ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

高田崇史「QED 憂曇華の時」(講談社ノベルス)

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QEDシリーズ最新作。なんか、いつの間にかさらっと再開してましたね、

このシリーズ。ラテン語かなんかの副題がある、なしは一体どういう

くくりでつけているんだろうか。今回は何もついてないから普通に正編

って感じなのかな。まぁ、どれを読んでも、基本的には同じ姿勢のシリーズ

だから特に違いはない気がするけど(おい)。

今回のタタルさんと奈々ちゃんは、始め徒歩鵜を観る為に石和に旅行に行って

いたのだけれど、途中で小松崎に呼び出されて、急遽長野の安曇野に行く

ことに。神楽の舞い手の青年が、『S』の血文字を残して殺され、その

数日後、二人目の犠牲者が。被害者は死ぬ直前に『黒鬼』という言葉を

残して息絶えた。事件の背後には連綿と受け継がれて来た安曇氏の悲しい

歴史があった――。

相変わらず膨大な量の薀蓄に圧倒されます。正直、薀蓄部分は歴史オンチ

の私には眠くなる要素でしかないのだけれど^^;でも、このシリーズが

好きな人は、そっちの方が楽しみで読んでる人の方が多いみたいですね。

みんなあんな小難しい歴史の薀蓄、理解出来ているのかなぁ。すごいなぁ。

最初に出て来た徒歩鵜の薀蓄の辺りは面白かったですけど。船を使わず

徒歩で行う鵜飼いというのは初めて知りました。山梨は何度も行った

ことがあるし、石和温泉も何年か前に行ったばかりなのだけれど。

長野の安曇野は、この間読んだ夏川草介氏の新刊の舞台になっていて、

行ってみたいなーと思っていたばかりで、タイムリーでした。しかし、

こんなにいろんな歴史的背景のある場所だったとは。最終的には神功皇后

辿り着き、女性天皇の話にまで発展する。今の皇室問題に重要な一石を投じるような

タタルさんの論考は、いろいろと物議をかもしそうな感じもしました。神功皇后

に関して、これだけ歴史がねじ曲がって伝えられているという事実には、

空恐ろしいものを感じずにはいられませんでした。何か大きな陰謀が

働いて来たのかしらん・・・。

肝心の連続殺人事件の方は、相変わらずツッコミどころが満載。犯人も

全く意外性ないですし。どこまでも、このシリーズはミステリ部分は

つけたしでしかないんだなぁ・・・。

でも、薀蓄で暴走するタタルさんを、ちょこちょこ心の中でツッコむ

奈々ちゃんが可愛かったです。将来ゴールインするのは決まっているので、

一体どの地点で二人がそうなるのか、その場面が描かれる日は来るので

しょうか。いや、絶対書いてもらわないと困る。だって、それが読みたい

から読んでるようなものだし!(おい)

ちなみに、二人でちょこちょこ旅行に行ってますけど、ホテルはともかく、

旅館の時って部屋は一緒なんでしょうか。今回の時点ではまだ付き合う以前

みたいだから、どうなんでしょう。旅館に泊まって部屋が別々って、あんまり

ないですよね、多分。恋人以前の男女が旅館に泊まるって、奈々ちゃん的には

ドキドキだと思うんですけど、そういう場面が出て来なかったのはちと残念。

あと、奈々ちゃんが最後まで気にしていた、タタルさんの言葉に出て来た

『彼女たち』は結局誰のことだったのか。歴史の謎よりずっとそっちの

謎の方が気になるよ!