ミステリ読書録

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友井羊「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 子ども食堂と家族のおみそ汁」(宝島社文庫)

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シリーズ第5弾。今回は、麻野や理恵が、スープ屋しずくにやってきたNPO法人

ボランティア活動をしている大学生の頼みで、子ども食堂を手伝うことになる

お話。子ども食堂の活動自体は素晴らしいものだし、貧困の親子の為にもぜひ

続けていただきたいことだと思うのだけれど、その活動にプロの料理人の麻野

さんを無理矢理巻き込むのはどうなんだろう、とちょっと首を傾げる展開では

ありましたね。ただで料理のアドバイスして欲しいってのも、かなり図々しい

お願いって感じがするし。まぁ、その裏には、どうしても麻野さんにお願いしたい

という切実な理由があった訳ではあるのだけど。

そして、今回は麻野さんのお母さんがついに登場。とはいえ、麻野さんとお母さん

の確執の内容をすっかり忘れてしまっていて、なんとなく憶測で読むしかなかった

のがちょっと残念ではあったのですが。その部分を覚えていないせいで、麻野さん

があれほど母親を拒絶してるのがなんだか不自然に思えてしまって。麻野さんは

普段とても穏やかな人だから。麻野さんが母親にやられたことをちゃんと覚えて

いれば、麻野さんの気持ちを汲んで共感もできたと思うのですが。

それというのも、今のお母さんがとてもいい人に見えたから。息子にそんなに

酷いことをした人とは思えなくって。でも、人間って嫌なことをやられた方は

絶対にそのことを忘れられないものなんですよね。いくら改心したって言われても、

やられた事実は絶対変えられないものだし。麻野さんの気持ちに寄り添えない

ことがなんだか申し訳なかったな。一番傷ついているのは麻野さんなのにね。

麻野さんだけじゃなくて、今回は傷ついた子どもがたくさん出て来て、読むのが

ちょっと辛かったです。子どもを虐待する親の気持ちはやっぱり理解不能真凛

ちゃんが体調悪くした理由にも腹が立ったし。でも、真凛ちゃんも母親のしている

ことがわかっていたのなら、食べるフリして食べないようにするとか、やろうと

思ったらどうとでも対処できたと思うけど・・・。すべてわかった上で、敢えて

食べていたと思うと、悲しすぎる。子どもは親を選べないのに。こんな親が存在

することに怒りしか覚えませんでした。

ミステリ部分はなんだか、つけたしみたいになって来たような気がするなぁ。

麻野さんのお料理は今回もどれも美味しそうでしたが。

今回は理恵さんとの仲がまったく進展しなかったのもちょっと残念。一作ごとに

二人の距離が近づいていると思っていたのになぁ。そこは次巻に期待かな。