集。

実は、光原さんの新刊ということで、てっきりミステリだと思って手にとったのですが、
ファンタジーだったという。でも、このジャンルは光原さんの美しくて端正な文章にはとても
合っているな、と思いました。
ケルト民話をもとに書かれているので、伝統的・正統派のファンタジーという感じ。
一話一話丁寧に描かれていて、なかなか楽しめました。基本的には、少しの行き違いや
誤解などから悲劇的結末を迎えた人々の迷える魂を、音楽の力で浄化させ、昇天させる
というパターンの連作集。私は特に第2話の「恋を歌うもの」と、表題作の「銀の犬」が
好きですね。「恋~」は、女性の精気を吸い糧としてきた妖精が、初めて人間に恋する
不器用な心の様子が丁寧に描かれていて良かった。「銀の犬」は、犬が起こした一連の行動の
謎は一目瞭然で、悲しくも美しい主従関係が切なかった。

久しぶりにこの手の正統派ファンタジーを読んだという感じでした。こういう世界は大好き
なのですが、最近はあまり読む機会がないので、たまにはいいなと思いました(荒唐無稽な
殺人ものばかり読んでますからね・・・^^;)
このオシアンとブランの物語はまだ続くようなので、今後は二人の出会いなども書かれると
いいなーと思います。

ちなみに、参考文献の一部に、数冊のファンタジー漫画が名を連ねていたのに、にやりと
してしまいました。小説の参考文献に漫画が載るのは珍しいですよね。
あしべゆうほさんや中山星香さん、好きだったなぁ~。懐かしい!